UR-DBMS Syndrome Finder について

琉球大学名誉教授 成富研二



 相次ぐ原因遺伝子解明や次世代シークェンサーの登場などにより、分子遺伝学の近年の進歩は著しいものがあり、遺伝医療は新しい局面を迎えています。しかし、どんなに新しい知見や手技を獲得しても、その臨床応用は診断力が基本であることに違いはありません.臨床診断がつかなければどんな知識や遺伝子解析技術も臨床的観点からは宝のもちぐされになってしまうでしょう。


 小生が琉球大学に赴任した1985年頃は、日本の遺伝医学はまだまだ創成期の段階でした.さらに臨床遺伝分野には珍しい希少疾患が多いため、遺伝外来の現場は診断不明の患者の山といった状況でした。そこで、少しでもこの現状を打破するために、パソコンの検索機能を有効利用した独自のデータベース(UR-DBMS )の作成を決意しました。


 UR-DBMS (オリジナル名: University of the Ryukyus-Database for Malformation Syndromes) は、小生が1986年から作成しはじめた奇形症候群や染色体異常を中心とし、遺伝性疾患全般を含む遺伝性疾患総合データベースです。


 Syndrome Finder 2001年科研費を使って作成した、UR-DBMSの症状データから診断候補を症状一致数をもとに候補疾患を抽出する医師専用のソフトウェアです。これらは日本で最も利用されているデータベース/ソフトウェアとなっています。


 UR-DBMS1991年の初版公開から毎年改訂版の公開を継続してきました。利用者からは最新の情報を含むWEB版を期待する声が多くありましたが、経費や技術的理由により実現できずにいました。幸いにも、平成21年度教育研究高度化のための支援体制整備事業が文部科学省により採択され、その一環として琉球大学からURDBMS/Syndrome Finder WEB発信することになりました。これにより小生の長年の夢が実現することになったわけです.


 私は平成263月をもちまして, 29年間の琉球大学医学部での教員生活から退職することになりましたが,その後も琉球大学図書館のサーバからWEB公開を継続してきました.しかし,諸般の事情により,琉球大学からの公開継続が困難な状況となり,新たに東京の成育医療研究センターから,リニューアルした UR-DBMSを発信することとなりました.そのため,利用者の利便性を考えUR-DBMSという名称は継続しますが,新しい名称として「Unified Records-DataBase for Medical Syndromes」と改訂することとしました.


 今後も最新の情報を提供し,内容をより充実進化するよう努力する覚悟でいますので、ご利用を宜しくお願いいたします。



令和元年10


<お知らせ>

日本人患者の写真を掲載した参考書として,20158月南江堂から「新 先天奇形症候群アトラス改訂第2版」が出版されました.日本人患者での顔貌を参照・確認することができます.


UR-DBMS 開発の歴史と経過について

1986 IBM-5600 にてDataBoxを使って作成開始 (1,800 疾患)

  McKusick7/8版データ取り込み, Grouchy & Turleauデータ取り込み

19891990 City of Hope (LA) 留学 →Mac と出会う

1990 McKusick 9版データ取り込み (2,400 疾患)

1991 Macintosh IIcxへデータ移植に成功!

  BDE/LDDBデータ取り込み

1992 UR-DBMS 初版公開 (3800疾患) <山口での人類遺伝学会で展示>

1993 McKusick10版データ取り込み

  UR-DBMS2版公開(4,250疾患)

1994 McKusick11版データ取り込み

  UR-DBMS3版公開(4,350疾患)

1995 UR-DBMS3.1版公開 (4,600疾患)

  Gorlinデータ取り込み, Schinzelデータ取り込み

1996 UR-DBMS 4版公開 (4,970疾患)32MB

  OMIMデータ取り込み開始

1997 UR-DBMS5版公開 (6,000疾患) 100MB

1998 UR-DBMS6版公開 (6,300疾患)

1999 UR-DBMS7版公開 (6,600疾患)

2000 UR-DBMS8版公開

2001 UR-DBMS9版公開

 診断補助ソフトウェアGenDis 発売

 Gorlin 2nd Ed. データ取り込み

2002 UR-DBMS10版公開

2003 UR-DBMS11版公開

  Syndrome Finder 公開

2004 Syndrome Finder 2 公開 (UR-DBMS12)

2005 Syndrome Finder 3 公開 (UR-DBMS13)

2006 Syndrome Finder 4 公開 (UR-DBMS14)

2007 Syndrome Finder 5 公開 (UR-DBMS15)

2008 Syndrome Finder 6 公開 (UR-DBMS16)

2009 Syndrome Finder 7 公開 (UR-DBMS17)

2009.9  麻生内閣による文部科学省教育研究高度化のための支援体制整備事業に採択される (琉大総額5.4億円)

   図書館に1.2億円が配分される

   データベースWEB発信の予算化を立案

   委託業者はNECに決定 (1,200万円)

   WEB版用に改定作業開始

2010.4 琉球大学図書館に本格的サーバを設置し公開を開始


2019.3 成育医療研究センターへの移転のためサーバ停止

2019.10 成育医療研究センターから公開再開





TOP