疾患詳細

疾患詳細





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Wegener granulomatosis
(WG)
(Granulomatosis with polyangitis)

Wegener 肉芽腫症
(肉芽腫症-多発血管炎)
指定難病44 多発血管炎性肉芽腫症
<小児慢性特定疾病 膠8 多発血管炎性肉芽腫症>

(症状)
【一般】膿性鼻漏
 鼻閉
 副鼻腔炎
 鼻出血
 鞍鼻
 咳嗽, 時々血性粘液を伴う
 息切れまたは喘鳴
 発熱
 疲労および全身疼痛
 四肢, 指趾のしびれ
 体重減少
 血尿
 皮膚掻痒または出血
 結膜炎, 灼熱または疼痛
 中耳炎
 視力低下
 咽喉頭潰瘍
 血痰
 呼吸困難
 急速進行性腎炎
 紫斑
 多発関節痛
 多発神経炎

<小児慢性特定疾病 膠8 多発血管炎性肉芽腫症>
診断方法
A. 主要症候
1. 上気道症状:鼻(膿性鼻漏, 出血, 鞍鼻), 眼(眼痛, 視力低下, 眼球突出), 耳(中耳炎), 口腔・咽頭痛(潰瘍, 嗄声, 気道閉塞)
2. 肺症状:血痰, 咳嗽, 呼吸困難
3. 腎症状:血尿, 蛋白尿, 急速に進行する腎不全, 浮腫, 高血圧
4. 血管炎による症状
5. ① 全身症状:
発熱(38℃以上, 2週間以上), 体重減少
② 臓器症状:
紫斑, 多関節炎(痛), 上強膜炎, 多発性神経炎, 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞), 消化管出血(吐血・下血), 胸膜炎
B. 主要組織所見
1. 上気道, 肺, 腎の巨細胞を伴う壊死性肉芽腫性炎
2. 免疫グロブリン沈着を伴わない壊死性半月体形成腎炎
3. 小・細動脈の壊死性肉芽腫性血管炎
C. 主要検査所見
PR-3 ANCAが高率に陽性を示す
D. 診断基準
1. Definite GPA
1. 上気道, 肺, 腎のそれぞれ 1 臓器症状を含めA. 主要症状の 3 項目以上を示す例
2. 上気道, 肺, 腎, 血管炎によるA. 主要症状の 2 項目以上とB. 主要組織所見1, 2, 3 の 1 項目以上を示す例
3. 上気道, 肺, 腎, 血管炎によるA. 主要症状の 1 項目以上とB. 主要組織所見1, 2, 3 の 1 項目以上及び PR-3 ANCA 陽性を示す例
2. Probable GPA
1. 上気道, 肺, 腎, 血管炎によるA. 主要症状の 2 項目以上を示す例
2. 上気道, 肺, 腎, 血管炎によるA. 主要症状の 1 項目以上及び, B. 組織所見1, 2, 3 の 1 項目以上を示す例
3. 上気道, 肺, 腎, 血管炎によるA. 主要症状の 1 項目と PR-3 ANCA陽性を示す例
E. 参考となる検査所見
1. 白血球増加, CRPの上昇
2. 血中尿素窒素, 血清クレアチニンの上昇
F. 鑑別診断
1. 上気道, 肺の他の原因による肉芽腫性疾患(サルコイドーシス)
2. 他の血管炎症候群(顕微鏡的多発血管炎, 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)など
G. 参考事項
1. 上気道, 肺, 腎のすべてがそろっている例を全身型, 上気道, 肺のうち単数もしくは 2 つの臓器にとどまる例を限局型と呼ぶ
2. 全身型は上気道, 肺, 腎の順に症状が発現することが多い
3. 発症後しばらくすると, 上気道, 肺の病変に黄色ブドウ球菌を主とする感染症を合併しやすい
4. 上気道, 肺の肉芽腫による占拠性病変の診断にCT, MRI, シンチ検査が有用である
5. PR-3 ANCAの力価は疾患活動性と並行しやすい。稀にMPO-ANCA(P-ANCA)陽性を認める例もある
認定基準
上記D. 診断基準 のうち 1. Definite GPA (確実) あるいは 2. Probable GPA(疑い), の基準を満たすものを主に認定する。
本認定基準は, 典型的な組織所見を認めない例, ANCA陰性例など早期例あるいは非典型例が, 認定の範疇に入ることを否定するもので無いことを附記する。
当該事業における対象基準
治療で非ステロイド系抗炎症薬, ステロイド薬, 免疫調整薬, 免疫抑制薬, 抗凝固療法, γグロブリン製剤, 強心利尿薬, 理学作業療法, 生物学的製剤又は血漿交換療法のうち一つ以上を用いている場合

概念・定義
 Wegener肉芽腫症は, 病理組織学的に全身の壊死性・肉芽腫性変化を認め, 発症機序に抗好中球細胞質抗体ANCAが関与する原発性血管炎症候群である。International Chapel Hill Consensus Conferenceの2012年改訂で, 従来のWegener肉芽腫症という呼び名からgranulomatosis with polyangitis GPAに変更された。ANCAの関与するsmall vessel vasculitisの一疾患に区分され, 上下気道の壊死性・肉芽腫性炎症および小から中血管を主に侵す壊死性血管炎を来たし, 高頻度に壊死性糸球体腎炎を伴うものと再定義された。GPAは元来, 生命予後の極めて悪い疾患であるが, 発症早期に免疫抑制療法を開始すると, 高率に寛解を導入できる疾患であることがわかってきた。しかし声門下狭窄に伴う呼吸不全など救急疾患としての性格や, 臓器後遺症としての腎不全の存在は, 単なる慢性炎症性疾患としてのみで捉えるべきではないことを意味している。血管病変を主体とした全身性疾患としての管理が不可欠である。
病因
 感染症, HLA, ANCAなどが病因論的に関与しているとされるが, 真の原因は不明である。
上気道の細菌感染を契機に発症したり, 再発が見られることが多いので, 何かしらの病原体に関わる免疫反応である可能性が想定されている。特に黄色ブドウ球菌が検出される例が多く, 鼻腔内感染はリスク因子(相対危険度9.0)とされるため, スーパー抗原の関与が推定されている。
 欧米では特定のHLA抗原をもつ人に発症しやすいとの成績もあるが, わが国では特定HLA抗原との相関は見出されていない。一方, HLA-DR13/DR6が欧米では少ないことが知られているが, 家族内発症例は少なく遺伝的素因で説明することは難しい。季節発症や高緯度地域での好発など環境素因も考えられている。
 高頻度に検出されるANCA, 特にプロテイネース3 PR-3に対する ANCAが自己抗体として発症に関わるとの説もある。実験的にはPR-3 ANCAが炎症性サイトカインの存在下に好中球を活性化し, 活性酸素や蛋白分解酵素を放出, 血管炎や肉芽腫性炎を起こすが知られている。しかし, リツキシマブの限定された有用性からは自己抗体としてのANCAの関与は病態の一部を説明するものに過ぎないと考えられる。
疫学
 欧米ではANCA関連血管炎の多くがPR-3を対応抗原とするGPAであるのに対し, わが国や中国ではMPOを自己抗原とする顕微鏡的多発血管炎MPAが多い。本邦ではANCA関連血管炎の9割がMPA, 残りの一部がGPAである。また世界的にANCA関連血管炎が増加していることも知られており, 本邦でも同様の傾向にある。平成20年度のGPAの医療受給者証交付件数は成人を含めて1151件であった。推定発症年齢は主に30-60歳代で, 成人では男女差は無い。
 北欧等の疫学調査では10万人に0.2-1.2例の発症率とされているが, 小児例の発症頻度はそれよりずっと少なく, GPA全体の3-7%, 年あたり1000万人に1-5人程度の発症と思われる。成人期発症例がやや男性に多いのと異なり, 小児期発症例は女児の方が2倍以上多い。また発症から診断までも数ヶ月以内と短い。これは成人期発症例と比べて症状が強く, 急速に進行する例が多いためと考えられる。
臨床症状
 発熱, 体重減少などの全身症状とともに, (1)上気道の症状:膿性鼻漏, 鼻出血, 鞍鼻, 眼痛, 視力低下, 眼球突出, 中耳炎, 咽頭痛, 咽喉頭潰瘍, 嗄声, 気道閉塞など, (2)肺症状:血痰, 咳嗽, 呼吸困難など, (3)腎症状(急速進行性糸球体腎炎):血尿, 蛋白尿, 急速に進行する腎不全, 浮腫, 高血圧, (4)その他の消化管出血(吐血, 下血), 紫斑, 多関節痛および多発神経炎, 虚血性心疾患(狭心症, 心筋梗塞), 胸膜炎, 上強膜炎による症状などを呈する。上記の(1)(2)(3)全てを満たすものを全身型, 2つ以下である場合を限局型という。
 小児では欧米において4つのコホートがあり, 北米の患者登録ARChiVeとトロント小児病院の単施設のコホートの結果からは, 発熱, 易疲労, 体重減少などの全身症状が9割以上の症例に認められる。臓器所見としては, 肺や上気道および腎に由来するものが約8割に認められ, 眼や皮膚, 消化管の症状は3割前後である。ほとんどの小児例が発症時より多臓器病変に伴う症状を有する。一方, 成人では, 1/3の症例で肺や腎の病変は無症候であるが, 病変が一臓器に限局していることは稀で組織学的検索により明らかとなることが多い。また成人との比較では声門下狭窄が多いこと, 酸素が必要な症例が15%程度にのぼること, 最終的に11-20%が透析になることが知られている。またトロント小児病院のコホートでは静脈血栓症が成人に比して多いことが挙げられている。耳鼻科領域では鞍鼻など軟骨の破壊性変化で気付かれることもある。
 検査所見ではほとんどの例で白血球増多を認め, 中等度の好酸球増多や正球性正色素性貧血, 血小板増多と著明な赤沈亢進およびCRPの上昇を認める。ただし早期例ではこれらの所見を認めない場合も多い。腎病変がある場合は蛋白尿, 顕微鏡的血尿, 赤血球円柱を認めるが肉眼的血尿は稀である。BUNやクレアチニンの上昇は腎障害の程度に並行する。リウマチ因子は成人同様約半数で陽性を示す。IgAが高い場合が多い。約2割の例で抗リン脂質抗体が陽性例であり, 血栓症を来す。ANCAは, 免疫蛍光抗体法では約9割陽性となるが, ELISAによるPR-3 ANCAの陽性率は7割程度である。MPO-ANCAも約1割程度陽性となる。
 GPAは, 病理組織学的に上下気道の壊死性肉芽腫, 小動脈および静脈を主とした壊死性あるいは肉芽腫性の血管炎, 巣状分節性の壊死性糸球体腎炎によって特徴づけられる。しかし肺などの生検組織において肉芽腫が常に検出できるわけでは無く, 非特異的炎症像しか捉えられない場合もある。小血管では白血球破砕型血管炎の形をとることもある。初期の腎組織の変化は糸球体血栓症であり, 管外増殖と半月体形成が壊死性変化に先立つ。硬化性変化は病初期の腎機能低下の無い段階でも認められうる。腎に肉芽腫性変化を来すことは稀である。蛍光抗体法では免疫グロブリンや補体の沈着が乏しいことがポイントである。
 画像診断では肺の胸部レントゲン検査で異常を指摘可能であるのは半数に満たない。浸潤影よりも結節影を認めることが多く, 空洞形成や胸水貯留, 気胸などを認める場合もある。胸部CTでは小葉中心性や血管周囲性の陰影を認めることも多い。副鼻腔CTでは粘膜肥厚や前顎洞や上顎洞の不明瞭化, 骨破壊像を認めることもある。粘膜病変の描出にはMRIが優れており, 眼球突出や声門下狭窄の質的診断が可能である。
 生理検査では肺出血の最も早期のマーカーとして, 拡散能DLcoの低下は有用である。
診断
上記
治療
 GPA を含めANCA関連血管炎の治療は, ANCA関連血管炎の診療ガイドライン(厚生労働省難治性疾患克服研究事業, 2011年)を参考に, 発症後概ね6ヶ月以内の早期の寛解導入療法およびその後の維持療法の組み合わせで行われる。ただし, 本邦のANCA関連血管炎の多くはMPAであり, JMAAVがMPO-ANCA陽性例を中心に行われた結果であることには留意すべきである。一方, ANCA関連血管炎の診療ガイドラインにグローバルな現状として紹介された治療法は, EULARによる原発性の小および中血管炎の治療recommendationを基にしたものである。GPAが多数を占める欧州の実情を反映したものであり, 本邦例にも有用と考えられる。これらは主に成人を対象に策定されたものであるが小児においても適応可能とされている。
 EULARのrecommendationにあるように, EUVASによる重症度分類をもとに治療にあたる。活動性の評価には改訂Birmingham vasculitis activity score BVASを, 臓器障害の評価にはvasculitis damage index VDIを用いる。
 寛解導入にはステロイド薬とシクロフォスファミドCYCの併用が標準治療である。これは元来, 成人におけるステロイド剤+経口CYCでの寛解率9割の結果をもとにしたものである。CYCについては重症SLEに対するNIHプロトコールを参照し, 静注パルスでの月1回6ヶ月間, 続いて3ヶ月に1回投与の変法も行われ副作用の軽減が図られているが, 再燃は静注投与に多いとの報告もあり結論をみていない。一方, 腎障害をはじめすでに臓器障害を認める場合はCYCの減量等を考慮する。
 寛解後の維持療法については, 低用量のステロイド薬と免疫抑制剤を引き続き併用するのが一般的である。免疫抑制剤としては従来よりCYCを引き続き用いてきたが, 副作用軽減の観点からアザチオプリンかメトトレキサートに変更することが多い。最近はレフルノマイドやMMFも試みられているが, 間質性肺炎等の副作用の観点および再燃しやすさから標準的治療では無い。合併症等で従来薬が使えない場合に試みるべきものと考えられる。
 再燃例では, ステロイド薬, 免疫抑制薬で再寛解導入を目指し治療の強化をはかる。難治例ではリツキシマブなどの生物学的製剤や免疫グロブリンが使用される。2013年に公知申請で保険承認されたリツキシマブではあるが, 寛解誘導は概ね得られるものの再発予防効果は少ない。また肉芽腫性病変には有効性は乏しいことも知られている。TNF阻害剤については議論の余地がある。またATGやアレムツズマブなども現在検討中である。
 GPAでは上気道, 肺に主に黄色ブドウ球菌による二次感染症を起こしやすいので, 細菌感染症対策を十分に行う。また上記の通り, 再燃や難治性の観点から, 上気道炎症状の強い例には, スルファメトキサゾール(ST)合剤をあらかじめ併用することもある。最近は支持療法として広く奨められている。
予後
 元来, 無治療での1年以内の死亡率は約8割に昇るが, 早期に診断を下して上述の免疫抑制療法を徹底して行うと, 完全に寛解する例もある。成人での報告では5年生存率は9割以上で, 死因の約3割が感染症, 2割が心疾患と腎不全に因るものである。小児の生存率に関しても同様と考えられているが, 1/4の症例で重症感染症の罹患が認められるため, 感染症対策が重要である。
 5年以内の再燃は約半数にみられ, 小児でも成人同様である。あまり早く治療を中止すると, 再燃の頻度が高く, 2年間以上の免疫抑制療法と長期間の経過観察が必要である。この際, 疾患活動性の指標としてPR-3 ANCAの抗体価が有用という報告もあるが議論の余地がある。
 機能障害の点では声門下狭窄と鞍鼻などの変形, 難聴が小児に多く, 気管切開術を要する例も多い。また1/3の小児例が腎不全に至る。CYCなどによる治療関連性の障害では不妊が22%に認められるとの報告があるが, 今後は治療方法の層別化などにより減ると考えられる。

<指定難病44 多発血管炎性肉芽腫症>
1.概要
 多発血管炎性肉芽腫症は, 以前はウェゲナー肉芽腫症と称されていた疾患で, 病理組織学的に(1)全身の壊死性肉芽腫性血管炎, (2)上気道と肺を主とする壊死性肉芽腫性炎, (3)半月体形成腎炎を呈し, その発症機序に抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody:ANCA))が関与する血管炎症候群である。元来生命予後の極めて悪い疾患であるが, 発症早期に免疫抑制療法を開始すると, 高率に寛解を導入できる。早期確定診断にANCAの測定は極めて有用である。多発血管炎性肉芽腫症で認められるANCAのサブタイプは, 欧米では, ほとんどがプロテイネース3に対する抗体(PR3-ANCA)であるが, わが国ではミエロペルオキシダーゼに対する抗体(MPO-ANCA)が約半数を占める。
 
2.原因
 上気道の細菌感染をきっかけに発症することや, 細菌感染により再発がみられることが多いので, スーパー抗原の関与も推定されるが, 真の原因は不明である。
 欧米では特定のHLA抗原をもつ人に発症しやすいとの知見もあるが, 我が国では特定のHLA抗原との関連は見出されていない。最近, PR3-ANCAが, 発症要因のひとつとして注目されている。PR3-ANCAと炎症性サイトカインの存在下に好中球が活性化され, 血管壁に固着した好中球より活性酸素や蛋白分解酵素が放出されて血管炎や肉芽腫性炎症を起こすと考えられている。
 
3.症状
 発熱, 体重減少などの全身症状とともに, (1)上気道の症状:膿性鼻漏, 鼻出血, 鞍鼻, 中耳炎, 視力低下, 咽喉頭潰瘍など, (2)肺症状:血痰, 呼吸困難など, (3)急速進行性腎炎, (4)その他:紫斑, 多発関節痛, 多発神経炎など。
 症状は通常(1)→(2)→(3)の順序で起こるとされており, (1), (2), (3)の全ての症状が揃っているとき全身型, いずれか二つの症状のみのとき限局型という。
 
4.治療法
 ANCA関連血管炎の診療ガイドライン(厚生労働省難治性疾患克服研究事業, 2013年)を参考に副腎皮質ステロイドとシクロホスファミドの併用で寛解導入治療を開始する。上気道症状の強い例には, スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST)合剤を併用することもある。寛解達成後には寛解維持療法として, シクロホスファミドをアザチオプリンかメトトレキサートに変更し, 低用量の副腎皮質ステロイドとの併用を行うことが望ましい。再燃した場合は, 疾患活動性に応じた再寛解導入治療を行う。難治例に対する治療薬として, 抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブが用いられる。
 また, 上気道, 肺に二次感染症を起こしやすいので, 細菌感染症・日和見感染症対策を十分に行う。

リツキシマブ(rituximab)は, 抗ヒトCD20ヒト・マウスキメラ抗体からなるモノクローナル抗体であり, その製剤は分子標的治療薬のひとつとして抗がん剤などとして使用されている。
適応
CD20陽性の非ホジキンリンパ腫
• 免疫抑制状態下のCD20陽性のB細胞性リンパ増殖性疾患
• 多発血管炎性肉芽腫症(GPA, 旧称:ウェゲナー肉芽腫症)
• 顕微鏡的多発血管炎 (MPA)
• 難治性のネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す場合)

5.予後
 我が国のコホート研究に登録された新規患者33名の6か月後の寛解導入率は97%であった。一般に, 副腎皮質ステロイドの副作用軽減のためには速やかな減量が必要である一方, 減量速度が速すぎると再燃の頻度が高くなる。疾患活動性の指標として臨床症状, 尿所見, PR3-ANCA及びCRPなどが参考となる。
 進行例では免疫抑制療法の効果が乏しく, 腎不全により血液透析導入となったり, 慢性呼吸不全に陥る場合がある。死因は敗血症や肺感染症が多い。また, 全身症状の寛解後に著明な鞍鼻や視力障害を後遺症として残す例もある。

<指定難病診断基準>
Definite, Probableを対象とする。

1.主要症状
 (1) 上気道(E)の症状
  E:鼻(膿性鼻漏,出血,鞍鼻),眼(眼痛,視力低下,眼球突出),耳(中耳炎),口腔・咽頭痛(潰瘍,嗄声,気道閉塞)
 (2) 肺(L)の症状
  L:血痰, 咳嗽, 呼吸困難
 (3) 腎(K)の症状
  K:血尿,蛋白尿,急速に進行する腎不全,浮腫,高血圧
 (4) 血管炎による症状
  ① 全身症状:発熱(38℃以上,2 週間以上),体重減少(6 カ月以内に6 ㎏以上)
  ② 臓器症状:紫斑,多関節炎(痛),上強膜炎,多発性神経炎,虚血性心疾患(狭 心症・心筋梗塞),消化管出血(吐血・下血),胸膜炎

2.主要組織所見
 ① E,L,Kの巨細胞を伴う壊死性肉芽腫性炎
 ② 免疫グロブリン沈着を伴わない壊死性半月体形成腎炎
 ③ 小細動脈の壊死性肉芽腫性血管炎

3.主要検査所見
 Proteinase 3-ANCA(PR3-ANCA) (蛍光抗体法でcytoplasmic pattern,C-ANCA)が高率に陽性を示す。

4.診断のカテゴリー
(1) Definite
 (a)上気道(E), 肺(L), 腎(K)のそれぞれ1臓器症状を含め主要症状の3項目以上を示す例
 (b)上気道(E), 肺(L), 腎(K), 血管炎による主要症状の2項目以上及び, 組織所見①, ②, ③の1項目 以上を示す例
 (c)上気道(E), 肺(L), 腎(K), 血管炎による主要症状の1項目以上と組織所見①, ②, ③の1項目以上  
 及びC(PR-3) ANCA 陽性の例
(2)Probable
 (a)上気道(E), 肺(L), 腎(K), 血管炎による主要症状のうち2項目以上の症状を示す例
 (b)上気道(E), 肺(L), 腎(K), 血管炎による主要症状のいずれか1項目及び, 組織所見①, ②, ③の1  
項目を示す例
 (c)上気道(E), 肺(L), 腎(K), 血管炎による主要症状のいずれか1項目とC(PR-3)ANCA 陽性を示す例

5.参考となる検査所見
 ① 白血球,CRPの上昇
 ② BUN, 血清クレアチニンの上昇

6.識別診断
 ① E,Lの他の原因による肉芽腫性疾患(サルコイドーシスなど)
 ② 他の血管炎症候群 (顕微鏡的多発血管炎,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss症候群), 結節性多発動脈炎など)

7.参考事項
 ① 上気道(E),肺(L),腎(K)のすべてがそろっている例は全身型,上気道(E),下気道(L),のうち単数もしくは2つの臓器にとどまる例を限局型と呼ぶ。
 ② 全身型はE, L,Kの順に症状が発現することが多い。
 ③ 発症後しばらくすると,E,Lの病変に黄色ぶどう球菌を主とする感染症を合併しやすい。
 ④ E,Lの肉芽腫による占拠性病変の診断にCT,MRI,シンチ検査が有用である。
 ⑤ PR3- ANCAの力価は疾患活動性と平行しやすい。MPO-ANCA陽性を認める例もある。

(Note)
Wegener granulomatosis (WG) is a systemic disease with a complex genetic background. It is characterized by necrotizing granulomatous inflammation of the upper and lower respiratory tract, glomerulonephritis, vasculitis, and the presence of antineutrophil cytoplasmatic autoantibodies (ANCAs) in patient sera. These ANCAs are antibodies to a defined target antigen, proteinase-3 (PR3, PRTN3; 177020), that is present within primary azurophil granules of neutrophils (PMNs) and lysozymes of monocytes. On cytokine priming of PMNs, PR3 translocates to the cell surface, where PR3-ANCAs can interact with their antigens and activate PMNs. PMNs from patients with active WG express PR3 on their surface, produce respiratory burst, and release proteolytic enzymes after activation with PR3-ANCAs. The consequence is a self-sustaining inflammatory process (Jagiello et al., 2004).

Mapping
Jagiello et al. (2004) performed an extended association screen with 202 microsatellite markers, representing apoptosis-related genes, using pooled DNA of 150 Northern German patients suffering from WG and 100 healthy Northern German controls. Six microsatellite allele patterns were significantly associated with WG. One marker remained significantly associated after multiple corrections. This marker, representing the retinoid X receptor-beta gene (RXRB; 180246), is located in the major histocompatibility complex (MHC) on chromosome 6p21.3 between the HLA-DPB1 (142858) and DAXX (603186) genes. HLA-DPB1 typing and fine mapping of the region with additional microsatellites and SNPs revealed a strong association of WG with the DPB1*0401 allele (odds ratio of 3.91) compared with controls. In addition, an extended haplotype, DPB1*0401/RXRB03, showed an even stronger association with WG (odds ratio of 6.41).

Lyons et al. (2012) performed a genomewide association study in a discovery cohort of 1,233 U.K. patients with ANCA-associated vasculitis and 5,884 controls and replicated the study in 1,454 northern European patients and 1,666 controls. Lyons et al. (2012) found both MHC and non-MHC associations with ANCA-associated vasculitis, and also showed that granulomatosis with polyangiitis and microscopic polyangiitis are genetically distinct. The strongest genetic associations were with the antigenic specificity of ANCA, not with the clinical syndrome. Granulomatosis with polyangiitis was associated with HLA-DP (142858) at rs3117242 (p = 3.1 x 10(-85) vs control; odds ratio = 5.39). Anti-proteinase-3 ANCA was associated with HLA-DP and the genes encoding alpha-1-antitrypsin (SERPINA1; 107400) and proteinase-3 (p = 6.2 x 10(-89); p = 5.6 x 10(-12), and p = 2.6 x 10(-7), respectively). Anti-myeloperoxidase ANCA was associated with HLA-DQ (p = 2.1 x 10(-8)). Lyons et al. (2012) concluded that their study confirms that the pathogenesis of ANCA-associated vasculitis has a genetic component, shows genetic distinctions between granulomatosis with polyangiitis and microscopic polyangiitis that are associated with ANCA specificity, and suggests that the response against the autoantigen proteinase-3 is a central pathogenic feature of proteinase-3 ANCA-associated vasculitis. Lyons et al. (2012) further suggested that their data provide preliminary support for the concept that proteinase-3 ANCA-associated vasculitis and myeloperoxidase ANCA-associated vasculitis are distinct autoimmune syndromes.

(文献)
(1) Jagiello, P., Gencik, M., Arning, L., Wieczorek, S., Kunstmann, E., Csernok, E., Gross, W. L., Epplen, J. T. New genomic region for Wegener's granulomatosis as revealed by an extended association screen with 202 apoptosis-related genes. Hum. Genet. 114: 468-477, 2004
(2) Lyons, P. A., Rayner, T. F., Trivedi, S., Holle, J. U., Watts, R. A., Jayne, D. R. W., Baslund, B., Brenchley, P., Bruchfeld, A., Chaudhry, A. N., Tervaert, J. W. C., Deloukas, P., and 25 others. Genetically distinct subsets within ANCA-associated vasculitis. New Eng. J. Med. 367: 214-223, 2012

2017/07/08 指定難病