疾患詳細

疾患詳細



手の脂肪肉芽腫 (Copyright Center for Birth Defects Information Services, Inc.)

#228000
Farber lipogranulomatosis
(Farber disease)
(Ceramidase deficiency)
(Acid ceramidase deficiency)
(AC deficiency)
(N-laurylsphingosine deacylase deficiency)
(N-acylsphingosine amidohydrase; ASAH, included)
(Acid ceramidase; AC, included)

Farber 脂肪肉芽腫症
(Farber 病)
(セラミダーゼ欠損症)
(酸性セラミダーゼ欠損症)
(AC 欠損症)
(N-ローリルスフィンゴシンデアシラーゼ欠損症)
指定難病19 ライソゾーム病
小児慢性特定疾病 代93 ファーバー(Farber)

責任遺伝子:613468 N-acylsphingosine aminohydrolase 1 (ASAH1) <8p22>
遺伝形式:常染色体劣性

(症状)
(GARD)
 <80%-99%>
 Arthralgia (関節痛) [HP:0002829] [15115]
 Failure to thrive (成長障害) [HP:0001508] [01411]
 Hepatomegaly (肝腫) [HP:0002240] [01813]
 Joint stiffness (関節硬直) [HP:0001387] [15100]
 Joint swelling (関節腫脹) [HP:0001386] [15103]
 Laryngomalacia (喉頭軟化症) [HP:0001601] [1011]
 Periarticular subcutaneous nodules (関節周囲皮下結節) [HP:0007470] [18027]
 Short stature (低身長) [HP:0004322] [0130]
 
 <30%-79%>
 Decreased muscle mass (筋量減少) [HP:0003199] [0270]
 Hoarse cry (かすれた泣声) [HP:0001615] [02370]
 Kyphosis (後弯) [HP:0002808] [161500]
 Nystagmus (眼振) [HP:0000639] [06609]
 Osteoporosis (骨粗鬆症) [HP:0000939] [160015]
 Recurrent respiratory infections (反復性呼吸器感染) [HP:0002205] [014230]
 Respiratory insufficiency (呼吸不全) [HP:0002093] [01606]
 
 <5%-29%>
 Abnormality of vision (視力異常) [HP:0000504] [060]
 Cherry red spot of the macula (チェリーレッド斑) [HP:0010729] [0650]
 Corneal opacity (角膜混濁) [HP:0007957] [0620]
 Global developmental delay (全般的発達遅滞) [HP:0001263] [0120]
 Intellectual disability (知的障害) [HP:0001249] [0120]
 Pulmonary fibrosis (肺線維症) [HP:0002206] [1111]
 Splenomegaly (脾腫) [HP:0001744] [01817]
 
 
 Arthritis (関節炎) [HP:0001369] [15115]
 Autosomal recessive inheritance (常染色体劣性遺伝) [HP:0000007]
 Irritability (被刺激性) [HP:0000737] [01418]
 Lipogranulomatosis (脂肪肉腫症) [HP0040139] [2372]
 Motor delay (運動遅滞) [HP:0001270] [0120]
 Progressive (進行性) [HP:0003676]
 Variable expressivity (多様な表現度) [HP:0003828]

(UR-DBMS)
【一般】被刺激性
 運動遅滞/精神遅滞 (一部の患者で)
 成長障害 (食餌摂取障害, 嚥下困難)
 2歳までに死亡
 肺への脂肪浸潤による呼吸障害
 肝腫
 脾腫
 腎症
【神経】嗄声 (喉頭病変による)
【喉頭】喉頭結節
【眼】チェリーレッド斑 (一部の患者で)
【四肢】疼痛性関節腫大 (指 / 手関節 / 足)
 関節炎
【皮膚】脂肪肉芽腫 (*乳児期の手関節および足関節上の明らかな盛り上がった皮下結節)
 関節周囲の皮下結節
 結節は脂質をもつマクロファージを示す
【検査】非硫化酸性ムコ多糖症のニューロンとグリア蓄積
 尿中セラミド増加
 組織球浸潤 (肝, 脾, 肺, 胸腺)
 N-laurylsphingosine deacylase 欠損
 Ceramidase 欠損 (白血球, 線維芽細胞)
【その他】乳児期または生後数年で発症
 進行性疾患
 早期死亡 (一部の患者で)
 多様な重症度

【一般】成長遅滞
 肺炎
 栄養障害
 間歇性発熱
 (けいれん, 虚弱, 認知症)
【神経】末梢神経障害 (1/3)
 深部腱反射低下ないし欠損
 (運動失調)
【眼】角膜混濁
 中心小窩の瀰漫性灰色がかった混濁
【四肢】*進行性関節変形
 関節拘縮
【X線】骨融解性病変
 骨粗鬆症
 骨融解
【皮膚】分厚い皮膚
【検査】結節脂質内でのセラミド増加 (<30%)
 Farber 小体 (電顕)
 (高カリウム血症)

(軽症バリアント[4 例]) 10ないし20歳代で発症
 中等度の関節症, 皮下結節, 嗄声, 中等度の精神運動発達遅滞, 肺および肝疾患なし
(中間型) 4 - 10 歳までに発症
 重度の関節症, 目立つ結節, けいれん, 中枢神経障害, 肺疾患なし
(その他の型 [3小児例]) 生後2-3週で発症
 肝脾腫 / 骨融解性病変 → 悪性組織球症と診断される
 (軽度の皮下結節)
(その他の型) 進行性精神運動発達遅滞, チェリーレッド斑, 軽度の皮下結節 / 嗄声

(要約) ASAH1-関連疾患 (2018.3.29)
●SAH1-関連疾患のスペクトラムは, Farber 病 (FD)から進行性ミオクロニーてんかんを伴う脊髄筋萎縮症 (SMA-PME)まである
●古典的 FD は, 有痛性進行性第関節変形, 関節や機械的圧点部位の触知できる皮下結節, 喉頭および喉頭蓋の肉芽腫による粗い声の生後1-2週での発症が特徴である
 寿命は通常2年内である
 他のより少ない型のFDでは, 発症, 重症度および原発症状に変化がある
●SMA-PME は, 早期小児期発症の進行性下肢運動ニューロン病が特徴である
 典型的には3-7歳で, 近位筋力低下がみられ, 進行性ミオクロニーおよびアトニー発作, 震え/振戦および感音難聴が続く
 ミオクロニーてんかんは典型的には筋力低下発症後に後期小児期に始まり, 上肢引き上げ, 動作ミオクローヌス, ミオクロニー重積および眼瞼裂斜上ミオクローヌスを含みうる
 その他の所見には, 全身性振戦と認知低下がある
 発症から呼吸器合併症による死亡までの時間は通常5-15年である
●診断:示唆する臨床所見と ASAH1 の2アレル病的バリアント+/-末梢血または培養線維芽細胞での (acid ceramidase)活性低下の証明による
●治療
 FD: 胃瘻設置, 口腔/気道の過誤腫切除, 痙攣の治療
  有意な神経症状がない場合は造血幹細胞移植がオプションとなる
 SMA-PME: 難聴, 側弯, けいれん, 振戦に対する標準治療
  筋力低下: 補装具, 車椅子など
●遺伝: 常染色体劣性遺伝
●SAH1-関連疾患
 Farber 病
 脊髄筋萎縮症/+進行性ミオクロニーてんかん (SMA-PME)
 脊髄筋萎縮症/-てんかん
 進行性成人発症短指症, 骨融解による
●示唆する所見
1) Farber 病 (FD) →新生児または乳児で歌がル
 圧のかかる部位および関節の皮下結節
 腫大した有痛性の関節と関節拘縮による運動範囲の進行性制限
 粗い声/泣声
2) 脊髄筋萎縮症/+進行性ミオクロニーてんかん (SMA-PME)
 正常な運動および知的発達
 小児期発症の進行性近位筋筋力低下 (平均5歳で)
 ミオクロニーおよびアトニー発作が特徴のてんかん, 難治性
 その他の発作: アブサン, まれに全身性強直間代性発作
 (EMG): 慢性脱髄所見
 (EEG): 全般性多棘徐波
 (筋生検) 神経原性プロセスの証拠, ミトコンドリア病理所見なし
 SMN1の2アレル病的バリアントなし (SMAに最も多い原因なし)
●Acid ceramidase 活性
 完全喪失→ Farber 病
 中等度喪失 (6%-32%) → SMA-PME
 2疾患間でオーバーラップしうる
●分子遺伝学:ASAH1 遺伝子解析
方法   Farber 病   SMA-PME
配列解析 35/36     12/13
欠失/重複 1/36     1/13
●Farber 病 (FD)
1) 1型 FD (古典的 FD)
 三徴あり(1) 有痛性進行性変形 (肘, 手首, 手, 膝, 足関節); (2) 触知できる皮下結節 (関節, 圧のかかる部位に多い); (3) 喉頭および喉頭蓋の過誤腫によるかすれた泣声→生後1-2週でみられる
 下肢運動ニューロン病として筋緊張低下と筋萎縮がみられる
 EMG→慢性脱髄所見
 少数: 乳児スパスム, チェリーレッド斑
 浸潤性肺疾患のため呼吸不全となり2歳以前に死亡する
2) 2 型 FD ("中間型 FD")
 約8か月での発症
 古典的三徴はみられるが1型より神経症状が軽い
 けいれんは時間とともに比較的多くなる
 寿命は小児期中期まで
3) 3型 FD (軽症 FD)
 関節腫大, 疼痛, 関節拘縮が1歳以後にみられる
 多くの小児が若年性本態性関節炎 (JIA)と誤診される
 約半数の患児で神経症状がみられる
 2型と3型FDの患児の約30%が著明な認知障害 (IQ<80)を示す
 寿命は10歳代まで
4) 4型 FD (新生児内臓型 FD)
 新生児重度肝脾腫あり, 古典的三徴なし
 生後1日〜1-2週で死亡
5) 5型 FD (神経型 FD)
 6-12か月までは正常な発達→難治性けいれん, 進行性対不全麻痺, 発語後退が出現
 皮下結節はあるかもしれないが通常軽度
 肺浸潤と肝脾腫は生じない
※皮下結節の生検: 特徴的曲線状過誤腫性浸潤または "Farber 小体" (マクロファージ, 組織球, 泡沫細胞, 線維芽細胞で)
●脊髄筋萎縮症/+進行性ミオクロニーてんかん (SMA-PME)
 進行性近位筋筋力低下の早期小児期発症→進行性ミオクロニーおよびアトニー発作, 震え/振戦, 感音難聴の出現が特徴
○下肢運動ニューロン病→最初の症状 (16/17で)で, 典型的には3-7歳 (中央5歳)で筋力低下で明らかとなる
 最初は近位で, 不器用/頻回の転倒からあひる歩行に進行し歩行に補助具を要する
 呼吸筋も障害する→誤嚥性肺炎が多い
○てんかん
 けいれんは後期小児期に筋力低下発症後に始まることが多い
 ミオクロニー発作→上肢挙上で始まる
 動作ミオクローヌス, ミオクローヌス重積, 眼瞼ミオクローヌスの報告あり
 ミオクローヌス頻度の進行性増加→運動機能の有意な低下
 アトニー発作 (頭+/-体幹) →早期にみられる
 アブサン発作→50%以上でみられる
 発作頻度: 最初は2-3回/日→2-3回/分に増加→難治性となる
 脳MRI: 正常
○全身性振戦: 50%でみられる
○感音難聴: 軽度〜最重度の高音域難聴 (25%)
 出生時にはなし
○筋骨格:側弯 (5/16), 軽度〜重度
○認知:発達は正常である (知的障害は1例のみ)
○寿命: 短くなる, 発症から死亡までは5〜15年
●ASAH1-関連脊髄筋萎縮症, てんかんのない
 1家系同胞2例で報告, けいれんまたはミオクローヌスの既往歴なし
 成人になって軽度の近位筋筋力低下がみられ歩行困難へ
 側弯と姿勢性振戦あ
●進行性成人発症短指症, 骨融解による
 1家系3例で指趾の進行性短縮あり
●遺伝子型-表現型相関はない
 SMA-PMEではナンセンス変異とスプライス部位変異が多い
 FDではミスセンス変異が多い
 両表現型に共通するバリアントはエクソン6のスキッピングのみ
●命名
 Farber 病の別名: "acid ceramidase 欠乏症" "Farber lipogranulomatosis", "disseminated lipogranulomatosis"
 SMA-PME: "myoclonus with progressive distal muscular atrophy"
●頻度: 極端に希
●鑑別診断
 Spinal muscular atrophy (SMA)
 rogressive myoclonus epilepsy, Lafora type
 Unverricht-Lundborg 病
 MERRF (myoclonic epilepsy with ragged red fibers)
●ASAH1: 8p22; Acid ceramidase
○病的バリアント:46の病的バリアントの報告あり
(例) c.125C>T p.Thr42Met
 c.703G>C p.Gly235Arg
 c.917+4A>G 1
 欠失は2つ→A 55-kb deletion including all of ASAH1 全体を含む 55 kb 欠失
    エクソン3-5を含む 9,471-bp 欠失
○正常遺伝子産物: 395 aa
 Acid ceramidase はacidic lysosome 内での ceramide のsphingosineと脂肪酸への分解を触媒する
 中性 pHでは逆の反応でceramideを合成する
 ceramide は, シグナル伝達と細胞認知で役割をもつ重要な sphingolipid である
○異常遺伝子産物
 acid ceramidase活性の欠損/減少は大多数の組織のリソソームへの ceramide の蓄積を生じる
 ceramide の蓄積により予測される下流の結果
 → monocyte chemotactic protein-1 (MCP1)レベルの増加
  MCP1 は前炎症性サイトカインで単球に感染組織や傷害組織を攻撃させる

<小児慢性特定疾病 代93 ファーバー(Farber)>
概要・定義
ファーバー病は, 酸性セラミダーゼ(N-アシルスフィンゴシンアミドヒドロラーゼ)の活性低下により, 基質であるセラミド(ceramide)が様々な組織に蓄積し, 障害を引き起こす常染色体劣性遺伝疾患である。本疾患における関節の有痛性腫脹, 肉芽腫形成, 拘縮は免疫学的機序による炎症性変化に基づくと考えられている。
疫学
世界で90例の報告があり, 本邦では10例程度と言われている。
病因
ファーバー病は, ライソゾーム酵素の酸性セラミダーゼ(N-acylsphingosine amidohydrolase1: ASAH1)の遺伝子変異により酵素活性が低下し, セラミド等が蓄積し, 泡沫化したマクロファージが集簇し, 脂肪性の肉芽腫を形成する。そして, 疼痛を伴う進行性の関節腫脹変形, 関節周囲や圧迫部位の皮下結節, 進行性の嗄声を三主徴候を呈する。
症状
発症時期と重症度により, 下記の6つ(プロサポシン欠損型を含めて7つ)に分類される。
古典型(1型), 中間型(2型), 軽症型(3型), 新生児型(4型), 進行性神経障害型(5型), サンドホッフ病合併型(6型), プロサポシン欠損型(7型)に分けられ, 古典型が最も多く, 生後数ヶ月以内に発症し, 疼痛を伴う進行性の関節腫脹変形, 関節周囲や圧迫部位の皮下結節, 進行性の嗄声の三主徴候を認め, 数年以内に死亡する。新生児型は, 最重症型で著明な肝脾腫や進行性の中枢神経障害を認め, 乳児期早期に死亡する。プロサポシン欠損型は, ゴーシェ病に類似しており, 肝脾腫と中枢神経系病変を認める。
診断
診断方法
臨床症状, 臨床検査に基づいて行う。
1. 臨床症状
2. ファーバー病は, 重症度や障害部位により, 6つの臨床病型に分類されるが, その他にプロサポシン(prosaposin)欠損症も類似した病態を呈する。
・古典型(1型):生後2週間~4か月以内に発症することが多く, 皮下結節, 関節炎(おもに四肢関節の腫脹と疼痛), 喉頭障害(嗄声)の3主症状を認める。次第に関節の腫脹は消失するが, 関節や腱にびまん性の結節を認める。関節可動域制限や拘縮を認め, 体動が困難となる。喉頭蓋や咽頭の腫脹により嚥下困難や呼吸障害を認め, 失声となることもある。また, 眼底所見としてチェリーレッドスポットを認めたり, 進行性の神経症状や肺障害を生じることも多い。肺炎を繰り返し, 2歳までに肺障害が進行し死亡することが多い。
・中間型(2型), 軽症型(3型):皮下結節, 関節痛, 関節拘縮, 嗄声, 呼吸障害を呈するが, 神経症状はないかあっても軽微である。
・新生児型(4型):新生児期から重度の神経症状や肝脾腫, 重症例では胎児水腫を認める。
・進行性神経障害型(5型):1−2歳半頃から発症し, 進行性の中枢神経障害, 四肢麻痺, 失声, ミオクローヌス, けいれん, 精神運動発達遅滞を認める。
・サンドホフ病合併型(6型):サンドホフ病(Sandhoff disease)に1型ファーバー病を合併したもの
・プロサポシン欠損型(7型):サポシン前駆体, プロサポシンの責任遺伝子であるPSAP遺伝子の異常によりプロサポシン欠損をきたし, サポシンA, B, C, Dすべての完全欠損となり, 酸性β-グルコシダーゼ, ガラクトセレブロシダーゼ, セラミダーゼのすべての酵素活性低下を生じ, 臨床症状はゴーシェ病に類似している
3. 臨床検査
a. 皮下結節や障害組織の光学顕微鏡所見では, 肉芽腫形成, PAS(periodic acid-schiff)染色陽性の脂質封入体や泡沫細胞を認める。電子顕微鏡所見では, 曲線の管状構造物のFarber bodyを認める。
b. 皮下結節, 肝臓の生検, 尿を用いた薄層クロマトグラフィー(thin-layer chromatography; TLC), 高速液体クロマトグラフィー(high-performance liqid chromatography; HPLC), ガスクロマトグラフィー(gas chromatography)質量分析で過剰なセラミドを認める。正常組織では認めないα-ヒドロキシ脂肪酸を認める。
c. 白血球, 血漿, 培養皮膚線維芽細胞, 羊水細胞などでの酸性セラミダーゼ活性低下を認める。
d. 遺伝子解析で, N-acylsphingosine amidohydrolase 1(ASAH1)遺伝子またはPASP遺伝子に変異を認める。

疑診:上記臨床症状に, aおよびbを認めれば強く疑う。
確定診断:c, あるいはdを認める。
当該事業における対象基準
全A  疾患名に該当する場合
治療
主には対症療法であるが, 造血幹細胞移植により, 肉芽腫の減少, 関節変形の減少や疼痛の軽減, 関節可動域の改善, 嗄声の軽快を認めたが, 神経症状は改善しなかったという報告もあり, 適応に関しては慎重に議論されなければならない。
予後
古典型は乳児期に死亡し, 新生児型では乳児期早期に死亡する。軽症型では成人例も存在する。
成人期以降
特になし

(機序)
(1) 酸性セラミダーゼ機能障害は, リソソーム内のセラミドの蓄積は, 細胞障害と炎症反応は, 結節形成/関節症
(2) セラミド = 皮膚の水バリアー, ガングリオシドおよびスフィンゴグリコリピッドの核
(頻度) 38 例 (高い血縁率)
(予後) 典型的には2歳以前に死亡
(責任遺伝子) *613468 N-acylsphingosine aminohydrolase 1 (ASAH1) <8p22>
(1) Farber lipogranulomatosis (228000)
.0001 Farber lipogranulomatosis [ASAH1, THR222LYS [dbSNP:rs137853593] (Koch et al. 1996)
.0002 Farber lipogranulomatosis [ASAH1, GLU138VAL [dbSNP:rs137853594] (Li et al. 1999)
.0003 Farber lipogranulomatosis [ASAH1, TYR36CYS [dbSNP:rs137853595] (Bar et al. 2001)
.0004 Farber lipogranulomatosis [ASAH1, ASN320ASP [dbSNP:rs137853596] (Bar et al. 2001)
.0005 Farber lipogranulomatosis [ASAH1, LEU182VAL [dbSNP:rs137853597] (Devi et al. 2006)
.0008 Farber lipogranulomatosis [ASAH1, IVS11DS, A-G, +4 [dbSNP:rs397509415] (Alves et al. 2013)
.0009 Farber lipogranulomatosis [ASAH1, 9.4-KB DEL] (Alves et al. 2013)
(2) Spinal muscular atrophy with progressive myoclonic epilepsy (159950)
.0006 Spinal muscular atrophy with progressive myoclonic epilepsy [ASAH1, THR42MET [dbSNP:rs145873635] (Zhou et al. 2012)
.0007 Spinal muscular atrophy with progressive myoclonic epilepsy [ASAH1, DEL] (Zhou et al. 2012)
.0010 Spinal muscular atrophy with progressive myoclonic epilepsy [ASAH1, GLY284TER [dbSNP:rs794729663] (Dyment et al. 2014)
.0011 Spinal muscular atrophy with progressive myoclonic epilepsy [ASAH1, 456A-C [dbSNP:rs200455852] (Dyment et al. 2014)

*ASAH1: N-acylsphingosine amidohydrolase (acid ceramidase) 1; (411 aa)
・sphingolipid ceramide を sphingosine と遊離脂肪酸へ加水分解する
・ceramidases (EC 3.5.1.23) は, ceramides の加水分解によるsphingosineの産生を触媒する
 →その後リン酸化されsphingosine-1-phosphate (S1P)を産生する
・ceramide とその下流産物である sphingosine と S1P は, 生物活性のある脂質で, 細胞成長停止, 分化およびアポトーシスを含むいろんな細胞プロセスを仲介する
・ceramidesの発現は, プロアポトーシス性サイトカイン, 抗癌剤, 紫外線およびイオン化放射線, レチノール酸などのビタミン, 血清喪失などのストレス刺激に反応して増加する

(ノート)
A number sign (#) is used with this entry because of evidence that Farber lipogranulomatosis (FRBRL) is caused by homozygous or compound heterozygous mutation in the gene encoding acid ceramidase (ASAH1; 613468) on chromosome 8p22.

●Farber 脂肪肉芽腫症は, 常染色体劣性リソソーム蓄積症で, 早期発症の皮下組織結節, 有痛性で進行性の関節変形および喉頭病変による嗄声が特徴である
 発症年齢, 症状の重症度と患部器官に基づき, acid ceramidase 欠乏による6つの臨床サブタイプが区別されている
 最重症型はサブタイプ4である
 →まれな新生児型で1歳以前に死亡する (Alves et al., 2013).

臨床症状
●少数の報告例では, 症状は, 生後最初の2-3週で出現し, 被刺激性, 粗い泣き声, 結節性紅斑性の手首および他の部位の腫脹 (特に外傷の生じた部位)からなる
 重度の運動および精神遅滞が明らかである
 2歳までに死亡する
 組織像は肉芽腫である
 中枢神経では, ニューロンとグリア細胞が腫脹し, 非硫黄化酸性ムコ多糖が特徴の物質が蓄積する (Abul-Haj ら, 1962)
 両親の血縁は証明されていないが, 1例では両親は祖先に同じ姓をもち, ボストン小児病院でみられた3家系中2家系はポルトガル人であった
 同胞例2例をもつ家系は父がアゾレス諸島出身で, 母はマデイラ諸島出身であった
 他の家系の両親はアゾレス諸島で生まれた (Crocker ら, 1967)

●Clausen and Rampini (1970) は, 基礎となる障害は糖脂質分解の酵素障害であると提唱した
●Sugita ら(1972) は, 基本的障害は acid ceramidase (EC 3.5.1.23)欠損であると示唆した
 腎と小脳でこの酵素活性が証明できなかった
 同じ酵素は正常ではセラミドの生合成と分解と触媒する

●Antonarakis ら(1984) は, 古典的重症症状をもつ12週女児 (皮下関節周囲結節, 粗い声, 成長障害, 呼吸不全)と悪性組織球症を思わせる早く受診した10週男児の同胞例を記載した
 彼らは各々6か月と12週で死亡した
 女児は, 比較的異常な Farber 病の特徴である肝脾腫をもっていた
 27の報告例で, 7例が肝腫, 1例が脾腫をもっていた
 したがって, Farber 病は悪性組織球症と思われる乳児で考慮すべきである
 25%の再発危険率と出生前診断が可能なので, そのような症例では ceramidase の測定が重要である

●Pellissier ら(1986) は, 血縁のあるチュニジア人の両親をもつ重症同胞2例を調べた
 中枢神経および末梢神経系の障害が証明された
 1例で黄斑の cherry red spots が観察された

●Moser ら(1989) は, Farber 脂肪肉芽腫症に5つの型を証明した
(1) 古典的 1 型:皮下結節, 関節炎および喉頭障害の三徴によりほぼ一瞥で診断できる
 1つがない場合は, JRA, 多中心性網状組織球症または juvenile hyaline fibromatosis (228600) が鑑別されるが, いずれの疾患でもceramidase レベルは正常である
(2) 2 型および3型:より長く生存する
 肝と肺は侵されないようだ
 これらの多くの患者での正常知能と剖検所見は脳障害は限定されているまたは完全にないことを示唆する
 Moser ら(1989) は3型の数例の患者は10歳代の終わり近くで比較的安定した状態にあったと延べた
(3) 4 型:新生児期に肝脾腫と重度の衰弱をもち, 6か月以前に死亡する
 高度の肝, 脾, 肺, 胸腺, リンパ球に組織球浸潤がみられる

●Antonarakis ら(1984) の患者はこの群に入る
  彼らの症例1は剖検後でもみられず, Farber 病の診断はその後の同胞に皮下結節がみられたので考慮された

●(4) 5型:Zarbin ら(1985) と Eviatar ら(1986)が記載した
 1〜2.5歳で始まる精神運動発達の退行が特徴である
 Zarbin ら(1985) の家系は韓国人とカナダ人の結婚による姉妹2例であった
  患者女児は遺伝的複合かもしれない
   Pellissier ら(1986)の症例のように黄斑の cherry-red spots がみられた
●Eviatar ら(1986) は, 黒人小児1例を記載した

●Qualman ら(1987) は, 1家系を記載した
 3か月男児は肝脾腫のみをもち, 悪性組織球症を思わせる劇的な臨床経過であった
 2番目の5.5か月女児は典型的 Farber 病で, 粗い声と有痛性の関節腫大があった
  内臓障害は両者で明らかで, 尿中セラミド高値を伴う新しく記載された腎症を含んでいた
  肝と脾は高度の組織球浸潤とセラミド高値がみられた
  リンパ球も組織球浸潤があったが, 増殖性組織球性疾患の特徴である副鼻腔浸潤はなかった

●Nowaczyk ら(1996) は, まれな IV 型 Farber 病の16か月女児を記載した
 肝脾腫, 黄斑 cherry-red spot, および皮下結節があった
 患者は肝機能障害が生じ, 黄疸, 腹水, 蓄積細胞の骨髄への浸潤による骨髄癆性貧血があった
 皮膚線維芽細胞の直接アッセーが ceramidase 欠損の診断を確定した

●Kattner et al. (1997) は, 非免疫性胎児水腫としてみられた Farber 脂肪肉芽腫症の重症1例を報告した
 26週の出生前エコーは, 肝脾腫を伴う胎児水腫を示した
 乳児は生後3日で死亡した
 剖検は, 浮腫とからだ全体に播種した蓄積マクロファージと線維症からなる多数の白色結節を示した
 脾組織は, ceramide 蓄積を示した
 ceramidase 活性は患者組織で最重度減少していた
 患者に血縁はなく, 前の妊娠は早期自然流産となっていた

診断
●Ben-Yoseph ら(1989) は, Farber 病の診断と保因者検出での血漿検体の有用性を調べるため基質として N-laurylsphingosine deacylase を使用した
 基質は他の基質よりはるかに早く acid ceramidase により分割されるので非常に感度の良いアッセーとなった

遺伝
●Farber 脂肪肉芽腫症は常染色体劣性遺伝を示す (Alves et al., 2013).

マッピング
●Li ら(1999) は, ISH と FISH によりASAH 遺伝子を 8p22-p21.3 にマップした

分子遺伝学
●Koch ら(1996) は, Farber 病の患者で AC 遺伝子の homoallelic T222K 点変異 (228000.0001) を証明した

●Bar ら(2001) は, Farber 病を生じる ASAH 遺伝子の6つの新しい変異を証明した
 3つの点変異は1アミノ酸置換を生じ, 1つのイントロンのスプライス部位変異がはエクソンスキッピングを生じ, 2つの点変異はまれなまたは完全なエクソンスキッピングを生じた
 最後の2つの変異は近位のヌクレオチドで生じ, 同じエクソンの異常なスプライシングとなった
 4例の線維芽細胞での代謝ラベル研究はこれらの患者ではむしろ完全な acid ceramidase 前駆体タンパクが合成されるが, 変異のある成熟 acid ceramidase の急速なタンパク分解がリソソーム内で生じた

● Alves et al. (2013) は, 生後3日で死亡した胎児水腫となった重症 Farber 病の患者1例 (Kattner et al., 1997)で, ASAH1 遺伝子の2つのヌル変異の複合ヘテロ接合を照明した (613468.0008 と 613468.0009)
 重症表現型は完全長タンパクの完全喪失と相関していた

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2010/07/03
2012/07/20
2013/07/18
2013/08/2 2例の臨床およびX線所見をレビューした
2015/02/06 変異追加
2015/07/13 SNP
2016/02/06 SNP
2016/07/13 ノート改訂
2018/05/09 要約改訂
2020/02/12 ノート改訂