疾患詳細

疾患詳細





#252010
Mitochondrial complex I deficiency, nuclear type 1 (MC1DN1)
(Mitochondrial complex I deficiency)
(NADH:Q(1) oxidoreductase deficiency)
(NADH-coenzyme Q reductase deficiency)
(Mitochondrial NADH dehydrogenase component of complex I, deficiency of)

ミトコンドリア複合体 I 欠損症, 核型1
(NADH:Q(1) オキシドレダクターゼ欠損症)
(ミトコンドリア複合体 I NADH 脱水素酵素成分欠損症)
(ミトコンドリア筋症-呼吸鎖 NADH-CoQ レダクターゼ活性欠損)
指定難病21 ミトコンドリア病
<小児慢性特定疾病 代謝54 ミトコンドリア呼吸鎖複合体欠損症>

責任遺伝子:161015 NADH-Ubiquinone oxidoreductase flavoprotein 1 (NDUFV1) <11q13.2>
遺伝形式:常染色体劣性

(症状)
(GARD)
<80%-99%>
 Abnormal mitochondria in muscle tissue (筋組織の異常ミトコンドリア) [HP:0008316]
 
 <1%-4%>
 Microcephaly (小頭) [HP:0000252] [03013]
 
 
 Acute necrotizing encephalopathy (急性壊死性脳症) [HP:0006965] [0201]
 Ataxia (運動失調) [HP:0001251] [028]
 Autosomal recessive inheritance (常染色体劣性遺伝) [HP:0000007]
 Babinski sign (バビンスキー徴候) [HP:0003487] [0213]
 Blindness (盲) [HP:0000618] [06011]
 Cerebellar atrophy (小脳萎縮) [HP:0001272] [16013]
 Cerebral edema (脳浮腫) [HP:0002181] [160121]
 Coma (昏睡) [HP:0001259] [0150]
 Decreased activity of mitochondrial respiratory chain (ミトコンドリア呼吸鎖活性減少) [HP:0008972]
 Developmental regression (発達退行) [HP:0002376] [0125]
 Dyskinesia (ジスキネジア) [HP:0100660] [02605]
 Exercise intolerance (運動不耐症) [HP:0003546] [0278]
 Failure to thrive (成長障害) [HP:0001508] [01411]
 Feeding difficulties in infancy (哺乳障害, 乳児期) [HP:0008872] [01411]
 Generalized hypotonia (全身性筋緊張低下) [HP:0001290] [0242]
 Global developmental delay (全般的発達遅滞) [HP:0001263] [0120]
 Growth delay (成長遅滞) [HP:0001510] [0130]
 Hepatic failure (肝不全) [HP:0001399] [01811]
 Hepatomegaly (肝腫) [HP:0002240] [01813]
 Hyperreflexia (反射亢進) [HP:0001347] [0241]
 Hypertrophic cardiomyopathy (肥大型心筋症) [HP:0001639] [0273]
 Hypoglycemia (低血糖) [HP:0001943] [2014]
 Hyporeflexia (低反射) [HP:0001265] [0242]
 Increased CSF lactate (髄液乳酸増加) [HP:0002490] [2044]
 Infantile onset (乳児期発症) [HP:0003593]
 Lactic acidosis (乳酸性アシドーシス) [HP:0003128] [2000] [2044]
 Lethargy (嗜眠) [HP:0001254] [0151]
 Leukodystrophy (白質ジストロフィー) [HP:0002415] [160127]
 Leukoencephalopathy (白質脳症) [HP:0002352] [0201]
 Mitochondrial inheritance (ミトコンドリア遺伝) [HP:0001427]
 Muscular hypotonia (筋緊張低下) [HP:0001252] [0242]
 Nystagmus (眼振) [HP:0000639] [06609]
 Optic disc pallor (乳頭蒼白) [HP:0000543] [06522]
 Optic neuropathy (視神経ニューロパチー) [HP:0001138] [06522]
 Poor eye contact (アイコンタクトなし) [HP:0000817] [02202]
 Poor head control (頭部コントロール不全) [HP:0002421] [0242]
 Progressive macrocephaly (進行性大頭症) [HP:0004481] [03012]
 Ptosis (眼瞼下垂) [HP:0000508] [06807]
 Respiratory failure (呼吸不全) [HP:0002878] [01606]
 Respiratory insufficiency (呼吸不全) [HP:0002093] [01606]
 Seizures (けいれん) [HP:0001250] [01405]
 Sensorineural hearing impairment (感音難聴) [HP:0000407] [0910]
 Skeletal muscle atrophy (骨格筋萎縮) [HP:0003202] [0270]
 Spasticity (痙縮) [HP:0001257] [0241]
 Strabismus (斜視) [HP:0000486] [06610]
 Vomiting (嘔吐) [HP:0002013] [01425]
 X-linked dominant inheritance (X連鎖優性遺伝) [HP:0001423]

(UR-DBMS)
【一般】成長障害
 成長障害
 嘔吐
 発達遅滞
 精神運動退行
 嗜眠
 けいれん
 ミオクローヌスてんかん
 昏睡
 肝腫
【神経】筋緊張低下
 筋力低下
 筋萎縮
 運動不耐症
 筋生検は異常なミトコンドリアを示す
 低反射
 運動失調
 反射亢進
 開扇反射
 痙縮
 脳症
 脳浮腫
 急性壊死性脳症
 白質ジストロフィー
 空洞化性白質脳症
 Leigh 症候群に一致する画像異常
 脳幹病変, T2で高輝度
 線条体病変
 視床病変
 小脳病変
 小脳萎縮
【頭】大頭 (一部の患者で)
【眼】眼振
 蒼白の視神経乳頭
 斜視
 眼瞼下垂
 盲
 異常な眼球運動
 網膜機能障害
【耳】感音難聴
 聴覚ニューロパチー
【心】肥大型心筋症
 同心性両室肥大
【肝】肝不全
【性器】小陰茎
 尿道下裂
【検査】乳酸性アシドーシス
 低血糖
 乳酸血症
 髄液乳酸増加
 ミトコンドリア呼吸鎖複合体 I 活性減少
【その他】乳児期発症
 多様な表現型
 早期死亡が生じうる

<小児慢性特定疾病 代謝54 ミトコンドリア呼吸鎖複合体欠損症>
診断方法
<表>に特定疾患としてのミトコンドリア病認定基準を示す。
確実例は(1)の主症候の1項目以上を満たし、かつ(2)の検査・画像所見の2 項目以上を満たすもの(計3 項目必要)とされ、疑い例は主症候の1項目以上を満たし、かつ検査・画像所見の1 項目以上を満たすもの(乳酸値は非特異的であるので①は除く)(計2 項目必要)とされる。
表.ミトコンドリア病 認定基準
(http://www.nanbyou.or.jp/upload_files/112_s.pdf)
1.主要項目
(1)主症候
①進行性の筋力低下、又は外眼筋麻痺を認める。
②知的退行、記銘力障害、痙攣、精神症状、失語・失認・失行、痙攣、強度視力低下、一過性麻痺、半盲、皮質盲、ミオクローヌス、ジストニア、小脳失調などの中枢神経症状のうち、1つ以上を認める。
③心伝導障害、心筋症などの心症状、糸球体硬化症、腎尿細管機能異常などの腎症状、強度の貧血などの血液症状、中等度以上の肝機能低下などの肝症状のうち、1つ以上を認める。
(2)検査・画像所見
①安静臥床時の血清又は髄液の乳酸値が繰り返して高い、又 はMRスペクトロスコピーで病変部に明らかな乳酸ピークを認める。
②脳CT/MRIにて、梗塞様病変、大脳・小脳萎縮像、大脳基底核、脳幹に両側対称性の病変等を認める。
③筋生検又は症状のある臓器でミトコンドリアの形態異常を認める。
なお、必要に応じて、以下の検査を行った場合
④ミトコンドリア関連酵素の欠損又はコエンザイムQ10などの中間代謝物の欠乏を認める。
⑤ミトコンドリアDNAの質的、量的異常、またはミトコンドリア関連核遺伝子変異を認める。
当該事業における対象基準
全A
疾患名に該当する場合
概要・定義
ミトコンドリアの役割は多数あるが、最も大切なのはエネルギー(ATP)の生合成であり、その役割を担うのが呼吸鎖複合体である。したがって、「ミトコンドリア病はミトコンドリア呼吸鎖複合体異常症(MRCD)」と読み替えることができる。いかなる症状、いかなる臓器・組織、いかなる年齢、そしていかなる遺伝形式でも発病しうるのがミトコンドリア病である。従来神経・筋肉の病気と考えられていたが、ミトコンドリア心筋症、肝症など単独の臓器障害を呈するミトコンドリア病も多い1)。
疫学
全てを加えれば最も多いエネルギー代謝系の先天代謝異常症であり、出生5,000人に1人とされる2,3)。
病因
呼吸鎖はミトコンドリア遺伝子と核遺伝子の共同作業で形成される。したがってミトコンドリア病は、ミトコンドリア遺伝(母系遺伝)形式以外に常染色体優性・劣性、X連鎖のすべての遺伝形式で発病しうる4)。特に幼少時期発症例は症状が多彩で重篤な症例が多く、その9割以上は核遺伝子異常によるものである5)。
症状
小児科医の出会うミトコンドリア病の3大症状は、①脳筋症状、②消化器・肝症状、③心筋症状とされる6)。従来ミトコンドリア病の主体とされてきた、いわゆる“ミトコンドリア脳筋症”は比較的軽症のミトコンドリア病に属し、年長発症例に多い。
診断
『診断の手引き』参照
治療
対症療法が中心である。発作時はエネルギー消費を抑えるため安静・睡眠が奨励される。糖質制限と脂質優先摂取、バルプロ酸などのミトコンドリア毒を避けること、発作時にはL-カルニチン、コエンザイムQ、ビタミンB1・Cを中心とするビタミンカクテル療法を行う。いくつかの原因療法も考案中であり、中でもMELASに対するL-アルギニン療法はまもなく保険認可される見通しである。他に治験が進行ないし計画中の薬剤として、ピルビン酸ナトリウム、PBI-743、5-アミノレブリン酸などがあげられる。
成人期以降
病型により千差万別であり一概には言えないが、多くのミトコンドリア病の患者は大小のハンディキャップを背負いつつ成人期に移行する。年少の内から、小児科医は成人各科医師との移行期医療を模索しつつ診療に当たる必要がある。そのための重症度分類も、9つのセクション(日常生活動作(ADL)、高次脳機能、運動、視覚、聴覚、心合併症、腎機能、血液機能、肝機能)から成るミトコンドリア病の症状の多様性に配慮したものが、診断基準に続いて難病ホームページに公開されている。

<指定難病21 ミトコンドリア病>
Definite, Probableを対象とする。
1.主要項目
(1)主症状
 ①進行性の筋力低下, 横紋筋融解症又は 外眼筋麻痺を認める。
 ②知的退行, 記銘力障害, 痙攣, 精神症状, 一過性麻痺, 半盲, 皮質盲, ミオクローヌス, ジストニア, 小脳失調などの中枢神経症状のうち, 1つ以上を認める。または, 手足のしびれなどの末梢神経障害を認める。
 ③心伝導障害, 心筋症などの心症状, 肺高血圧症などの呼吸器症状, 糸球体硬化症, 腎尿細管機能異常などの腎症状, 強度の貧血などの血液症状又は中等度以上の肝機能低下, 凝固能低下などの肝症状を認める。
 ④低身長, 甲状腺機能低下症などの内分泌症状や糖尿病を認める。
 ⑤強度視力低下, 網膜色素変性などの眼症状, 感音性難聴などの耳症状を認める。
(2)検査・画像所見
 ①安静臥床時の血清又は髄液の乳酸値が繰り返して高い, 又はMRスペクトロスコピーで病変部に明らかな乳酸ピークを認める。
 ②脳CT/MRIにて, 大脳基底核, 脳幹に両側対称性の病変等を認める。
 ③眼底検査にて, 急性期においては蛍光漏出を伴わない視神経乳頭の発赤・腫脹, 視神経乳頭近傍毛細血管蛇行, 網膜神経線維腫大, 視神経乳頭近傍の出血のうち1つ以上の所見を認めるか, 慢性期(視力低下の発症から通常6か月以降)における視神経萎縮所見を両眼に認める。
 ④骨格筋生検や培養細胞又は症状のある臓器の細胞や組織でミトコンドリアの病理異常を認める。
 必要に応じて, 以下の検査を行い,
 ⑤ミトコンドリア関連酵素の活性低下又はコエンザイムQ10などの中間代謝物の欠乏を認める。または, ミトコンドリアDNAの発現異常を認める。
 ⑥ミトコンドリアDNAの質的, 量的異常又はミトコンドリア関連分子をコードする核遺伝子変異を認める。
2.参考事項
(ア)病理検査
 特異度が高い。骨格筋病理における, 酵素活性低下又は赤色ぼろ線維(ゴモリ・トリクローム変法染色におけるragged-red fiber:RRF), 高SDH活性血管(コハク酸脱水素酵素におけるstrongly SDH-reactive blood vessel:SSV), シトクロームc酸化酵素欠損線維, 電子顕微鏡によるミトコンドリア病理学的異常を認める。または, 骨格筋以外でも症状のある臓器野細胞・組織のミトコンドリア病理異常を認める。核の遺伝子変異の場合は, 培養細胞などでミトファジーの変化や融合・分裂の異常を確認する。
(イ)酵素活性・生化学検査
 特異度が高い。罹患組織や培養細胞を用いた酵素活性測定で, 電子伝達系, ピルビン酸代謝関連 及びTCAサイクル関連酵素, 脂質代謝系関連酵素などの活性低下(組織:正常の20%以下, 培養細胞:正常の30%以下)を認める。または, ミトコンドリアDNAの転写, 翻訳の低下を認める。
(ウ)DNA検査
 特異度が高い。病因的と報告されている, 又は証明されたミトコンドリアDNAの質的異常である欠失・重複, 点変異(MITOMAP:http://www.mitomap.org/などを参照)や量的異常である欠乏状態(正常の20%以下)があること, 又は, ミトコンドリア関連分子をコードする核遺伝子の病的変異を認める。
(エ)心症状の参考所見
 心電図で, 房室ブロック, 脚ブロック, WPW症候群, 心房細動, ST-T異常, 心房・心室負荷, 左室側高電位, 異常Q波, 左軸偏位を認める。心エコー図で, 拡張型心筋症様を呈する場合は左心室径拡大と駆出率低下を認める。肥大型心筋症様を呈する場合は左室肥大を認める。拘束型心筋症様を呈する場合は, 心房の拡大と心室拡張障害を認める。心筋シンチグラムで, MIBI早期像での取り込み低下と洗い出しの亢進, BMIPPの取り込み亢進を認める。
(オ)腎症状の参考所見
 蛋白尿(試験紙法で1+(30mg/dL)以上), 血尿(尿沈査で赤血球5/HPF以上), 汎アミノ酸尿(正常基準値以上)を認める。血中尿素窒素の上昇(20mg/dL以上), クレアチニン値の上昇(2mg/dL以上)を認める。
(カ)血液症状の参考所見
 強度の貧血 (Hb 6g/dL以下)もしくは汎血球減少症(Hb 10g/dL, 白血球 4000/µL以下, 血小板 10万/µL以下)を認める。
(キ)肝症状の参考所見
 中等度以上の肝機能障害(AST, ALTが200U/L以上), 血中アンモニア値上昇 (正常基準値以上)を認める。
(ク)糖尿病の参考所見
 血糖値(空腹時≧126mg/dL, OGTT2時間≧200mg/dL, 随時≧200mg/dLのいずれか)とHbA1c (国際標準値)≧6.5% (hA1c(JDS値)≧6.1%)
(ケ)乳酸値
 安静臥床時の血中乳酸値もしくは髄液乳酸値が繰り返して, 2mmol/L(18mg/dL)以上であること, 又はMRスペクトロスコピーで病変部に明らかな乳酸ピークがある。
3.ミトコンドリア病の診断のカテゴリー
  Definite (1)①~⑤のうち1項目あり, かつ(2)①~⑥のうち, 2項目を満たすもの(全体で計3項目必要)
  Probable (1)①~⑤のうち1項目あり, かつ(2)①~⑥のうち, 1項目を満たすもの(計2項目必要)

(責任遺伝子) *602694 NADH dehydrogenase (ubiquinone) Fe-S protein 4 (NDUFS4) <5q11.2>
(1) Mitochondrial complex I deficiency, nuclear type 1 (252010)
.0001 Mitochondrial complex I deficiency, nuclear type 1 [AQDQ, 5-BP DUP] (rs1445075330) (gnomAD:rs1445075330) (RCV000007290...) (van den Heuvel et al. 1998)
.0002 Mitochondrial complex I deficiency, nuclear type 1 [NDUFS4, TRP96TER] (rs121908985) (gnomAD:rs121908985) (RCV000007291...) (Budde et al. 2000)
.0003 Mitochondrial complex I deficiency, nuclear type 1 [NDUFS4, ARG106TER] (rs104893898) (gnomAD:rs104893898) (RCV000735424...) (Budde et al. 2000)
.0004 Mitochondrial complex I deficiency, nuclear type 1 [NDUFS4, TRP15TER] (rs104893899) (RCV000007293) (Petruzzella et al. 2001)
.0005 Mitochondrial complex I deficiency, nuclear type 1 [NDUFS4, IVS1AS, G-A, -1] (rs376281345) (gnomAD:rs376281345) (RCV000007294...) (Benit et al. 2003)
.0006 Mitochondrial complex I deficiency, nuclear type 1 [NDUFS4, 1-BP DEL, 462A] (rs587776949) (RCV000197700...) (Anderson et al. 2008; Assereto et al. 2014)
.0007 Mitochondrial complex I deficiency, nuclear type 1 [NDUFS4, IVS3DS, G-A, +5] (Gonzalez-Quintana et al. 2020)

*NDUFS4 (NADH:Ubiquinone Oxidoreductase Subunit S4)
 Genome size 122,729 bp, 175 aa, 20108 Da
 Exons: 5, Coding exons: 5, Transcript length: 669 bps, Translation length: 175 residues
 ●ミトコンドリア膜呼吸鎖 NADH dehydrogenase (複合体 I またはNADH:ubiquinone oxidoreductase) の核にコードされたaccessory subunitをコードする
 複合体 I は NADH から電子を除去し,electron acceptor ubiquinone に電子を伝達する
●関係するd pathways: GABAergic synapse and Respiratory electron transport, ATP synthesis by chemiosmotic coupling, and heat production by uncoupling proteins

(ノート)
●(#) は, ミトコンドリア複合体 I 欠乏症核型1 (MC1DN1) が, 5q11 の NDUFS4 遺伝子 (602694) の変異が原因だという証拠のため

●単独複合体 I 欠乏症は, 酸化的リン酸化異常の最も多い酵素障害である (McFarland et al., 2004; Kirby et al., 2004)
 幅広い臨床疾患を生じる
 →致死性新生児疾患~成人発症神経変性疾患まで
 表現型には, 進行性白質脳症を伴う大頭, 非進行性脳症, 肥大型心筋症, ミオパチー, 肝疾患, Leigh 症候群 (256000), Leber 遺伝性視神経ニューロパチー (535000) および, Parkinson 病のいくつかの型 (→ 556500) が含まれる(Loeffen et al., 2000; Pitkanen et al., 1996; Robinson, 1998).

複合体 I 欠乏症の遺伝的異質性
●ミトコンドリア複合体 I 欠乏症は, 高度の遺伝的異質性を示し, 核にコードされた遺伝子またはミトコンドリアにコードされた遺伝子の変異により生じうる
 明らかな遺伝子型-表現型相関はなく, 仮に不可能ではないとしても臨床的または生化学的所見により基盤の推測は困難である (Loeffen et al., 2000; Triepels et al., 2001).

●核にコードされた遺伝子の変異が原因の複合体 I 欠乏症
 MC1DN1 → NDUFS4 遺伝子 (602694)
 MC1DN2 (618222)→ NDUFS8 遺伝子 (602141)
 MC1DN3 (618224)→NDUFS7 遺伝子 (601825)
 MC1DN4 (618225)→ NDUFV1 遺伝子 (161015)
 MC1DN5 (618226)→ NDUFS1 遺伝子 (157655)
 MC1DN6 (618228)→ NDUFS2 遺伝子 (602985)
 MC1DN7 (618229)→ NDUFV2 遺伝子 (600532)
 MC1DN8 (618230)→ NDUFS3 遺伝子 (603846)
 MC1DN9 (618232)→ NDUFS6 遺伝子 (603848)
 MC1DN10 (618233)→ NDUFAF2 遺伝子 (609653)
 MC1DN11 (618234)→ NDUFAF1 遺伝子 (606934)
 MC1DN12 (301020)→ NDUFA1 遺伝子 (300078)
 MC1DN13 (618235)→ NDUFA2 遺伝子 (602137)
 MC1DN14 (618236)→ NDUFA11 遺伝子 (612638)
 MC1DN15 (618237)→ NDUFAF4 遺伝子 (611776)
 MC1DN16 (618238)→ NDUFAF5 遺伝子 (612360)
 MC1DN17 (618239)→ NDUFAF6 遺伝子 (612392)
 MC1DN18 (618240)→ NDUFAF3 遺伝子 (612911)
 MC1DN19 (618241)→ FOXRED1 遺伝子 (613622)
 MC1DN20 (611126)→ ACAD9 遺伝子 (611103)
 MC1DN21 (618242)→ NUBPL 遺伝子 (613621)
 MC1DN22 (618243)→ NDUFA10 遺伝子 (603835)
 MC1DN23 (618244)→ NDUFA12 遺伝子 (614530)
 MC1DN24 (618245)→ NDUFB9 遺伝子 (601445)
 MC1DN25 (618246)→ NDUFB3 遺伝子 (603839)
 MC1DN26 (618247)→ NDUFA9 遺伝子 (603834)
 MC1DN27 (618248)→ MTFMT 遺伝子 (611766)
 MC1DN28 (618249)→ NDUFA13 遺伝子 (609435)
 MC1DN29 (618250)→ TMEM126B 遺伝子 (615533)
 MC1DN30 (301021)→ NDUFB11 遺伝子 (300403)
 MC1DN31 (618251)→ TIMMDC1 遺伝子 (615534)
 MC1DN32 (618252)→ NDUFB8 遺伝子 (602140)
 MC1DN33 (618253)→ NDUFA6 遺伝子 (602138)
 MC1DN34 (618776)→ NDUFAF8 遺伝子 (618461)
 MC1DN35 (619003)→ NDUFB10 遺伝子 (603843)
and MC1DN36 (619170), caused by mutation in the NDUFC2 gene (603845).
 の変異が原因である

●ミトコンドリア遺伝を伴う複合体 I 欠乏症は, 複合体 I の6つのミトコンドリアにコードされる構成成分の変異と連関している
 → MTND1 (516000), MTND2 (516001), MTND3 (516002), MTND4 (516003), MTND5 (516005), MTND6 (516006)
 これらの患者の大多数は, Leber hereditary optic neuropathy (LHON; 535000) または Leigh 症候群の表現型をもつ
 複合体 I 欠乏症の特徴は, MTTS2 (590085) を含む他のミトコンドリア遺伝子の変異によっても生じうる

臨床症状
●Van den Heuvel et al. (1998) は, 致死性多系統複合体 I 欠乏症とNDUFS4 遺伝子のホモ接合変異をもつ1例を報告した (602694.0001).
 彼は, 正常な筋形態と体液の乳酸濃度増加なしの著明な非特異的致死性進行性経過をもっていた
 彼は8か月時, 重度の嘔吐, 成長障害, 筋緊張低下で受診した
 13か月時, 彼は重度の精神運動発達遅滞, けいれん, 徐呼吸, チアノーゼ, 筋緊張低下および腱反射低下を示した
 大脳 MRI は, 全般性脳萎縮と対称性基底核異常を示した
 彼は, 16か月時心肺不全で死亡した

●Budde et al. (2000) は, 複合体 I 欠乏症と複合体IIIの活性減少をもつ, 両親に血縁がある関連のない2例を報告した
 女性患者は生後1週内に, 筋緊張低下, アイコンタクトなし, 嗜眠および成長障害を示した
 3か月時, 小頭と, 乳酸/ピルビン酸比の増加を伴う乳酸血症が存在した
 CT と MRI は, 両側性基底核低信号を示した
 小児は3か月時死亡した
 出生時に気付かれた尿道下裂以外に, 男性患者は7週までは正常にみえた
 →7週時, 筋緊張低下と視覚と聴覚の注意欠陥が観察された
 3か月時, 彼は血中の乳酸上昇が発見された
 頭蓋 MRI は, Leigh 症候群 (256000).でみられるものに類似する高信号シグナルを示した
 心エコーは, 高収縮性を伴う左室の同心性肥大を示した
 彼は心循環不全で死亡した

Petruzzella et al. (2001) reported a girl who after birth showed failure to thrive, psychomotor delay, hypotonia, seizures, lactic acidosis, cardiomyopathy, and basal ganglia lesions on ultrasound. She died at 7 months of age from respiratory failure.

●Benit et al. (2003) は, 複合体 I 欠乏症核1型と Leigh 症候群をもつ血縁家系での姉妹2例を証明した

Gonzalez-Quintana et al. (2020) reported a 7-year-old girl with a history of neonatal macrocephaly who presented with hypotonia, psychomotor delay, and exotropia at 6 months of age. Brain MRI at age 9 months showed abnormal signal in the vestibular nuclei and medial lemniscus, frontal bilateral polymicrogyria, and external hydrocephaly. At age 11 months, she had myoclonus of her arms. Laboratory studies showed lactic acidosis in serum and cerebral spinal fluid. Skeletal muscle biopsy showed type II fiber atrophy and an isolated defect of mitochondrial complex I activity.

知られてる核またはミトコンドリア変異をもつ患者での神経X線の特徴
●Lebre et al. (2011) は, 核 (10例) またはミトコンドリア (20例) 変異のいずれかによる複合体 I 欠乏症をもつ30例の神経X線学的特徴の後方視的レビューを行った
 全例が脳幹の MRI 異常をもっていた
 →T2強調画像での高輝度と T1強調画像での低輝度
 脳幹病変は, 30例中27例で少なくとも1つの線条体奇形 (被殻または尾状核) を伴っていた
 10例は視床異常をもち, その全てが線条体病変をもっていた
 尾状核病変は核変異をもつ患者 (10%)に比べ mtDNA 変異をもつ患者 (50%) でより多かった
 主に灰白質を障害する卒中様病変が mtDNA 変異をもつ患者の40%でみられたが, 核変異をもつ患者にはなかった
 深部葉性白質を含むびまん性テント上白質脳症は核変異をもつ患者の50%以上にみあれたが, mtDNA 変異をもつ患者にはなかった
 小脳高輝度は変異ゲノムに関わらず患者の45%でみられたが.小脳萎縮は mtDNA 変異をもつ患者のみにみられた
 調べた全10例は magnetic resonance spectroscopy で乳酸の増加をもっていた

変異不明の患者
●Morgan-Hughes et al. (1979) は, 単独複合体 I 欠乏症の最初の報告をした
 姉妹2例が, 脱力, 著明な運動不耐症および変動性乳酸性酸血症が特徴のミトコンドリアミオパチーをもっていた
 脱力の増加は, 習慣性でない運動, 飢餓またはアルコールにより誘発された
 運動時, 血中乳酸とピルビン酸は急激かつ顕著に上昇した
 ミトコンドリア呼吸率は全ての NAD連鎖基質が大きく減少していたが, クエン酸およびTMPD+アスコルビン酸連結基質は正常であった
 ミトコンドリア cytochrome 成分は正常であった
 Morgan-Hughes et al. (1979) は, 障害は NADH-CoQ reductase 複合体のレベルだと結論した

●Land et al. (1981) は, 脱力, 運動不耐症, 筋力低下および運動誘発性乳酸性アシドーシスをもつ若い男性を報告した
 生化学的研究は, NADH-cytochrome b reductase の欠乏を示した
 障害は, NADH dehydrogenase と CoQ-cytochrome b complex の間に位置するようであった
 Land et al. (1981) は, nonheme iron-sulfur center の狂いを主張した

●Moreadith et al. (1984) は, 呼吸九発と低血糖を生後1日に生じた複合体 I 欠乏症をもつ男乳児1例を報告した
 6週時, 彼は全身性筋緊張低下と心エコーで同心性2心室性心肥大を示した
 乳酸性酸血症は進行性で, 小児は16週令で死亡した
 骨格筋生検は, 内および外膜が渦状に配列した巨大ミトコンドリアを示した
 4つの器官からのミトコンドリアの生化学的検査は, ピルビン酸, リンゴ酸+グルタミン酸, クエン酸およびその他の NAD連結性呼吸基質の酸化能の中等度~重度の減少を示した
 コハク酸の酸化は正常であった
 更なる研究は, 障害を内膜ミトコンドリア NADH-ubiquinone oxidoreductase に局在させた
 Electron paramagnetic resonance spectroscopy (電子常磁体共鳴分光分析) は, 複合体 I の鉄-硫黄クラスターのほぼ完全喪失を示した
 最も顕著な欠乏は, 骨格筋で, 腎ミトコンドリアが最も少なかった
 家族に類似障害の記録はなく, 両親に血縁はなかった
 両親はその後正常な男児をもったので, Moreadith et al. (1984) は, ミトコンドリア遺伝を除外し, 常染色体劣性または新生優性変異のいずれかを示唆した

● Moreadith et al. (1987) は同じ患者の後の研究論文で, 複合体 I への抗血清が対照の NADH-ferricyanide reductase と免疫沈降を示すが, 患者のミトコンドリアとは示さないことを発見した
 複合体 I ポリペプチドの免疫沈降と SDS-PAGE は, 複合体 I を構成する25のポリペプチドのほとんどが患者ミトコンドリアに存在することを証明した
 複合体 I の鉄タンパク分画の主ポリペプチドに対するサブユニット選択的抗血清は, 75- と 13-kD ポリペプチドの選択的欠損を示し, 複合体 I の鉄タンパク分画を構成する少なくとも2つのポリペプチドの欠乏を示唆した
 Moreadith et al. (1987) は, 遺伝的障害が, ポリペプチドの転写または翻訳, これらのポリペプチドのミトコンドリアへの輸送, または複合体 I の集合部位を含むと仮説をたてた

●Hoppel et al. (1987) は, 致死性先天性乳酸性アシドーシス, 乳酸/ピルビン酸高値, 筋緊張低下および心筋症をもつ男乳児1例でミトコンドリア異常を調べた
 彼の姉1例が類似疾患で死んでいた
 安静時酸素消費は対象の150%であった
 病理学的所見は, 骨格筋ミトコンドリア数の増加 (多くは増殖した同心性クリステを伴う), 心筋症, 内臓の脂肪浸潤, 海綿状脳症を示した
 肝と骨格筋生検のミトコンドリアは, NADH 連結基質を対照の20~50%の率で酸化したが, 筋ミトコンドリアによるコハク酸酸化は増加していた
 ミトコンドリアl NADH dehydrogenase 活性 (複合体 I) は対照の 0 ~ 10% であったが, 関連した酵素の他の電子伝達複合体活性は正常であった
 Hoppel et al. (1987) は, ミトコンドリア NADH dehydrogenase 成分の家族性欠乏は, rotenone-sensitive site より近位であると示唆した

●Wijburg et al. (1989) は, 重症先天性乳酸性アシドーシスをもつよく調べられた小児2例と, 同じ障害に一致する臨床歴をもつ他の4例をもつ, 健康ないとこのモロッコ人の両親をもつ家系を報告した
 治療は最初は人工呼吸と腹膜潅流で, 次に大量のmenadioneにより行われ, 著明な回復となった
 両親の血縁にも関わらず, Barth et al. (1989) は, この家系の障害はミトコンドリアゲノムを含むと示唆した
 彼らは骨格筋のミトコンドリアにコードされた MTND3 タンパクの欠失の可能性を検出した

●Slipetz et al. (1991) は, 異なる表現型をもつ複合体 I 欠乏症をもつ関連のない2例を調べた
 1例は, 筋緊張低下, けいれんおよび肝腫をもち, 生後13日で乳酸性アシドーシスで死亡した
 複合体 I サブユニットの生化学的解析は, 核ゲノムによりコードされると予測された 20 kD タンパクの欠損を示した
 複合体 I 活性は対照の6%であった
 もう1例の小児は, 著明な成長および発達遅滞をもち, 8歳で始まった神経学的機能異常とけいれんを示した
 その他の特徴には, 眼瞼下垂, 感音難聴, 筋緊張低下, 協調運動障害および反射低下があった
 軽度の粗な顔貌もみられた
 免疫沈降やウェスタンブロット解析では複合体 I の異常は検出されなかったが, 複合体 I 活性は対象の15%であった

●Bentlage et al. (1995) は, 複合体 I 欠乏症の患者たちで特異的複合体 I タンパクサブユニットの欠乏を示した

●Dionisi-Vici et al. (1997) は, 致死性進行性大頭症と肥大型心筋症をもつ乳児同胞2例を報告した
 発症は広範な脳腫大で生後1か月末であった
 光顕は, 広範な小血管増殖とグリオーシスを示した
 複合体 I 欠乏症は, 培養線維芽細胞, 骨格筋および心筋で検出された

●Procaccio et al. (1999) は, 単独複合体 I 欠乏症を伴う致死性乳児乳酸性アシドーシスをもつ関連のない2例を報告した
 ミトコンドリアのない細胞の核による transnuclear complementation 後の患者ミトコンドリアの複合体 I サブユニットの再検査と複合体 I 活性の回復のため, 著者らは両患者の障害は核DNA起源であるした
 患者1は, 24- および 51-kDサブユニット量の減少と他の調べたサブユニットの全ての正常量を示した
 患者2は, 調べた全てのサブユニットの量の重度の減少を示した
 患者1は, 生後24時間内に身振り不全を伴う全身性筋緊張低下を生じた
 2日までに, 彼は有痛性刺激への反応不全を伴い非常にフロッピーで, 換気補助を要した
 肝腫大があり, 胸写は軽度の心拡大を示した
 頭蓋エコーは, 脳浮腫を示し, 重度の乳酸性アシドーシスが検出された
 患者は深い昏睡となり, 11日で死亡した
 患者2は, 生後2週間内に頻回に嘔吐し, 5週で筋緊張低下, 脱力, 嗜眠を伴う神経学的状態の悪化を示した
 生後1か月で, 頭囲は急速に 33 cm から 40 cm に増加した
 CTは, 脳量の増加と高度の大脳浮腫を伴う非常に低輝度の脳を示した
 高乳酸性酸血症を伴う顕著な代謝性アシドーシスが証明された
 集中治療にもかかわらず, 神経学的状態は急速に悪化で, 脳死が6週で生じた
 剖検は急性壊死性脳症を示したが, 肥大型心筋症はなかった

● von Kleist-Retzow et al. (1998)は, 呼吸鎖障害をもつ157例の研究で, 複合体 I 欠乏症を33%, 複合体 I と IV 欠乏症を28%に発見した
 これらのシリーズでの主要な臨床症状は, 体幹性筋緊張低下 (36%), 出生前 (20%) および生後 (31%) 成長遅滞, 心筋症 (24%), 脳症 (20%), および肝不全 (20%)であった
 呼吸鎖欠乏症のタイプと臨床症状には相関はなかったが, 複合体 I と複合体 I + IV 欠乏症は, 各々心筋症 (p<0.01) と肝不全 (p<0.05) で有意に多かった
 性比は, 複合体 I 欠乏症で男性に偏っていた
 両親の血縁の効率が複合体 IV (20%) と複合体 I+IV (28%) 欠乏症でみられた.

●Loeffen et al. (2000) は, 27例の臨床および生化学的特徴を後方視的に調べた
 全例が乳児期と若年小児期に受診し, 培養皮膚線維芽細胞で単独酵素複合体 I 欠乏症をもっていた
 共通する病的 mtDNA 変異や主要な再構成はなかった
 臨床表現型は Leigh 症候群が7例, Leigh-様症候群が6例, 致死性乳児乳酸性アシドーシスが3例, 乳酸性アシドーシスを伴い新生児心筋症が3例, 進行性白質ジストロフィーを伴う大頭症が2例, 非特異的脳筋症の残りのグループが6例 (進行性バリアント4例と安定バリアントが2例) であった

分子遺伝学
●Smeitink and van den Heuvel (1999) は, 単独複合体 I 欠乏症をもつ患者で証明されている核遺伝子変異をレビューした
 → NDUFS4 遺伝子の 5 bp 重複 (602694.0001)を含む

● Budde et al. (2000) は, 複合体 I 欠乏症核型1と複合体 III 活性減少をもつ関連のない2例で, NDUFS4 遺伝子のホモ接合変異を証明した (602694.0002 と 602694.0003)
 変異は両家系で疾患と分離していた

● Petruzzella et al. (2001)は, Leigh 症候群となる複合体 I 欠乏症の患者1例で, NDUFS4 cDNA のホモ接合ナンセンス変異を証明した (W15X; 602694.0004)
 両親は変異がヘテロ接合であった

● Benit et al. (2003)は, 複合体 I 欠乏症と Leigh 症候群をもつ血縁家系の姉妹2例で, NDUFS4 座のホモ接合スプライス部位変異を証明した (602694.0005).

● Anderson et al. (2008) は, Leigh 症候群の症状をもつ複合体 I 欠乏症核型1をもつ両親が Ashkenazi ユダヤ人の同胞3例で NDUFS4 遺伝子のホモ接合 1 bp 欠失 (462delA; 602694.0006) を証明した (462delA; 602694.0006)
 変異は連鎖解析と続く候補遺伝子シークェンシングにより証明された
 各々の罹患していない両親と, 罹患していない同胞1例は変異がヘテロ接合であった
 Ashkenazi ユダヤ人対照 5,000人での変異の保因者頻度は 1 /1,000 で, この集団での創始者効果に一致した
 この結果から, Anderson et al. (2008) は両親が罹患していない子供を産むためこの家系での出生前診断を使用した

●Assereto et al. (2014)は, Ashkenazi ユダヤ人ではないミトコンドリア複合体 I 欠乏症をもつ同胞2例でNDUFS4遺伝子の462delA変異のホモ接合を証明した

遺伝子型/表現型相関
●核にコードされる遺伝子 NDUFS1, NDUFS4, NDUFS7, NDUFS8, および NDUFV1 の変異は, 神経学的疾患を生じる
 →ほとんどは, Leigh 症候群または Leigh-様症候群
 NDUFS2 と NDUFV2の変異は, 肥大型心筋症と脳筋症と連関している
 ミトコンドリアにコードされる遺伝子の範囲は, 非常に幅広い臨床症状を伴う
 →器官特異的~多臓器疾患まで (Benit et al., 2004).

●Swalwell et al. (2011) は, 単独複合体 I 欠乏症101家系の患児109例の大きなコーホートで臨床および遺伝的所見をレビューした
 病的 mtDNA 変異が発端者の29%で発見された
 → MTND サブユニット遺伝子が21%, mtDNA tRNA 遺伝子が8%
 核遺伝子異常が細胞融合解析, mtDNA sequencingまたは変異解析で発端者の38%に推測された
 最も多い臨床提示は, mtDNA または核遺伝子異常のいずれかをもつ患者で Leigh または Leigh 様疾患であった
 発症中央年齢は核遺伝子異常 (3か月)に比し mtDNA 患者で遅かった (12か月)が, 相当なオーバーラップがあった
 この報告は, 病的 mtDNA 変異が小児の複合体 I 欠乏症の意義のある原因であることを確認した

動物モデル
● Scheffler 研究者 (DeFrancesco et al., 1976; Ditta et al., 1976; Breen and Scheffler, 1979; Soderberg et al., 1979) は, 培養でモルモット細胞のいくつかの呼吸欠乏性変異体を記載した
 全てが高率の解糖を維持するため培養液に十分なブドウ糖を供給する必要があった
 ブドウ糖をガラクトースに置換すると, 変異体は死亡した
 この特性は, 約36種の変異体を7つの相補群に分類するのに使用された (Soderberg et al., 1979)
●Whitfield et al. (1981) と Haiti et al. (1981) は, また, モルモット細胞の電子伝達系障害をもつ gal-minus mutants も証明した
 特に, 相補群のいくつかは電子伝達系の複合体 I の障害をもつようにみえた
●Day and Scheffler (1982) は, これらの相補群の一部はハムスターとマウスでX連鎖性であると報告した
 遺伝子座 (-i) は'res' とシンボル化された
 少なくとも1つの相補群が常染色体であることが発見された

歴史
●Land et al. (1981) は, いくつかのミトコンドリアミオパチーでの障害について特に良い全般的レビューを提供した
 (1) 基質利用の障害
 → carnitine 欠乏症, carnitine palmitoyltransferase 欠乏症, およびpyruvate dehydrogenase complex のいろんな構成成分の障害
 (2) リン酸化するためのミトコンドリア呼吸のカップリング障害
 → Luft 病と mitochondrial ATPase 欠乏症
 (3) ミトコンドリア呼吸鎖の構成成分欠乏
 →s nonheme iron protein, cytochrome oxidase, cytochrome b 欠乏症または NADH-CoQ reductase

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2010/11/03
2010/11/18
2010/11/21
2010/12/16
2011/07/14
2011/07/21
2011/08/06
2011/08/31
2011/10/14
2011/10/20
2011/10/26
2011/12/15
2012/02/05
2012/03/09
2012/04/24
2012/06/19
2012/08/11
2012/12/05
2013/02/27
2013/05/03
2013/05/24
2013/06/08
2013/09/25
2016/07/29 変異追加
2016/12/07 ノート追加
2017/02/19 RCV
2017/06/26 新規変異
2017/11/10 ノート/文献追加
2017/11/10 責任遺伝子追加
2017/12/15 RCV
2018/02/14 RCV 症状改訂
2018/03/16 ノート改訂
2018/03/17 変異追加
2018/07/06 ノート改訂 責任遺伝子追加
2018/10/13 ノート改訂 責任遺伝子追加
2018/11/1 文献追加
2018/12/05 RCV
2018/12/09 RCV, SNP
2018/12/15 病名改訂し独立 ノート/文献全面改定 変異改訂
2019/03/23 歴史追加
2020/09/05 異質性追加
2020/10/01 SNP改訂
2021/02/10 ノート改訂
2021/02/13 ノート/文献追加
2021/02/13 変異追加