疾患詳細

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臼蓋窩に限定された多発性両側性骨びらん. (Natowicz MR et al. Clinical and biochemical manifestations of hyaluronidase deficiency. New Eng. J. Med. 335: 1029-1033, 1996)

#601492
Mucopolysaccharidosis, type IX (MPS9)
(MPS IX)
(Hyaluronidase deficiency)

ムコ多糖症 IX 型
(ヒアルロニダーゼ欠損症)
指定難病19 ライソゾーム病

責任遺伝子:607071 Hyaluronoglucosaminidase 1 (HYAL1) <3p21.31>
遺伝形式:常染色体劣性

(症状)
【一般】低身長
 反復性中耳炎
 精神遅滞
 肝腫
【顔】軽度の頭蓋骨顔面異常
【眼】正常な角膜
【鼻】平坦な鼻陵
【口】二分口蓋垂
 粘膜下口蓋裂
【四肢】多発性の関節周囲の軟部組織腫瘤 (ヒアルロン酸の蓄積)
 'ガングリオン' (手関節, 足関節)
 膝窩嚢胞
 関節滲出液
 臼蓋びらん
【毛髪】多毛
 粗な毛髪
【X線】軽度の多発性異骨症
 歯状突起低形成
【皮膚】全身性皮膚腫脹
【検査】hyaluronidase 欠損症
 (MRI) 結節性滑膜
 膝窩嚢胞
 大関節滲出液
 Dermatan sulfate 尿
 Keratan sulfate 尿
 toluidine blue 染色で循環リンパ球細胞膜下部の環状 metachromasia

(責任遺伝子) *607071 Hyaluronoglucosaminidase 1 (HYAL1) <3p21.31>
.0001 Mucopolysaccharidosis type IX (601492) [HYAL1, GLU268LYS] (dbSNP:rs104893743) (Triggs-Raine et al. 1999)
.0002 Mucopolysaccharidosis type IX [HYAL1, 37-BP INS/14-BP DEL, NT1361] (Triggs-Raine et al. 1999)

(ノート)
●(#) は, hyaluronidase 欠乏症は HYAL1 遺伝子 (607071) の変異が原因であるため

臨床症状
●Natowicz et al. (1996) は, 低身長と多数の関節周囲軟部組織腫瘤をもつ小児1例で臨床, 病理および生化学的所見を記載した
 → hyaluronidase の遺伝的欠乏によるヒアルロナン (ヒアルロン酸)蓄積症が証明された
 グリコサミノグリカンの分解を触媒するリソソーム酵素の多くの遺伝的欠乏が以前に証明されている
 → hyaluronan 分解を触媒するリソソーム endoglycosidase であるf hyaluronidase が例外であった
 患者は14歳女児で, 中耳炎の頻回のエピソードと6か月時に除去された左手首のガングリオン以外は, それまで正常であった
 7.5歳時, 左足首外側の軟部組織腫瘤が除去された
 次の年, 別の関節周囲腫瘤が生じた (近位右第5指, 左膝窩部, 左下方膝, 左右の外踝)
 9.5歳時, 患者は一過性有痛性の関節周囲腫脹と全身性皮膚腫脹の最初のエピソードをもった
 これらのエピソードは, 運動や発熱疾患に伴い, または続発し, 自己制限性で, 72時間内に自然に回復した
 8.5〜14歳の間に, 彼女の成長率は15〜5パーセンタイルに低下し, いくつかの関節周囲腫瘤は増大し, 新しい腫瘤と右足痛が生じた
 彼女は, 14歳時145.5 cm tall (5パーセンタイル以下) であった

●Natowicz et al. (1996) は, 軽度の頭蓋顔面形態上に気づいた
 →平坦な鼻稜, 二分口蓋垂, 粘膜下口蓋裂
 全ての関節移動域は十分で, 側弯, 後弯, アデノパチー, 内臓肥大はなかった
 10歳時の左膝の MRI は, 結節性滑膜, 膝窩嚢胞, 大関節滲出液を明らかにした
 12歳時の股関節のCTとMRIは, 腫瘤とびらんの存在を証明し, 両側性関節滲出液と右転子滑液包嚢胞の疑いを証明した
 患者は, 血漿 hyaluronidase 活性がなく, 混合実験は, 酵素活性インヒビターの証拠を示さなかった
 患者の父と母の血漿 hyaluronidase 活性は, それぞれ 30% と 53% oで, 彼女の祖父母も低または中間の酵素活性を示した
 hyaluronan の血漿濃度は患者で非常に高かったが, 父と母は正常であった
 この家系での hyaluronidase 欠乏の記載は, 常染色体劣性遺伝に一致した
 Natowicz et al. (1996) は, 血漿 hyaluronidase活性は25の異なるリソソーム蓄積症56例では正常で, 他の蓄積症16例では血漿 hyaluronan の異常上昇はなかった

●Natowicz et al. (1996) は, 関節周囲または関節内での組織球結節性集積の蓄積は, hyaluronidase によるhyaluronan 代謝不全の結果かもしれないと示唆した
 これらの部位での組織球優位は, マクロファージの hyaluronan-誘発性集積の結果かもしれない
 基質とマクロファージの著明な細胞内筑西は, おそらく酵素欠乏といっしょに, これらの細胞によるhyaluronan の受容体仲介性内部化によった
 線維芽細胞 (および皮膚)病変が軽いことは, おそらく, 他の組織は hyaluronan の効率的内部化が軽いため, hyaluronan のリンパ系への拡散, または他の酵素または非酵素的変性径路によるかもしれない
 Natowicz et al. (1996) は, 組織球の関節周囲集積が臼蓋窩のみに検出される骨びらんを生じるのは奇妙だと述べた
 活性化されたマクロファージは, 限局性破骨活性を刺激できるいろんなサイトカインを分泌する

分子遺伝学
● Triggs-Raine et al. (1999)は, MPS IX の分子的基盤を決定するため, 3p21.3 に縦に分布する2つの候補遺伝子を解析した
 → hyaluronidase 活性をもつ精子タンパクと相同性をもつタンパクをコードする
 これらの遺伝子, HYAL1 と HYAL2 (603551)は, 異なる基質特異性をもつ2つの独特のリソソーム hyaluronidases をコードする
 彼らは, Natowicz et al. (1996) が最初に記載した hyaluronidase 欠乏症の患者は, HYAL1 遺伝子の2つの変異の複合ヘテロ接合体であることを発見した
 →1412G-A 変異は, 暫定的活性部位残基で非保存的アミノ酸置換を誘導する (glu268 to lys; 607071.0001)
  複雑な遺伝子内再構成, 1361del37ins14 (607071.0002)は, 早期終止コドンとなる
 彼らは, これら2つの hyaluronidase 遺伝子と近接する HYAL3 遺伝子 (604038)は, 非常に異なる組織発現パターンをもち, hyaluronan g代謝での異なる役割に一致する
 これら3つの遺伝子に関する所見は, MPS での予想外の軽症表現型を説明し, 他のhyaluronidase 欠乏症の存在を予測した

命名
●ムコ多糖症のヒアルロン酸型は, ムコ多糖症IX型と命名される

●ムコ多糖症の1つの型が, 早期には VIII 型ムコ多糖症(MPS VIII; MPS8), DiFerrante 症候群, または, glucosamine-6-sulfate sulfatase 欠乏症と命名されていたが, 表現型は後に誤ったデータに基づくことが発見された (歴史参照)
 これらの命名はもはやムコ多糖症の型としては使用されない

(ノート2)
●Triggs-Raine et al (2000) は, 最近 MPS IX を報告した
 患者は, 血清 hyaluronidase 欠乏と驚くほど軽い臨床表現型を示した
 →関節周囲軟部組織腫瘤, 軽度の低身長, 神経学的および内臓病変なし, 組織学的および電顕でのリソソーム蓄積症の証拠あり
 MPS IX は 3p21.3 にマップされる

(文献)
(1) Ginsburg, L. C., DiFerrante, D. T., Caskey, C. T., DiFerrante, N. M. Glucosamine-6-SO4 sulfatase deficiency: a new mucopolysaccharidosis. (Abstract) Clin. Res. 25: 471A, 1977
(2) DiFerrante, N. M., Ginsburg, L. C., Donnelly, P. V., DiFerrante, D. T., Caskey, C. T. Deficiencies of glucosamine-6-sulfate or galactosamine-6-sulfate sulfatases are responsible for different mucopolysaccharidoses. Science 199: 79-81, 1978
(3) Ginsburg, L. C., Donnelly, P. V., DiFerrante, D. T., DiFerrante, N. M., Caskey, C. T. N-acetylglucosamine-6-sulfate sulfatase in man: deficiency of the enzyme in a new mucopolysaccharidosis. Pediat. Res. 12: 805-809, 1978
(4) DiFerrante, N. N-acetylglucosamine-6-sulfate sulfatase deficiency reconsidered. (Letter) Science 210: 448, 1980
(5) Natowicz, M. R., Short, M. P., Wang, Y., Dickersin, G. R., Gebhardt, M. C., Rosenthal, D. I., Sims, K. B., Rosenberg, A. E. Clinical and biochemical manifestations of hyaluronidase deficiency. New Eng. J. Med. 335: 1029-1033, 1996
(6) Triggs-Raine, B., Salo, T. J., Zhang, H., Wicklow, B. A., Natowicz, M. R. Mutations in HYAL1, a member of a tandemly distributed multigene family encoding disparate hyaluronidase activities, cause a newly described lysosomal disorder, mucopolysaccharidosis IX. Proc. Nat. Acad. Sci. 96: 6296-6300, 1999

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