疾患詳細

疾患詳細





207600
Takayasu arteritis
(Aortic arch syndrome )
(Young female arteritis)
(Pulseless disease)

高安動脈炎
(大動脈弓症候群)
(若年女性動脈炎)
(脈なし病)
指定難病40 高安動脈炎
<小児慢性特定疾病 膠7 高安動脈炎(大動脈炎症候群)>

遺伝子座:不明
遺伝形式:常染色体劣性

(症状)
(GARD)
<80%-99%>
 Fatigue (疲労) [HP:0012378] [01410]
 Fever (発熱) [HP:0001945] [01413]
 Hyperhidrosis (多汗) [HP:0000975] [18016]
 Hypertensive crisis (高血圧クリーゼ) [HP:0100735] [01415]
 Subcutaneous nodule (皮下結節] [HP:0001482] [18027]
 Vasculitis (血管炎)  [HP:0002633] [1125]
 Weight loss (体重喪失) [HP:0001824] [01411]
<30%-79%>
 Abnormal aortic valve morphology (大動脈弁形態異常) [HP:0001646] [1120]
 Abnormal pattern of respiration (呼吸パターン異常) [HP:0002793] [016]
 Anemia (貧血 ) [HP:0001903] [2201]
 Anorexia (食思不振) [HP:0002039] [01401]
 Arthritis (関節炎) [HP:0001369] [15115]
 Ascending tubular aorta aneurysm (上行大動脈瘤) [HP:0004970] [1120]
 Chest pain (胸痛) [HP:0100749] [01420]
 Gangrene (壊疽) [HP:0100758] [18035]
 Hypertrophic cardiomyopathy (肥大型心筋症) [HP:0001639] [0273]
 Inflammatory abnormality of the eye (眼の炎症) [HP:0100533] [-]
 Migraine (偏頭痛) [HP:0002076] [014141]
 Muscle weakness (筋力低下) [HP:0001324] [0270]
 Myalgia (筋痛) [HP:0003326] [01420]
 Myocardial infarction (心筋梗塞) [HP:0001658] [1124]
 Pulmonary arterial hypertension (肺高血圧) [HP:0002092] [01609]
 Seizures (けいれん) [HP:0001250] [01405]
 Skin ulcer (皮膚潰瘍) [HP:0200042] [18035]
<5%-29%>
 Abnormal endocardium morphology (心内膜異常) [HP:0004306] [1120]
 Amaurosis fugax (一過性黒内障) [HP:0100576] [06522]
 Arthralgia (関節痛) [HP:0002829] [15115]
 Cerebral ischemia (大脳虚血) [HP:0002637] [1126]
 Gastrointestinal infarctions (胃腸梗塞) [HP:0005244] [-]
 Hemoptysis (喀血) [HP:0002105] [2207]
 Neurological speech impairment (神経学的発語障害) [HP:0002167] [023]
 Reduced consciousness/confusion (意識低下/昏迷) [HP:0004372] [0151]
 Retinopathy (網膜症) [HP:0000488] [0652]

 Arteritis (動脈炎)  [HP:0012089] [01423]
 Autosomal recessive inheritance (常染色体劣性遺伝) [HP:0000007]

(UR-DBMS)
【血管】主大動脈枝の動脈炎
 脈なし病 (上肢)
 高安動脈炎

<小児慢性特定疾病 膠7 高安動脈炎(大動脈炎症候群)>
診断方法
A. 診断基準
1. Definite
以下を全て満たすもの
1. 画像検査(DSA(digital subtraction angiography), CT, MRA)において, 大動脈とその主要分枝及び肺動脈に閉塞性あるいは拡張性病変を認める。
2. 以下の所見のうち少なくとも 1つを認める。
a. 脈拍欠損あるいは間欠跛行
b. 上下肢血圧左右差あるいは上下肢血圧差
c. 頸部, 背部, 腹部での血管雑音
d. 高血圧
e. 炎症反応(赤沈亢進, CRP上昇, 白血球増多, γグロブリン増加)
3. 上記の鑑別疾患が否定されている。
2. Probable
以下を全て満たすもの
1. 造影CT , 造影MRI , 超音波検査, FDG-PETなどにおいて, 大動脈とその主要分枝及び肺動脈に血管壁炎症所見を認める。
2. 炎症反応(赤沈亢進, CRP 上昇, 白血球増多, γグロブリン増加)を認める。
3. 下記の鑑別疾患が否定されている。
B. 鑑別疾患
1 動脈硬化症, 2 炎症性腹部大動脈瘤, 3 血管型ベーチェット病, 4 梅毒性中膜炎, 5 先天性血管異常, 6 細菌性動脈瘤
C. 画像検査による特徴
1. 大動脈石灰化像:胸部単純エックス線写真, CT
2. 胸部大動脈壁肥厚:胸部単純エックス線写真, CT, MRA
3. 動脈閉塞, 狭窄病変:DSA, CT, MRA
4. 弓部大動脈分枝:
限局性狭窄からびまん性狭窄まで
下行大動脈:
びまん性狭窄(異型大動脈縮窄)
腹部大動脈:
びまん性狭窄(異型大動脈縮窄)しばしば下行大動脈, 上腹部大動脈狭窄は連続
腹部大動脈分枝:
起始部狭窄(腎動脈を含む)
5. 拡張病変:DSA, 超音波検査, CT, MRA
6. 上行大動脈:
びまん性拡張, 大動脈弁閉鎖不全の合併
腕頭動脈:
びまん性拡張から限局拡張まで
下行大動脈:
粗大な凹凸を示すびまん性拡張, 拡張の中に狭窄を伴う念珠状拡張から限局性拡張まで
7. 肺動脈病変:肺シンチ, DSA, CT, MRA
8. 冠動脈病変:冠動脈造影
9. 多発病変:DSA
10. 血管壁炎症所見:造影CT , 造影MRI , 超音波検査, FDG-PET
D. 診断上参考となる検査所見
1. 炎症反応:赤沈亢進, CRP上昇, 白血球増多, γグロブリン増加
2. 貧血
3. 免疫異常:免疫グロブリン増加(IgG, IgA), 補体増加(C3, C4)
4. 凝固線溶系:凝固亢進(線溶異常), 血小板活性化亢進
5. HLA:HLA-B52, B39
E. 症状
1. 頭部虚血症状:めまい, 頭痛, 失神発作, 片麻痺など
2. 上肢虚血症状:脈拍欠損, 上肢易疲労感, 指のしびれ感, 冷感, 上肢痛
3. 心症状:息切れ, 動悸, 胸部圧迫感, 狭心症状, 不整脈
4. 呼吸器症状:呼吸困難, 血痰
5. 高血圧による症状
6. 眼症状:一過性又は持続性の視力障害, 失明
7. 下肢症状:間欠跛行, 脱力, 下肢易疲労感
8. 疼痛:頸部痛, 背部痛, 腰痛
9. 全身症状:発熱, 全身倦怠感, 易疲労感, リンパ節腫脹(頸部)
10. 皮膚症状:結節性紅斑
11. 消化器合併症:非特異的炎症性腸炎
F. 診断上重要な身体所見
1. 上肢の脈拍ならびに血圧異常(橈骨動脈の脈拍減弱, 消失, 著明な血圧左右差)
2. 下肢の脈拍ならびに血圧異常(大動脈の拍動亢進あるいは減弱, 血圧低下, 上下肢血圧差)
3. 頸部, 背部, 腹部での血管雑音
4. 心雑音(大動脈弁逆流が主)
5. 腎性高血圧
6. 眼底変化(低血圧眼底, 高血圧眼底, 視力低下)
7. 顔面萎縮, 鼻中隔穿孔(特に重症例)
8. 炎症所見:微熱, 頸部痛, 全身倦怠感
認定対象
A. 診断基準 のうち 1. Definite もしくは 2. Probable のいずれかを満たす場合。
当該事業における対象基準
治療で非ステロイド系抗炎症薬, ステロイド薬, 免疫調整薬, 免疫抑制薬, 抗凝固療法, γグロブリン製剤, 強心利尿薬, 理学作業療法, 生物学的製剤又は血漿交換療法のうち一つ以上を用いている場合

概念・定義
 大動脈とその主要分枝及び肺動脈, 冠動脈に狭窄, 閉塞又は拡張病変をきたす原因不明の非特異性炎症性疾患である。血管炎による全身症状, 狭窄ないし閉塞をきたした動脈の血流障害による各種臓器障害, あるいは拡張による動脈瘤などが臨床病態の中心をなす。病変の部位や広がりによって症状が異なるため, 臨床症状が多彩である。本邦では大動脈炎症候群と呼ばれることが多いが, 欧米では高安動脈炎と呼ばれている。上肢血管の脈拍欠損を伴うことから, 脈なし病と呼ばれたこともある。発症頻度には人種差や地域差があるが, 本邦では若い女性に好発する。厚生労働省の特定疾患治療研究事業の対象疾患の一つに指定されている。
病因
 病理学的には動脈外膜側から内膜側に進展する血管炎である。発症機序はいまだ不明であるが, ウイルス感染などを契機として, 自己免疫的な機序で血管炎が進展することが発症につながると考えられている。何らかの抗原刺激に反応した, T細胞を主体とした炎症性細胞が動脈壁内に浸潤していることが, 血管障害の主体となっていると推測されている。
疫学
 高安動脈炎で特定疾患医療受給者証を所持している患者は全国で5829例(2011年度)である。全体からみた数は少ないものの, 10歳未満で発症する症例も認められる。小児期発症の血管炎としては川崎病やIgA血管炎の頻度が高いが, その2疾患以外の血管炎では高安動脈炎が最多で, 2008年度の全国調査では罹患数が31例(小児人口10万人対0.18人)であった。症状が多彩で非特異的な所見が多い疾患であることから未診断例が多く, 実際の症例数はさらに多いと思われる。男女比は1:9で女性に発症することが多い疾患である。女性では15歳から35歳に発症年齢のピークがあるが, 男性では発症年齢のピークが認められず, この疾患の発症に女性ホルモンが関与していることが示唆される。高安動脈炎の患者の約98%は家族歴を有さないが, 一卵性双生児例の報告はあり, 何らかの遺伝素因も発症に関わっていると考えられる。炎症制御に関わる遺伝素因の関与が示唆されており, 本邦においてはHLA-B52, HLA-B39, HLA-B遺伝子の近傍にあるMICA-1.2遺伝子などとの関連が報告されている。特にHLA-B52陽性患者ではB52陰性例と比較して有意に強い血管炎を生じる傾向があり, 大動脈弁閉鎖不全症を合併する割合も高いことが明らかになっている。
臨床症状
 高安動脈炎は不明熱の鑑別疾患として重要な疾患である。初期症状として認められるのは, 発熱, 全身倦怠感, 易疲労感, 頸部リンパ節腫脹などの非特異的な症状であり, 疼痛(頸部痛, 背部痛, 腰痛)を伴うこともある。その後, 血管病変による症状が見られるようになるが, 大血管に病変を生じる疾患であるため, 狭窄症状が出現するまでに時間がかかるという特徴がある。血管病変は多発する傾向があるが, 無症状で経過する症例から発症早期に多彩な症状を呈する症例まで, その程度は様々である。本邦の症例では大動脈弓周囲に血管病変を生じることが多く, 最も高頻度に認められる症状は上肢の乏血症状であり(特に左鎖骨下動脈に血管病変を認める頻度が高い), 次に多いのが頭部乏血症状である。本邦では腹部大動脈や総腸骨動脈の病変はあまり認められず, 下肢乏血症状を生じることは少ない。頭部乏血症状(めまい, 頭痛, 失神発作, 片麻痺など)は腕頭動脈, 総頸動脈, 椎骨動脈などの狭窄や頸動脈洞反射亢進により起こり, 眼症状(一過性又は持続性の視力障害, 失明)を伴うこともある。また, 上肢の乏血症状(脈拍欠損, 上肢易疲労感, 指のしびれ感, 冷感, 上肢痛), 下肢の乏血症状(間欠跛行, 脱力, 下肢易疲労感), 肺動脈狭窄や肺梗塞に伴う呼吸器症状(呼吸困難, 血痰), 異型大動脈縮窄や大動脈壁の硬化, 腎動脈狭窄などによる高血圧, 冠動脈狭窄による心症状(息切れ, 動悸, 胸部圧迫感, 狭心症状, 不整脈), 結節性紅斑や非特異的な炎症性腸炎などを認めることもある。拡張病変による症状としては大動脈瘤や大動脈解離, 大動脈弁輪拡大に続発する大動脈弁閉鎖不全に基づく心不全が主である。大動脈弁閉鎖不全症は本症の約30%に認められ, 予後に影響を与える。
診断
上記
治療
 発症早期から適切な内科的治療を行うことで, 重大な臓器障害を予防し, より良い状態での疾患コントロールを目指すことが可能となる。活動性の血管炎の存在を示唆する症状およびCRP上昇, 血沈亢進などの炎症反応を認めた場合は, 炎症の抑制を目的として副腎皮質ステロイドの投与を開始する。一般的に高安動脈炎はステロイドへの反応性が良好である。小児の初期治療量としてはプレドニゾロン1-2mg/kg/dayが一般的だが, ステロイドの長期大量投与による成長障害などの副作用を最小限に抑えるため, なるべく早くステロイドの減量を進める目的で, 最初にメチルプレドニゾロンパルス療法を行ってから, 後療法としてプレドニゾロン1mg/kg/day未満で開始することもある。ただし, 高血圧合併例ではパルス療法は避けるべきである。ステロイドの投与量は年齢・体重・症状・重症度などにより適宜増減する。HLA-B52陽性患者ではステロイド抵抗性を示すことが多く, より多くのステロイド初期投与量が必要というデータがあるため注意が必要である。症状や検査所見が改善していればステロイドを漸減し, 減量により症状の増悪を示す場合には適宜増量しながら, 必要量を継続投与する。維持量として少量のステロイドの継続が必要であることが多いが, 中にはステロイドを中止できる症例もある。
 ステロイド抵抗性の難治例や, 副作用のためにステロイドの継続が困難な症例では免疫抑制薬の併用を検討する。小児の血管炎症候群に保険適応があるのは, シクロホスファミドとアザチオプリンである。シクロホスファミドは1日1回500mg/㎡を4週間隔で投与し, その後はアザチオプリンや他の免疫抑制剤などを併用しながら, 病勢のコントロールを図る。その他の免疫抑制薬としてはメトトレキサート, シクロスポリン, タクロリムス, ミコフェノール酸モフェチルなどが選択肢となるが, いずれも保険適応外使用となるため, 治療の必要性をよく検討し, 患者家族に十分なインフォームド・コンセントを行った上で使用する。治療中は有害事象の有無についても慎重に観察する。
 TNF阻害剤, 抗IL-6受容体抗体, 抗CD20モノクローナル抗体, 末梢血幹細胞移植などの有効性を示す報告もあるが, いずれも効果や安全性についての情報がまだ不十分であり, 現時点では一般的な治療法にはなっていない。
 その他の内科的治療としては, 血栓を予防して重大な合併症である臓器梗塞を起こさないようにするために少量アスピリン投与を行う。また, 抗血小板剤として, 塩酸チクロピジン, シロスタゾールなど, 抗凝固剤としてワーファリンを投与する。いずれの薬剤も出血性病変が存在する場合は禁忌であり, 出血性梗塞の有無には注意が必要である。
 外科的治療は全体の約20%で施行されており, 特定の血管病変に起因することが明らかな症状で, 内科的治療が困難と考えられる症例が適応となる。大動脈弁閉鎖不全症は, 発症初期は無症状だが, 数年の経過でうっ血性心不全を呈することがあるため, 注意が必要である。大動脈弁閉鎖不全に対する大動脈弁置換術(Bentall手術を含む)は一般の大動脈弁閉鎖不全症の適応に準じて行う。冠動脈狭窄では狭心痛を伴うか狭窄の程度が有意であれば血行再建術を行う。肺動脈狭窄が生じて肺高血圧を呈すれば手術適応となり, 心膜を用いたパッチ拡大術か人工血管置換を行う。大動脈弓部分枝病変では脳虚血が症候性である場合(頻回の失神発作, めまい)や虚血による視力障害が出現した場合, 眼底血圧が低下している場合, または無症候性であっても3分枝全てに有意狭窄が認められる場合などに, 上行大動脈からのバイパス術を施行する。異型大動脈縮窄症は高血圧合併により自然予後が不良であるため, 血行再建術の適応である。腎動脈病変では狭窄が著明で内科的治療が無効な場合には血管拡張療法やバイパス術を検討する。腸間膜病変は症候性(腹痛, 体重減少など)のものは血行再建術の適応となる。胸部大動脈瘤, 大動脈基部拡大, 上行弓部大動脈瘤, 胸腹部大動脈瘤, 末梢動脈の拡張病変に対しても人工血管置換術を行う。いずれも緊急の場合を除いて, 充分に炎症が消失してから外科手術を行うことが望ましい。
予後
 近年, 画像検査の進歩により本症の早期診断が可能となった。そのため, 発症初期から適切な治療を行うことができるようになり, 重大な臓器障害を生じることなく疾患をコントロールすることが可能となったため, 疾患予後が大きく改善している。しかし, 腎動脈狭窄や大動脈縮窄症による高血圧, 大動脈弁閉鎖不全によるうっ血性心不全, 虚血性心疾患, 心筋梗塞, 解離性動脈瘤, 動脈瘤破裂などを認める重症例では治療に難渋し, ときに死に至ることもある。また, 高安動脈炎は再燃しやすい疾患であり, 約7割に再燃が認められるため, 定期的なフォローが必要である。妊娠出産に関しては, 炎症所見が落ち着いていて, 重篤な臓器障害を認めない症例では基本的に問題がない。しかし, 一部の症例では出産を契機として炎症所見が再燃する場合もあるので注意する。

<指定難病40 高安動脈炎>
概要
 高安動脈炎は大動脈及びその主要分枝や肺動脈, 冠動脈に閉塞性, あるいは拡張性病変をきたす原因不明の非特異的大型血管炎である。これまで高安動脈炎(大動脈炎症候群)とされていたが国際分類に沿って, 高安動脈炎と統一した。また, 橈骨動脈脈拍の消失がよく見られるため, 脈無し病 (pulsless) とも呼ばれている。
 病名は 1908 年に本疾患を発見した金沢大学眼科の高安右人博士の名に由来する。

原因
 高安動脈炎の発症の機序は依然として不明であるが, 何らかのウイルスなどの感染が本症の引き金になっている可能性がある。それに引き続いて自己免疫的な機序により血管炎が進展すると考えられている。 また, 特定の HLA との関連や疾患感受性遺伝子(SNP)も見つかっており, 発症には体質的な因子が関係し ていると考えられる。

症状
 男女比は 1:8 と女性に多い。発症のピークは女性では 20 歳前後であるが, 中高年での発症例も稀でない。本邦では大動脈弓ならびにその分枝血管に障害を引き起こすことが多い。狭窄ないし閉塞をきたした動脈 の支配臓器に特有の虚血障害, あるいは逆に拡張病変による動脈瘤がその臨床病態の中心をなす。病変 の生じた血管の支配領域により臨床症状が異なるため多彩な臨床症状を呈する。本症には特異的な診断 マーカーがなく, 病初期より微熱または高熱や全身倦怠感が数週間や数ヶ月続く。そのため不明熱の鑑別 のなかで本症が診断されることが多い。臨床症状のうち, 最も高頻度に認められるのは, 上肢乏血症状で ある。とくに左上肢の脈なし, 冷感, 血圧低値を認めることが多い。上肢の挙上(洗髪, 洗濯物干し)に困難を訴える女性が多い。頸部痛, 上方視での脳虚血症状は本症に特有である。下顎痛から抜歯を受けることがある。本症の一部に認められる大動脈弁閉鎖不全症は本症の予後に大きな影響を与える。また, 頻度 は少ないが, 冠動脈に狭窄病変を生じることがあり, 狭心症さらには急性心筋梗塞を生じる場合もある。頸 動脈病変による脳梗塞も生じうる。 本邦の高安動脈炎は大動脈弓周囲に血管病変を生じることが多い。下肢血管病変は腹部大動脈や総腸骨動脈などの狭窄により生じる。腹部血管病変も稀ならず認められ, 間欠性跛行などの下肢乏血症状を呈する。また 10%程度に炎症性腸疾患を合併する。下血や腹痛を主訴とする。

治療法
 内科療法は炎症の抑制を目的として副腎皮質ステロイドが使われる。症状や検査所見の安定が続けば 漸減を開始する。漸減中に, 約 7 割が再燃するとの報告がある。この場合は, 免疫抑制薬の併用を検討す る。また血栓性合併症を生じるため, 抗血小板剤, 抗凝固剤が併用される。
 外科療法は特定の血管病変に 起因する虚血症状が明らかで, 内科的治療が困難と考えられる症例に適用される。炎症が沈静化してから の手術が望ましい。外科的治療の対象になる症例は全体の約 20%である。
 脳乏血症状に対する頸動脈再建が行われる。急性期におけるステントを用いる血管内治療は高率に再狭窄を発症し成績は不良である。
 また, 大動脈縮窄症, 腎血管性高血圧に対する血行再建術は, 1)薬剤により有効な降圧が得られなくなっ た場合, 2)降圧療法によって腎機能低下が生じる場合, 3)うっ血性心不全をきたした場合, 4)両側腎動脈 狭窄の場合である。いずれも緊急の場合を除いて, 充分に炎症が消失してから外科手術または血管内治療を行うことが望まれる。

予後
 MRIやCT, PETによる検査の普及は本症の早期発見を可能とし, 治療も早期に行われるため予後が著しく改善しており, 多くの症例で長期の生存が可能になり QOL も向上してきている。血管狭窄をきたす以前に診断されることも多くなった。 予後を決定するもっとも重要な病変は, 腎動脈狭窄や大動脈縮窄症による 高血圧, 大動脈弁閉鎖不全によるうっ血性心不全, 心筋梗塞, 解離性動脈瘤, 動脈瘤破裂, 脳梗塞である。
 従って, 早期からの適切な内科治療と重症例に対する適切な外科治療, 血管内治療によって長期予後の 改善が期待できる。比較的短期間で炎症が沈静化して免疫抑制薬から離脱できる症例もあるが, 長期に 持続することが多い。高安動脈炎は若い女性に好発するため, 妊娠, 出産が問題となるケースが多い。炎症所見が無く, 重篤な臓器障害を認めず, 心機能に異常がなければ基本的には出産は可能である。しかし一部の症例では出産を契機として炎症所見が再燃し, 血管炎が再燃することがある。
<診断基準>
1 疾患概念と特徴
 大動脈とその主要分枝及び肺動脈に炎症性壁肥厚をきたし, またその結果として狭窄, 閉塞又は拡張病変 をきたす原因不明の非特異性炎症性疾患。
 狭窄ないし閉塞をきたした動脈の支配臓器に特有の虚血障害, あるいは逆に拡張病変による動脈瘤がその臨床病態の中心をなす。病変の生じた血管領域により臨床症状が異なるため多彩な臨床症状を呈する。全身の諸臓器に多彩な病変を合併する。若い女性に好発する。

病型分類
Ⅰ 大動脈弓分枝のみ
Ⅱa 上行大動脈, 大動脈弓とその分枝
Ⅱb Ⅱaに加えて胸部下行大動脈
Ⅲ 胸部下行大動脈, 腹部大動脈, 腎動脈, あるいはそれらの組み合わせ
Ⅳ 腹部大動脈, 腎動脈, あるいはその両方
Ⅴ 全大動脈とその分枝, Ⅱb+Ⅳ
2 症状
 (1) 頭部虚血症状:めまい,頭痛,失神発作,片麻痺など
 (2) 上肢虚血症状:脈拍欠損,上肢易疲労感,手指のしびれ感,冷感,上肢痛
 (3) 心症状:息切れ,動悸,胸部圧迫感,狭心症状,不整脈
 (4) 呼吸器症状:呼吸困難,血痰 , 咳嗽
 (5) 高血圧
 (6) 眼症状:一過性又は持続性の視力障害,失明
 (7) 耳症状:一過性または持続性の難聴, 耳鳴 
 (8) 下肢症状:間欠性跛行,脱力,下肢易疲労感
 (9) 疼痛:下顎痛, 歯痛, 頸部痛,背部痛,胸痛, 腰痛
 (10) 全身症状:発熱,全身倦怠感,易疲労感,リンパ節腫脹(頸部)
 (11) 皮膚症状:結節性紅斑

3 診断上重要な身体所見
 (1) 上肢の脈拍ならびに血圧異常(橈骨動脈の脈拍減弱,消失,著明な血圧左右差)
 (2) 下肢の脈拍ならびに血圧異常(大動脈の拍動亢進あるいは減弱,血圧低下,上下肢血圧差)
 (3) 頸部,胸部, 背部,腹部での血管雑音
 (4) 心雑音(大動脈弁閉鎖不全症が主)
 (5) 若年者の高血圧
 (6) 眼底変化(低血圧眼底,高血圧眼底,視力低下)
 (7) 難聴
 (8) 炎症所見:発熱,頸部圧痛,全身倦怠感

4 診断上参考となる検査所見
 (1) 炎症反応:赤沈亢進,CRP 高値,白血球増加,γグロブリン増加
 (2) 貧血
 (3) 免疫異常:免疫グロブリン増加(IgG,IgA),補体増加(C3,C4) , IL-6 増加, (MMP-3 高値は本症の炎症の程度を反映しない)*MMP-3
 (4) HLA:HLA-B52,HLA-B67

(MMP-3は,RAで滑膜の増殖に伴い,滑膜表層細胞で発現・生産される酵素で,そのマトリックス分解作用の結果,関節破壊をきたすといわれている.また,産生されたMMP-3が関節液中に貯留し,それが血管やリンパ管を経由して血中に移行し血清中MMP-3値が上昇すると 考えられている.そのため, 血清中MMP-3値はRAにおける滑膜増殖の程度を反映するといわれている.
 また,早期RAの経過観察において,血 清中MMP-3値が上昇または高値を維持した症例は進行性で,低下または低値を維持した症例は非進行性である傾向から,早期RAにおける滑膜増殖と関節破壊の予後予測のマ−カ−として有用であるといわれている. 血清中MMP-値が上昇する疾患としてRA,早期RA,MRA,SLE,腎疾患,癌等がある.)

5 画像診断による特徴
 (1) FDG-PET での大動脈およびその分枝への集積増加
  (FDGはフルオロデオキシグルコースというグルコース(ブドウ糖)に似た薬です。その薬に放射性同位元素である18F(フッ素18)を標識したものが検査で使用する18F-FDGです。この薬は砂糖水のようなものですので, 副作用の心配はありません。)
 (2) 大動脈石灰化像:胸部単純写真,CT
 (3) 大動脈壁肥厚: CT,MRA
 (4) 動脈閉塞,狭窄病変: CT,MRA, DSA*↓ (Digital subtraction angiography) 限局性狭窄からびまん性狭窄, 閉塞まで 様々である。
(*デジタルサブトラクション血管造影(digital subtraction angiography:DSA) 血管のみを描出するアンギオ)
 (5) 拡張病変:超音波検査,CT,MRA,DSA
  上行大動脈拡張は大動脈弁閉鎖不全の合併することが多い。 びまん性拡張から限局拡張, 数珠状に狭窄と混在するなど様々な病変が認められる。
 (6) 肺動脈病変:肺シンチ,DSA,CT,MRA
 (7) 冠動脈病変:冠動脈造影, 冠動脈 CT
 (8) 頸動脈病変:CT, MRA, 頸動脈エコー(マカロニサイン)
 (9) 心エコー:大動脈弁閉鎖不全, 上行大動脈拡張, 心のう水貯留, 左室肥大, び慢性心収縮低下

6 診断
 (1) 確定診断は画像診断(CT,MRA, FDG-PET, DSA, 血管エコー)によって行う。
 (2) 若年者で大動脈とその第一次分枝に壁肥厚, 閉塞性あるいは拡張性病変を多発性に認めた場合は,炎症反応が陰性でも高安動脈炎を第一に疑う。
 (3) これに炎症反応が陽性ならば,高安動脈炎と診断する.ただし, 活動性があっても CRP の上昇しない症例がある。
 (4) 上記の自覚症状,検査所見を有し,下記の鑑別疾患を否定できるもの。

7 鑑別疾患
 ① 動脈硬化症
 ② 炎症性腹部大動脈瘤
 ③ 血管ベーチェット病
 ④ 梅毒性中膜炎
 ⑤ 巨細胞性動脈炎
 ⑥ 先天性血管異常
 ⑦ 細菌性動脈瘤

(Note)
Hirsch et al. (1964) observed Japanese sisters with aortic arch syndrome. This common disease in Japanese is not strikingly familial. The racial concentration of cases is not necessarily genetic. The disease is relatively frequent throughout the Orient, for example, in India among Caucasoid people of that country. Several studies suggest an autoimmune basis. A modest familial aggregation may have the same basis as that observed in other types of possible autoimmune disease, such as Hashimoto struma (140300). Hermann and Pluhor (1964) observed affected European sisters. Numano et al. (1978) reported the disorder in Japanese monozygotic twin sisters whose parents were healthy but first cousins. They reviewed several other reports of familial occurrence including 3 mother-daughter pairs, 3 sister pairs, and 2 brother-sister pairs. Numano et al. (1979) pointed out the high frequency in South America as well as in Asia. In 10 affected women in North America (7 white, 2 Korean, 1 racially mixed (white-black)), Volkman et al. (1982) found an association with MB3 and DR4.Yoshida et al. (1993) confirmed an increased frequency of HLA-B52, as reported by Isohisa et al. (1978). Furthermore, they showed that the disease-associated HLA-B alleles share an epitope composed of glu63 and ser67.

Matsuyama et al. (2003) measured circulating levels of the matrix metalloproteinases 2 (MMP2; 120360), 3 (MMP3; 185250), and 9 (MMP9; 120361) in 25 patients with Takayasu arteritis and 20 age- and sex-matched healthy controls. Levels of all 3 metalloproteinases were higher in patients with active disease than in controls (p less than 0.0001 for each), and MMP2 levels remained elevated even in remission. In contrast, an improvement in clinical signs and symptoms was associated with a marked reduction in circulating MMP3 and MMP9 levels in all patients (p less than 0.05). Matsuyama et al. (2003)concluded that MMP2 could be helpful in diagnosing Takayasu arteritis and that MMP3 and MMP9 could be used as activity markers for the disease.

Mapping
Terao et al. (2013) performed genome scanning of 167 Takayasu arteritis cases and 663 healthy controls, followed by a replication study consisting of 212 Takayasu arteritis cases and 1,322 controls. Terao et al. (2013) found that the IL12B (161561) region on chromosome 5 (rs6871626) (overall p = 1.7 x 10(-13), OR = 1.75, 95% confidence interval 1.42-2.16) and the MLX (602976) region on chromosome 17 (rs665268) (overall p = 5.2 x 10(-7), OR = 1.50, 95% confidence interval 1.28-1.76) as well as the HLA-B (142830) region (rs9263739) (a proxy of HLA-B*52:01, overall p = 2.8 x 10(-21), OR = 2.44, 95% confidence interval 2.03-2.93) exhibited significant associations. A significant synergistic effect of rs6871626 and rs9263739 was found with a relative excess risk of 3.45, attributable proportion of 0.58, and synergy index of 3.24 (p less than or equal to 0.00028) in addition to a suggestive synergistic effect between rs665268 andrs926379 (p less than or equal to 0.027). Terao et al. (2013) also found that rs6871626 showed a significant association with clinical manifestations of Takayasu arteritis, including increased risk and severity of aortic regurgitation. Terao et al. (2013) concluded that their findings indicated that IL12B plays a fundamental role in the pathophysiology of Takayasu arteritis in combination with HLA-B*52:01, and that common autoimmune mechanisms underlie the pathology of Takayasu arteritis and other autoimmune disorders such as psoriasis (see PSORS11, 612599) and inflammatory bowel diseases (see IBD19,612278) in which IL12B is involved as a genetic predisposing factor.

Saruhan-Direskeneli et al. (2013) genotyped approximately 200,000 genetic variants in 2 ethnically divergent Takayasu arteritis cohorts from Turkey and North America by using a custom-designed genotyping platform. Additional genetic variants and the classic HLA alleles were imputed and analyzed.Saruhan-Direskeneli et al. (2013) identified and confirmed 2 independent susceptibility loci within the HLA region (r(2) less than 0.2): HLA-B (142830)/MICA (600169) (rs12524487, OR = 3.29, p = 5.57 x 10(-16)) and HLA-DQB1 (604305)/HLA-DRB1 (142857) (rs113452171, OR = 2.34, p = 3.74 x 10(-9); and rs189754752, OR = 2.47, p = 4.22 x 10(-9)). In addition, Saruhan-Direskeneli et al. (2013) identified and confirmed a genetic association between Takayasu arteritis and the FCGR2A (146790)/FCGR3A (146740) locus on chromosome 1 (rs10919543, OR = 1.81, p = 5.89 x 10(-12)). The risk allele in this locus results in increased mRNA expression of FCGR2A. Saruhan-Direskeneli et al. (2013) also established a genetic association between IL12B and Takayasu arteritis at rs56167332 (OR = 1.54, p = 2.18 x 10(-8)).

(文献)
(1) Hermann VB, PluhorJ: Beitraege zur Pathogenese des Aortenbogen-Syndroms. Ztschr Inn Med 10: 453, 1964
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2004/09/09
2014/01/17