疾患詳細

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Thrombocytopenic purpura, autoimmune (AITP)
(Immune thrombocytopenic purpura; ITP)
(Idiopathic thrombocytopenic purpura)

血小板減少性紫斑病, 自己免疫性
(免疫性血小板減少性紫斑病)
(本態性血小板減少性紫斑病)
指定難病63 特発性血小板減少性紫斑病

遺伝子座:不明
遺伝形式:常染色体優性

(症状)
(GARD)
<80%-99%>
 Thrombocytopenia (血小板減少) [HP:0001873] [2218]
 Thromboembolism (血栓性塞栓) [HP:0001907] [2225]
<30%-79%>
 Arterial thrombosis (動脈血栓) [HP:0004420] [2225]
 Petechiae (点状出血) [HP:0000967] [2217]
<5%-29%>
 Bruising susceptibility (易出血性) [HP:0000978] [2207]
 Epistaxis (鼻出血) [HP:0000421] [2207]
 Gastrointestinal hemorrhage (胃腸出血) [HP:0002239] [2207]
 Gingival bleeding (歯肉出血) [HP:0000225] [2207]
<1%-4%>
 Cerebral hemorrhage (脳出血) [HP:0001342] [2207]

 Abnormal bleeding (異常出血) [HP:0001892] [2207]
 Autosomal dominant inheritance (常染色体優性遺伝) [HP:0000006]
 Platelet antibody positive (血小板抗体陽性) [HP:0003454] [2203]

(UR-DBMS)
【血液】*出血体質
 *血小板減少 (血小板100,000/μl以下)
 脾臓の脂質組織球症 (摘脾で2-30%)
 点状出血
 斑状出血
 鼻出血
 抗血小板抗体 (血小板結合性免疫グロブリンG; PAIgG) (> 70%)
 巨核球増加
 下血
 血尿
 月経過多
 関節出血は通常認めない
 (失血性又は鉄欠乏性貧血を伴い, また軽度の白血球増減)
 骨髄巨核球数:正常ないし増加
 巨核球は血小板付着像を欠くものが多い

<指定難病 特発性血小板減少性紫斑病>
1.概要
 本疾患は, 血小板膜蛋白に対する自己抗体が発現し, 血小板に結合する結果, 主として脾臓における網内系細胞での血小板の破壊が亢進し, 血小板減少を来す自己免疫性疾患である。最近, 欧米において本症は, 一次性免疫性血小板減少症(primary immune thrombocytopenia)と呼ばれることが多い。種々の出血症状を呈する。通常, 赤血球, 白血球系に異常を認めず, 骨髄での巨核球産生能の低下も見られない。ITPの診断は今でも除外診断が主体であり, 血小板減少をもたらす基礎疾患や, 薬剤の関与を除外する必要がある。血小板減少とは, 血小板数10万/µL未満をさす。最近では, ITPにおいては血小板破壊亢進のみならず, 血小板産生も抑制されていることが明らかにされている。血小板自己抗体が骨髄巨核球にも結合し, 血小板の産生障害を引き起こしていると考えられる。

2.原因
 病因は不明であり, 抗体産生機序は明らかにされていない。小児ITPではウイルス感染や予防接種を先行事象として有する場合がある。

3.症状
 小児ITPでは, ウイルス感染が多くの場合先行し, 急激に発症し数週から数か月の経過にて自然治癒することが多い。急激に血小板が減少する場合には, 出血症状も高度であることが多い。一方, 血小板数が徐々に減少し, 推定発病から6か月以上, 年余にわたって慢性的に持続する場合は, 発症時期が不明なことが多い。臨床症状は出血症状であり, 主として皮下出血(点状出血又は紫斑)を認める。歯肉出血, 鼻出血, 下血, 血尿, 頭蓋内出血なども起こり得る。これらの出血症状は何ら誘因がなく起こることが多く, 軽微な外力によって出血しやすい。一般的に出血傾向が明らかになるのは, 血小板数5万/µL以下である。血小板数が1万~2万/µL以下に低下すると, 口腔内出血, 鼻出血, 下血, 血尿, 頭蓋内出血などの重篤な出血症状が出現する。これらの症状を呈した場合は入院の上, 副腎皮質ステロイドやガンマクロブリン大量療法に加え, 血小板輸血も考慮する。一方, 患者によっては血小板3万/µL以下であっても, 軽度の出血傾向しか呈さない症例もあり, この場合は外来での観察で充分である。

4.治療法
 ピロリ菌が陽性の場合, まず除菌療法を行うことを推奨している。一方, 除菌療法の効果のない場合やピロリ菌陰性患者では, 第一選択薬は副腎皮質ステロイドとなる。副腎皮質ステロイドは網内系における血小板の貪食および血小板自己抗体の産生を抑制する。
 発症後6か月以上経過し, ステロイドの維持量にて血小板を維持できない症例, ステロイドの副作用が顕著な症例は積極的に脾摘を行う。脾摘が無効の時, ステロイド抵抗性で脾摘が医学上困難である場合にはトロンボポエチン受容体作動薬の適応となる。
 その他の治療としては, ガンマグロブリン大量静注療法は一過性ではあるが高率に血小板数の増加が期待され, 外科的手術時, 分娩時, 重篤な出血時など緊急に血小板増加が必要時には有用である。重篤な出血が認められる場合には血小板輸血も考慮される。
さらに, ITPの治療を行う上における治療の目標は, 危険な出血を防ぐことにある。薬の副作用の観点から, 血小板数を3万/µL以上に維持するのに必要な最小限の薬剤量の使用に留めるべきであることを成人ITP治療の参照ガイドでは推奨している。
 
5.予後
小児ITPでは, 大部分が6か月以内に自然に血小板数が正常に戻ることが多く, 慢性化するものは10%程度。成人慢性ITPでは, 約20%は副腎皮質ステロイドで治癒が期待されるが, 多くは副腎皮質ステロイド依存性であり, ステロイドを減量すると血小板数が減少してしまうため長期のステロイド治療が必要となる。脾摘により, ITPの約60%がステロイドなしでも血小板数10万/µL以上を維持できるようになる。ただし, それでも残りの約5~20%は治療に抵抗性(あるいは難治性)で, 出血に対する厳重な管理が必要。血小板数が3万/µL以上を維持できれば, 致命的な出血を来して死亡する例はまれであり, 重篤な出血は血小板数3万/µL未満の症例に見られることがある(多くは1万/µL未満の症例)。

<指定難病診断基準>
1.自覚症状・理学的所見
  出血症状がある。出血症状は紫斑(点状出血及び斑状出血)が主で,歯肉出血,鼻出血,下血,血尿,月経過多などもみられる。関節出血は通常認めない。出血症状は自覚していないが血小板減少を指摘され,受診することもある。

2.検査所見
 (1) 末梢血液 
  ① 血小板減少
   血小板100,000/μl以下。自動血球計数のときは偽血小板減少に留意する。
  ② 赤血球及び白血球は数, 形態ともに正常ときに失血性又は鉄欠乏性貧血を伴い, また軽度の白血球増減をきたすことがある。
 (2) 骨髄
  ① 骨髄巨核球数は正常ないし増加
   巨核球は血小板付着像を欠くものが多い。
  ② 赤芽球及び顆粒球の両系統は数, 形態ともに正常。
   顆粒球/赤芽球比(M/E比)は正常で, 全体として正形成を呈する。
 (3) 免疫学的検査
   血小板結合性免疫グロブリンG(PAIgG)増量, ときに増量を認めないことがあり, 他方, 特発性血小板減少性紫斑病以外の血小板減少症においても増加を示しうる。

3.血小板減少をきたしうる各種疾患を否定できる。※

4.1及び2の特徴を備え, 更に3の条件を満たせば特発性血小板減少性紫斑病の診断をくだす。除外診断に当たっては, 血小板寿命の短縮が参考になることがある。
※ 血小板減少をきたす他の疾患
 薬剤又は放射線障害,再生不良性貧血,骨髄異形成症候群,発作性夜間血色素尿症,全身性エリテマトーデス,白血病,悪性リンパ腫,骨髄癌転移,播種性血管内凝固症候群,血栓性血小板減少性紫斑病,脾機能亢進症,巨赤芽球性貧血,敗血症,結核症,サルコイドーシス,血管腫などがある。感染症については,特に小児のウイルス性感染症やウイルス生ワクチン接種後に生じた血小板減少は特発性血小板減少性紫斑病 に含める。
 先天性血小板減少症としては,Bernard-Soulier症候群,Wiskott-Aldrich症候群,May-Hegglin症候群, Kasabach-Merritt症候群などがある。

6.参考事項
1.症状及び所見
 A. 出血症状
 「出血症状あり, なし」, 及び「出血症状」は認定基準判断材料とはしない
 B. 末梢血所見
 ・ 「白血球形態異常あり」あるいは「赤血球形態異常あり」の場合は, 白血病, 骨髄異形成症候群(MDS)鑑別のため骨髄検査を求める
 ・ 「白血球数」が 3,000/μl 未満の場合, あるいは 10,000/μl 以上の場合は, 白血病や再生不良性貧血あるいは MDS 鑑別のため骨髄検査を求める
 ・ 「MCV(平均赤血球容積)」が, 110 以上の場合は骨髄検査を求める
 ・ 「血小板数」は, 10 万/μl 以下が ITP 認定のための絶対条件である
 ・ 「白血球分画」で好中球が 30%未満, あるいはリンパ球が 50%以上の場合は, 骨髄検査を求める
 C. その他, 参考となる検査所見
 ・ その他, 参考となる検査は特発性血小板減少性紫斑病(ITP)認定に必須の検査ではない。検査成績が不明または未回答であっても認定可とする(抗血小板自己抗体検査, 網状血小板比率, トロンボポエチン値は, いずれも保険適用外の検査であり, 多くの施設で実施は困難であるため)
 + 「抗血小板自己抗体検査」が陽性の場合は, ITP の可能性が非常に高い。陰性の場合も ITP を否定できないので認定可とする
 + 「網状血小板比率」が高値の場合は, ITP の可能性が高い。正常の場合も ITP を否定できな いので認定可とする
 + 「トロンボポエチン値」は, 高値, 正常どちらであっても認定可とする
 + 「HBs 抗原」, 「抗 HCV 抗体」が陽性の場合, 鑑別診断の項で肝硬変を鑑別できるとしている場合は認定可とする
 + 「ヘリコバクタ・ピロリ菌」は, 陽性, 陰性いずれでも認定可とする
・ 「骨髄検査」については検査手技などにより有核細胞数や巨核球数が低値となることがあるので, 有核細胞数や巨核球数が低値であっても ITP 認定可とする
・ 「骨髄所見」で異型細胞が存在している場合は認定できない
・ 「骨髄染色体検査所見」において MDS でしばしば認められる染色体異常(5q-, -7, +8, 20q-)などを認めるときは, 認定できない
2. 鑑別診断
 鑑別診断の項で「鑑別できない」と記載されている時は, ITP と認定できない :
3. 現在までの治療
「治療の有無」, 「実施した治療」は, ITP 認定の判断材料とはしない

(ノート)
Autoimmune thrombocytopenic purpura is characterized by a low platelet count, normal bone marrow, and the absence of other causes of thrombocytopenia. It is principally a disorder of increased platelet destruction mediated by autoantibodies to platelet-membrane antigens (George et al., 1994).

CLINICAL FEATURES

In children, AITP is usually acute and self-limited, whereas in adults, it is most often chronic. The presenting features are bruising, petechiae, and/or mucosal bleeding (epistaxis, hematuria, and rarely intracerebral hemorrhage) (George et al., 1994).

Cines and Blanchette (2002) and Imbach et al. (2002) provided comprehensive reviews.

INHERITANCE

Karpatkin et al. (1981) described autoimmune thrombocytopenic purpura in a woman and 3 of her 4 children (a son and 2 daughters). Bound platelet antibody was demonstrated. They found reports of 4 families of probable similar disorder.

Laster et al. (1982) described chronic immune thrombocytopenic purpura in monozygotic twins.

Imbach et al. (2002) cited Dohrn in Germany as describing purpura hemorrhagica in a neonate and his mother.

PATHOGENESIS

Harrington et al. (1951) observed a child with purpura born to a mother with chronic idiopathic thrombocytopenic purpura. The child's purpura resolved spontaneously within 3 weeks while the mother remained thrombocytopenic. Harrington argued that transfer of a humoral antiplatelet factor from the mother to her baby occurred. He then administered plasma from patients with chronic AITP to himself and to 9 volunteers with a normal platelet count. Eight of the recipients immediately developed transient thrombocytopenia and some of them purpura as well. One of the volunteers, in spite of an earlier splenectomy, also responded with thrombocytopenia, indicating a secondary role of the spleen. Imbach et al. (2002) stated that Harrington's experiment clearly suggested an antiplatelet factor in the plasma as the cause of AITP. They also noted that evidence for the role of autoantibodies in chronic AITP was first reported by van Leeuwen et al. (1982).

CLINICAL MANAGEMENT

Gasbarrini et al. (1998) reported that successful eradication of Helicobacter pylori infection in ITP patients, as assessed by the urea breath test, resulted in a significant increase in platelet counts and, in 6 of the 8 patients, in the disappearance of anti-platelet antibodies.

Fujimura et al. (2005) analyzed more than 200 ITP patients and observed a benefit from successful eradication of H. pylori in most patients. Complete remission was 23% in the successfully treated group, 12 months after eradication.

Asahi et al. (2008) observed increased platelet numbers following anti-H. pylori treatment only in H. pylori-positive ITP patients. Before treatment, monocytes from H. pylori-positive patients exhibited enhanced phagocytic capacity and low levels of the inhibitory FCGR2B (604590) receptor. Treatment suppressed the activated monocyte phenotype and improved autoimmunity parameters and modulation of the balance of Fc-gamma receptors. Asahi et al. (2008) suggested that platelet recovery in successfully treated ITP patients is mediated through a change in Fc-gamma receptor balance toward the inhibitory FCGR2B type.


MOLECULAR GENETICS

Breunis et al. (2008) found that an ORF allele of the FCGR2C gene (612169) was significantly overrepresented in patients with autoimmune thrombocytopenic purpura, with 34% of AITP patients having at least 1 ORF allele.

(文献)
(1) Harrington, W. J.; Minnich, V.; Hollingsworth, J. W.; Moore, C. V. : Demonstration of a thrombocytopenic factor in the blood of patients with thrombocytopenic purpura. J. Lab. Clin. Med. 38: 1-10, 1951
(2) Karpatkin S et al. Hereditary autoimmune thrombocytopenic purpura: an immunologic and genetic study. Ann Intern Med 94: 781-782, 1981
(3) Laster AJ et al. Chronic immune thrombocytopenic purpura in monozygotic twins: genetic factors predisposing to ITP. New Eng J Med 307: 1495-1498, 1982
(4) Bogart L, Wittels EG: Idiopathic thrombocytopenic purpura in two elderly siblings. Arch Intern Med 145: 2259, 1985
(5) Karpatkin, S. : Autoimmune thrombocytopenic purpura. Semin. Hemat. 22: 260-288, 1985
(6) George, J. N.; El-Harake, M. A.; Raskob, G. E. : Chronic idiopathic thrombocytopenic purpura. New Eng. J. Med. 331: 1207-1211, 1994
(7) Gasbarrini, A.; Franceschi, F.; Tartaglione, R.; Landolfi, R.; Pola, P.; Gasbarrini, G. : Regression of autoimmune thrombocytopenia after eradication of Helicobacter pylori. Lancet 352: 878 only, 1998
(8) Karpatkin S: Autoimm VS: Immune thrombocytopenic purpura. New Eng. J. Med. 346: 995-1008, 2002
(9) Cines, D. B.; Blanchette, V. S. : Immune thrombocytopenic purpura. New Eng. J. Med. 346: 995-1008, 2002
(10) Imbach, P.; Kuhne, T.; Signer, E. : Historical aspects and present knowledge of idiopathic thrombocytopenic purpura. Brit. J. Haemat. 119: 894-900, 2002
(11) Fujimura, K.; Kuwana, M.; Kurata, Y.; Imamura, M.; Harada, H.; Sakamaki, H.; Teramura, M.; Koda, K.; Nomura, S.; Sugihara, S.; Shimomura, T.; Fujimoto, T. T.; Oyashiki, K.; Ikeda, Y. : Is eradication therapy useful as the first line of treatment in Helicobacter pylori-positive idiopathic thrombocytopenic purpura? Analysis of 207 eradicated chronic ITP cases in Japan. Int. J. Hemat. 81: 162-168, 2005
(12) Asahi, A.; Nishimoto, T.; Okazaki, Y.; Suzuki, H.; Masaoka, T.; Kawakami, Y.; Ikeda, Y.; Kuwana, M. : Helicobacter pylori eradication shifts monocyte Fc-gamma receptor balance toward inhibitory Fc-gamma-RIIB in immune thrombocytopenic purpura patients. J. Clin. Invest. 118: 2939-2949, 2008
(13) Breunis, W. B.; van Mirre, E.; Bruin, M.; Geissler, J.; de Boer, M.; Peters, M.; Roos, D.; de Haas, M.; Koene, H. R.; Kuijpers, T. W. : Copy number variation of the activating FCGR2C gene predisposes to idiopathic thrombocytopenic purpura. Blood 111: 1029-1038, 2008

2009/03/26