疾患詳細

疾患詳細



丸い顔, 口角下垂, 比較的粗な顔貌; 角膜混濁; 関節拘縮; 鷲手変形, 小さな手根骨 (Gorlin et al. 1990 より引用)

#607016
Scheie syndrome
(Mucopolysaccharidosis type IS)
(Mucopolysaccharidosis type V, formerly)
(MPS V, formerly)

ムコ多糖症 I-S 型
(Scheie 症候群)
(Alpha- L- イズロニダーゼ欠損症)
指定難病19 ライソゾーム病
小児慢性特定疾病 代75 ムコ多糖症Ⅰ型

責任遺伝子:252800 Alpha-L-iduronidase (IDUA) <4p16.3>
遺伝形式:常染色体劣性

(症状)
(GARD)
<80%-99%>
 Abnormal nerve conduction velocity (神経伝導速度異常) [HP:0040129]
 Aortic regurgitation (大動脈弁逆流) [HP:0001659] [1120]
 Cerebral palsy (脳性麻痺) [HP:0100021] [02601]
 Corneal opacity (角膜混濁) [HP:0007957] [0620]
 Glaucoma (緑内障) [HP:0000501] [06606]
 Mucopolysacchariduria (ムコ多糖尿) [HP:0008155] [2066]

<30%-79%>
 Coarse facial features (粗な顔貌) [HP:0000280] [0408]
 Everted lower lip vermilion (下口唇唇紅部外反) [HP:0000232] [05522]
 Hepatomegaly (肝腫) [HP:0002240] [01813]
 Splenomegaly (脾腫) [HP:0001744] [01817]
 Thick vermilion border (分厚い唇紅部) [HP:0012471] [0552]

<5%-29%>
 Dysostosis multiplex (多発性異骨症) [HP:0000943]
 Joint stiffness (関節硬直) [HP:0001387] [15100]
 Rhinitis (鼻炎) [HP:0012384] [01610]
 Sensorineural hearing impairment (感音難聴) [HP:0000407] [0910]
 Spastic paraparesis (痙性対不全麻痺) [HP:0002313] [02613]
 Wide mouth (幅広い口) [HP:0000154] [0802]


AS (大動脈弁狭窄) [HP:0001650] [1120]
 Autosomal recessive inheritance (常染色体劣性遺伝) [HP:0000007]
 Broad face (幅広い顔) [HP:0000283] [0407]
 Cervical cord compression (頚髄圧迫) [HP:0002341] [161512]
 Constrictive median neuropathy (拘束性正中神経症) [HP:0012185] [0204]
 Depressed nasal bridge (低い鼻梁) [HP:0005280] [0722]
 Full cheeks (大きな頬部) [HP:0000293] [0528]
 Genu valgum (外反膝) [HP:0002857] [15112]
 Mandibular prognathia (下顎突出) [HP:0000303] 「0541」
 Obstructive sleep apnea (閉塞性睡眠時無呼吸) [HP:0002870]  [01600]
 Pes cavus (凹足) [HP:0001761] [15602]
 Short neck (短頸) [HP:0000470] [1001]
 Wide nose (幅広い鼻) [HP:0000445] [0703]

(UR-DBMS)
【一般】知能正常
 閉塞性睡眠時無呼吸
 軽度の精神遅滞
 精神病エピソード
 肝脾腫なし
 低身長なし
 正常頭
【顔】幅広い顔
 大きな頬部
 下顎突出
 軽度の粗な顔貌
【眼】角膜混濁, 進行性
 緑内障 (一部の患者で)
 網膜変性 (一部の患者で)
 視力喪失 (後に)
【鼻】低い鼻梁
 幅広い鼻
 幅広い鼻翼
【耳】難聴 (後に)
【頸部】短頸
 閉塞性気道疾患
 頸部硬膜炎 (硬膜肥厚による頸髄圧迫)
【心】AS, AR
 僧帽弁異常
【体幹】鼡径または臍ヘルニア
【四肢】外反膝
 手根管症候群
 鷲手変形
 凹足
 *早期学童までに関節拘縮 (指趾, 肘, 肩)
【X線】多発性異骨症, 軽度の (一部の患者で)
 腰椎仙骨すべり症
 (胸腰部後弯, 先細りの中手骨, 幅広い中手骨, 脊椎骨前方楔, 胸腰部突背, "靴型" の拡大したトルコ鞍, 長管骨の骨幹拡大 (上肢), 肋骨拡大), 骨嚢胞
【検査】*ムコ多糖尿 (dermatan sulfate, heparan sulfate)
 線維芽細胞と白血球封入体の異染性染色 (非特異的)
(1) alpha-L-iduronidase 欠乏 (白血球, 線維芽細胞, 羊水細胞)
(2) 線維芽細胞による異常な硫酸塩の取り込みと変性→ "Hurler-factor"により是正
治療:股関節への対症療法
出生前診断:羊水穿刺による出生前診断
【その他】5歳以後症状発症
 典型的には10-20歳で診断
 Alpha-L-iduronidase 活性は <1% (全ての MPS1で)
 MPS1 型は発症年齢と進行または変異により区別される

<小児慢性特定疾病 代75 ムコ多糖症Ⅰ型>
診断方法
(1) 下記の症状・臨床検査からムコ多糖症を疑う。
症状:特有の顔貌, 関節拘縮, 関節変形, 骨の変形, 精神運動発達障害, 神経学的退行, 角膜混濁, 難聴, 繰り返す滲出性中耳炎, アデノイド, 扁桃肥大, 臍ヘルニア, そけいヘルニア, 肝脾腫大, 閉塞性呼吸障害, 騒音性呼吸, 異所性の蒙古斑など。それぞれの症状は, 治療を行わないと加齢に伴い進行する。
臨床検査:全身骨X線で多発性の骨形態変化を認める。その他, 尿中ウロン酸排泄量の上昇があり, 病型により, デルマタン硫酸, ヘパラン硫酸, ケラタン硫酸などの過剰排泄を認める。
(2) 確定診断は酵素診断によりなされる。白血球, 培養線維芽細胞などの検体から, 以下の酵素の活性低下を示すことにより, 診断が確定する。なお, 遺伝子診断は, 補助的検査であり, 原則として, 確定診断には用いない。
ムコ多糖症I型: α-L-iduronidase
ムコ多糖症II型: Iduronate sulfarase
ムコ多糖症III型:  heparan N-sylfatase
 α-N-acetylglucosaminidase
 acetylCoA:α-glucosaminide acetyltransferase
 N-acetylglucosamine 6-sulfatase
ムコ多糖症IV型: N-acetylgalactosamine 6-sulfatase欠損症
 β-galactosidase欠損症
ムコ多糖症VI型: N-Acetylgalactosamine 4-sulfatase(別名arylsulfatase B)
ムコ多糖症VII型: β-Glucuronidase
※  なお, 2014年2月現在, 検査センターエスアールエルで, 尿中ウロン酸, ムコ多糖分画および血液検体を用いたムコ多糖症 I型, II型, III型, IV型, VI型, VII型の酵素診断が可能である。
当該事業における対象基準
全A
疾患名に該当する場合
概要・定義
グリコサミノグリカンのデルマタン硫酸(DS)とヘパラン硫酸(HS)の分解に必要なライソゾーム酵素であるα-L-iduronidase の先天的欠損により発症する常染色体劣性遺伝性疾患である。
疫学
発症頻度は, 約10万人にひとりとされている。日本では, 約70症例が報告されている。
病因
発症時期, 重症度から, 3病型に分類されるが, それらの病型の境界は, 明瞭ではない。
① MPS IH(Hurler病) 発症時期が最も早く, 病態の進行も早い, 最重症型である。生直後から, 特徴的な粗な顔貌(大きな頭, 前額の突出, 巨舌), 胸郭の変形, 肝脾腫, 広汎で体全体に広がる蒙古斑などを認める。乳児期には, 精神発達遅滞, 心臓弁膜症, さいヘルニア, ソケイヘルニア, 騒音呼吸, 反復性中耳炎, 角膜混濁, 関節可動域制限などが次第に明らかになる。乳幼児期は加成長を呈するが, 3歳ごろから成長が鈍化し, 低身長に転ずる。
② MPS IS(Scheie病):発症時期が遅く病態の進行も緩徐である。特異的顔貌, 角膜混濁, 緑内障, 閉塞性呼吸障害, 心臓弁膜症, 肝臓, 脾臓の腫大, 関節可動域性制限, 臍ヘルニア, そけいヘルニアなどの全身症状が学童期以降に出現し加齢とともに進行するが, 知的障害を伴わないのが特徴的である。
③ MPS IH/S (Hurler-Scheie病): MPS IH(Hurler病)とMPS IS(Scheie病)のほぼ中間の臨床像を示す。
症状
特異的顔貌, 精神運動発達障害, 神経学的退行, 角膜混濁, 緑内障, 繰り返す中耳炎, 難聴, 骨形成不全, 閉塞性呼吸障害, 心臓弁膜症, 肝臓, 脾臓の腫大, 関節可動域性制限, 臍ヘルニア, そけいヘルニア, などの全身症状を呈する。進行性疾患で加齢とともに重症化する。乳児期, 幼児期は, 加成長を呈する症例が多いが, 3-4歳以降は, 成長速度は低下し, 低身長に転ずる。
診断
ムコ多糖の過剰蓄積は, 尿中ムコ多糖の定量で判定する。尿中ムコ多糖の分画から, 病型をある程度予測できるが, 最終的には, 血液あるいは培養皮膚線維芽細胞などで酵素活性の低下を証明し確定診断とする。遺伝子診断は, 診断を確定するのに必須ではないが重症度の予後判定や家族内の保因者診断や発端者の同胞の出生前診断には有用である。
① 画像検査:全身骨X線で, Dysostosis Multiplexという多彩な骨形成異常を認める。頭蓋骨肥厚, トルコ鞍拡大, 腰椎卵円化, オール状肋骨, 砲弾様指骨, 中手骨近位端の先細り, 大腿骨頭異形成などを認める。頭部MRIでは脳室拡大, 血管周囲腔の空泡状変化が認められる。
② 尿中ムコ多糖定量:尿中ウロン酸の排泄量が増加する。分画では, DSとHSの増加を認める。
③ α-L-iduronidaseの酵素活性定量:白血球, 培養線維芽細胞などで活性低下が認められる。残存活性で重症度を区別することは困難である。
④ α-L-iduronidase の遺伝子変異の同定:日本人では, 遺伝子変異のホットスポットはない。ミスセンス変異, ナンセンス変異, 欠失, スプライス変異, フレームシフトなど変異のパターンは多彩であり, 100種類以上の変異が報告されている。
治療
対症療法と原因治療がある。後者としては, 酵素補充療法と造血細胞移植がある。
予後
病初期に発見し早期に治療を開始しえた症例では比較的予後がいい。
成人期以降
酵素補充療法や造血細胞移植を行った症例でも, 病気の進行を完全に止めることはできない。

(責任遺伝子) *252800 Alpha-L-iduronidase (IDUA) <4p16.3>
(1) Hurler syndrome (607014)
.0001 Hurler syndrome [IDUA, TRP402TER] (rs121965019) (gnomAD:rs121965019) (RCV000012683...) (Scott et al. 1992; Beesley et al. 2001)
.0002 Hurler syndrome [IDUA, GLN70TER] (rs121965020) (gnomAD:rs121965020) (RCV000012684...) (Scott et al. 1992; Beesley et al. 2001)
.0003 Hurler syndrome [IDUA, PRO533ARG] (rs121965021) (gnomAD:rs121965021) (RCV000012685...) (Scott et al. 1992; Alif et al. 1999)
.0005 Hurler syndrome [IDUA, GLY409ARG AND TER654CYS] (rs199794428) (rs11934801) (gnomAD:rs199794428) (gnomAD:rs11934801) (RCV000078375...) (Bach et al. 1993)
.0006 Hurler syndrome [IDUA, TYR64TER] (rs121965022) (gnomAD:rs121965022) (RCV000012689) (Moskowitz et al. 1993; Bach et al. 1993)
.0007 Hurler syndrome [IDUA, GLN310TER] (rs121965023) (RCV000012690) (Moskowitz et al. 1993; Bach et al. 1993)
.0008 Hurler syndrome [IDUA, THR366PRO] (rs121965024) (gnomAD:rs121965024) (RCV000012691) (Moskowitz et al. 1993; Bach et al. 1993)
.0009 Hurler syndrome [IDUA, 1-BP DEL, G1702] (RCV000012687) (Scott et al. 1993)
.0010 Hurler syndrome [IDUA, ARG621TER] (rs121965025) (gnomAD:rs121965025) (RCV000012692...) (Bunge et al. 1994)
.0014 Hurler syndrome [IDUA, 5BP INS, FS] (rs786200915) (RCV000208610...) (Yamagishi et al. 1996)
(2) Scheie syndrome (607016)
.0004 Scheie syndrome [IDUA, IVS5AS, G-A, -7] (rs762411583) (gnomAD:rs762411583) (RCV000012688...) (Moskowitz et al. 1993)
.0011 Scheie syndrome [IDUA, ARG492PRO] (rs121965026) (gnomAD:rs121965026) (RCV000012693) (Tieu et al. 1995)
(3) Hurler-Scheie syndrome (607015)
.0012 Hurler-Scheie syndrome [IDUA, LEU490PRO] (rs121965027) (gnomAD:rs121965027) (RCV000012694...) (Tieu et al. 1995)
.0013 Hurler-Scheie syndrome [IDUA, TER654GLY] (rs387906504) (rs121965028) (RCV000012695...) (Tieu et al. 1995)
.0015 Hurler-Scheie syndrome [IDUA, ARG89GLN] (rs121965029) (gnomAD:rs121965029) (RCV000208598...) (Yamagishi et al. 1996)
.0016 IDUA pseudodeficieny [IDUA, ALA300THR] (rs121965030) (RCV000667026...) (Aronovich et al. 1996)
.0017 Hurler-Scheie syndrome [IDUA, ARG619GLY] (rs121965031) (gnomAD:rs121965031) (RCV000012699...) (Lee-Chen et al. 1999)
.0018 Hurler-Scheie syndrome [IDUA, THR364MET] (rs121965032) (RCV000984188...) (Lee-Chen and Wang 1997)
.0019 Hurler-Scheie syndrome [IDUA, IVS2AS, C-G, -3] (rs1226056948) (gnomAD:rs1226056948) (RCV000666654...) (Teng et al. 2000)
.0020 Hurler-Scheie syndrome (Hurler syndrome, included) [IDUA, LEU346ARG] (rs121965033) (gnomAD:rs121965033) (RCV001248726...) (Teng et al. 2000; Lee et al. 2004)

*IDUA (Alpha-L-Iduronidase)
 Genome size 17,568 bp, 653 aa, 72670 Da
 Exons: 14, Coding exons: 14, Transcript length: 2,186 bps, Translation length: 653 residues
・2つのグリコサミノグリカンである dermatan sulfate と heparan sulfateの末端 alpha-L-iduronic acid 残基を加水分解する酵素である
 →加水分解はこれらのグリコサミノグリカンのリソソーム分解に必要である
●関係する pathways: Lysosome; Chondroitin sulfate/dermatan sulfate metabolism

(ノート)
●(#) は, Scheie 症候群は4p16 の alpha-L-iduronidase (IDUA; 252800)をコードする遺伝子のホモ接合体または複合ヘテロ接合体変異が原因なため

●ムコ多糖症は, グリコサミノグリカンまたはムコ多糖類分解に含まれる特異的リソソーム酵素欠損が原因の遺伝性疾患群である
 部分的に分解されたグリコサミノグリカンの蓄積は細胞, 組織および器官機能の障害を生じる

●alpha-L-iduronidase の欠損は3つの主要な認知できる臨床単位の幅広い表現型を生じる
 Hurler (MPS IH), Scheie (MPS IS; 607016), および Hurler-Scheie (MPS IH/S) 症候群である
●Hurler および Scheie 症候群は各々 MPS I 臨床スプライスの重症および軽症型をあらわし, Hurler-Scheie 症候群は表現度の中間である (McKusick, 1972)

命名
●McKusick ら(1972) は, Hurler 症候群は MPS IH, Scheie 症候群は MPS IS と呼ぶことを示唆した

臨床症状
●関節拘縮, 末梢が最も濃い角膜混濁, 知能障害があってもほとんどなく成人へ生存, および大動脈逆流が Scheie 症候群の特徴である
 早期の考え (McKusick et al., 1965) では, MPS V として別疾患とされた

●Scheie 症候群の症状は, 非常に軽症なので, 診断は成人で考慮されないことが多い
 診断は10-20歳の間につけられることが多い
 症状は5歳以後に生じることが多い (Neufeld and Muenzer, 2001)

●Emerit ら(1966) の第2例目は, おそらく Scheie 症候群であった
 両親はまたいとこであった
 顔貌と手は特徴的で, 大動脈逆流と三尖弁閉鎖, 内臓逆位があった
●Koskenoja and Suvanto (1959)が報告した, 47歳と55歳の姉妹はおそらくこの疾患であった
●Poulet (1968) の患者いとこ2例はおそらく Scheie 症候群であった

●Fischer ら(1999) は, Ullrich-Scheie 症候群の臨床診断をもつ1例で, 大動脈および僧帽弁狭窄を記載した
 患者は低身長であった (161 cm)
 彼は, 知能正常で, 学校の成績は良かった
 23歳時, 反復性失神が, 重度の大動脈弁狭窄の診断となった
   St. Jude 人工弁で石灰化された弁が置換された
 角膜混濁が発見された
 30歳代で彼は下肢衰弱を生じ, C1-T1の表皮組織の重度の肥厚による脊髄圧迫によることが発見された
 脊髄減圧術が必要だった
 35歳時, 狭窄した僧帽弁がSt. Jude prosthesisにより再び置換された

頭頸部
●顏は他のMPSでみられる粗な顔貌より比較的正常である
 顏は下顎突出と大きな頬部を伴い幅広い
 鼻梁は低タンで, 鼻と鼻孔は幅広い
 頸部は短い (Whitley, 1993)

●角膜混濁は Scheie 症候群の成人では多くみられ, 主訴であることが多い (Whitley, 1993)
 →進行性で, 有意な視力障害を生じる
 ほかの眼科問題として緑内障 (Quigley et al., 1975) と網膜変性 (Neufeld and Muenzer, 2001)がある

心血管症状
●大動脈および僧帽弁疾患が Scheie 症候群の特徴である (Whitley, 1993)
●Butman et al. (1989) は, Scheie 症候群による重度の大動脈および僧帽弁狭窄の成人女性患者1例で大動脈と僧帽弁置換術に初めて成功した

●Gross et al. (1988) は, Scheie 症候群の姉妹2例での心エコー異常を記載した
 19歳の姉は軽度の大動脈狭窄の臨床的証拠をもっていた
 彼女の心エコーは, 大動脈弁の異常に肥厚した左冠側尖と異常な僧帽弁を明らかにした
 心カテは大動脈弁狭窄と逆流およびよく保存された左室機能を確認した
 妹は14歳で, 同じような心エコー所見をもっていたが, 非冠側大動脈弁尖が肥厚し動かなかった

呼吸症状
●Perks et al. (1980) は, Scheie 症候群の兄弟2例と睡眠時無呼吸を報告した
 18歳の弟は日中の眠気と睡眠時のうるさい呼吸音をもっていた
 睡眠研究は, 320回の無呼吸エピソード, 70%は閉塞性, 30%は混合性であった
 無呼吸は大脳低酸素を示唆する脳波変化を伴っていた
 彼は気管切開術を受け, 症状は改善した
 25歳の兄はより軽く, 58回の無呼吸エピソード, 24%閉塞性33%混合性43%中枢性であった

筋骨格系
●多発性異骨症が存在しうるが通常軽度である
 関節病変は手に著明で鷲手変形を伴う
 患者は外反膝, 強直性有痛性の足, 凹足ももつ (Neufeld and Muenzer, 2001)

●手根管症候群 (MPSに多い合併症) が, おそらく屈筋支帯の結合織での過度のリソソーム蓄積と下部骨格異形成による変形の組合せの結果である
●Wraith and Alani (1990) は, いろんな型のMPSとムコリピドーシス III 型の18例で神経伝導検査を行った
 MPS IS の5例全例が手根管症候群をもっていた

●腰椎仙骨脊椎すべり症が存在し, 脊髄圧迫を伴うかもしれない (Wraith, 1995)

神経系
●知能は正常である (Neufeld and Muenzer, 2001)
●頸椎硬髄膜炎 (硬膜のグリコサミノグリカンに二次的な頸髄圧迫) がMPS IS で生じるが, MPS IH/S ではより少ない

生化学的特徴
●Wiesmann and Neufeld (1970) は, Sanfilippo および Hunter 症候群から, Scheie および Hurler 症候群の線維芽細胞の交叉是正を発見しなかった
 両疾患は alpha-L-iduronidase 欠損を示した

●Fujibayashi ら(1984) は, Hurler 線維芽細胞での残余 alpha-L-iduronidase 活性は, 熱安定性であるが, Scheie の線維芽細胞は熱不安定性であることを発見した

●Schuchman and Desnick (1988) は, 3つの MPS I サブタイプの各々の患者で, 交叉反応性免疫物質 (CRIM) の存在を報告した
 さらに, 彼らはサブタイプ抽出物に, ヘテロ接合体範囲まで, 残余酵素活性を亢進する, エフェクター複合体を証明した
 しかし, この研究で使用されたポリクローナル抗体は, Scott ら(1990) が体細胞融合で IDUA 遺伝子のマッピングに使用した時, 当てにならない結果を与えたため, 疑わしい

遺伝
●MPSIS の常染色体劣性遺伝は, 正常な両親から生まれた患者同胞により示唆された (McKusick et al., 1965)
●Scheie 症候群の McKusick の原型症例は, その後ホモ接合体で Hurler 症候群を生じるアレル (252800.0001) と, 残余酵素活性をもつスプライス変異のもう一つのアレル(252800.0004) の, 遺伝的複合であることが示された

集団遺伝学
●Lowry and Renwick (1971) は, Scheie 症候群の頻度を1/ 500,000 出生と推定した

●Yamagishi ら(1996) [岐阜大学小児科] は, 同胞例2組を含み, いろんな臨床的表現型をもつ 19例の日本人 MPS I 患者で IDUA 変異を定義した
 Hurler 症候群6例, Hurler/Scheie 症候群7例, Scheie 症候群が6例
 2つの多い変異がこれらの患者の38のアレル中42%を説明した
 1つはヌクレオチド704のT とヌクレオチド507のCとの間の新しい 5 bp 挿入 (704ins5; 252800.0014)で, 日本人集団でのみみられた
 もう1つは, ミスセンス変異, R89Q (252800.0015), で, 白人にもみられるがまれである
 白人で最も多い2つのMPS I 変異であるW402X または Q70X アレルをもつ日本人ではみられなかった
 704ins5 変異のホモ接合体は, 重症表現型と連関ししていた
 R89Q 変異のホモ接合体は軽症表現型と連関していた
 これら2つの変異の複合ヘテロ接合体は, 中間型の表現型を生じた
 IFUA 座に連鎖した多型を使ったハプロタイプ解析は, これら2つの多い変異の各々が異なる特異的ハプロタイプで生じることを証明した
  これらの多い変異の各々が共通創始者由来であることを示唆した
 2つの多い日本人変異の軽症-中等症-重症表現型との関係は, McKusick ら(1972)の予測を満たす

分子遺伝学
●Bunge ら(1995) は, IDUA 遺伝子の13の新生および7つの過去の変異報告を証明した
 全部で異なる臨床重症度の MPS I 患者29例での, 変異アレルの88%と遺伝子型の86%をカバーする

●Beesley ら(2001) は, Scheie 症候群7家系を含む, I 型ムコ多糖症85家系での変異解析で, 170の変異アレル中165を証明した
 W402X (252800.0001) と Q70X (252800.0002)の高頻度にも関わらず, 個々の家系にユニークな多くの新しい変異の証明は, MPS I の遺伝的異質性をさらに光をあてた

(ノート 2)
●Scheie et al (1962) は MPS I-S の同胞例を記載した
●古い欧州の書籍で "late Hurler disease" をもつと記載された患者は, 同じ疾患かもしれない
(Schinz HR, Furtwangler A 1928, Spranger 1972)
 この疾患は小児期にはほとんど認知されない
●正常身長, 角膜混濁, 手変形 (鷲手), 大動脈弁病変, 正常知能, および HS と DS のリソソーム蓄積の生化学的証拠と過度の尿中排泄が特徴である

●本疾患は常染色体劣性である
●頻度は生産児で 1/500,000 (McKusick 1972) から 1/600,000 と推定されている (Lowry RB, Renwick DHG 1971)
●DS と HS の細胞内の異常な蓄積はa-L-iduronidase 活性低下が原因である
 同じ酵素欠損は MPS I-H に責任がある(Bach ら1972)
 MPS I-H と I-S がアレリック変異によることは今や明らかである (Mueller OT et al 1984)
 MPS I の軽症型である Scheie および Hurler-Scheie 症候群は, いくらかの酵素活性残存を許す少なくとも1つの変異アレルをもつようだ
 MPS I-Sでは, いろんな変異が記載されている (Tieu et al 1995, Yamagishi A et al 1996)


●早期小児期には主要な異常はない
 症状は通常5-15歳までに明らかとなる
 成人では, 顔はいくらか粗であるが, Hurler 様ではない
  幅広く, 顔面中部の高さの増加と, 下顎突出を伴う
 大多数の症例では, 口角は下垂する
 巨舌があるかもしれない
 まれに, 鼻は幅広く, 鼻孔は幅広い
●角膜混濁は早期に始まり, 最初は末梢性であるが, 20-30歳代までに, 角膜ジストロフィーは重度の視力低下を生じうる

骨格
●患者の身長は正常またはほぼ正常である
●頸部は短いかもしれない
●ある例では, 体幹は四肢より比較的短い
●手足は幅広く短い
 指趾は鷲手足位置で固定されている
 全ての関節で運動は制限される
●外軟質と凹足が多い (Hamilton E, Pitt P: 1992)
●最も目立つX線所見は, 小さな手根骨と指の鷲手変形であうr
 手根骨と中手骨で嚢胞性変化が多い
 正中神経障害を伴う手根管症候群が多い
 さらに, 幅広い肋骨と時々長骨基部の軽度の低形成がある

その他
●知能は通常正常である
●肝脾腫がありうる
 まれに, 末梢性角膜混濁がみられる (Summers CG et al 1994)
 鼠径+/-臍ヘルニアが多い
 大多数の成人患者は大動脈狭窄+/-逆流がみられる
 雑音は小児期で検出されるが, 成人まで臨床的には有意ではない
 弁置換が報告されているが, 経験は少ない (Butman SM et al 1989)
 肥厚した硬膜による頸髄圧迫, 頸髄硬膜炎と安静時ミエロパチーが MPS I-Sで生じうるが, MPS I-H/S より少ない (Neufeld EF, Muenzer J 1995)
●寿命は正常か, 心疾患のため減少する

口腔
●口腔変化は MPS I-H, MPS II, および MPS VI に類似する
 萠出前の第1永久歯大臼歯周囲の嚢胞変化

検査
●MPS I-Hでのように, 診断は分離白血球または培養線維芽細胞での alpha-L-iduronidase 活性の直接アッセーで可能である (Neufeld EF, Muenzer J 1995)
●小児期と後期思春期では, 偽-Hurler 多発性ジストロフィーを除外すべきである
 この疾患の体型は MPS I-S に類似しているから
 しかし, 偽-Hurler 多発性ジストロフィーでは, GAG 排泄は正常で, 角膜は通常透明であり, 精神遅滞がある

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