疾患詳細

疾患詳細





107320
Antiphospholipid syndrome, familial
(Lupus anticoagulant, familial)

抗リン脂質症候群, 家族性
(ループス抗凝固因子, 家族性)
指定難病48 原発性抗リン脂質抗体症候群
<小児慢性特定疾病 膠5 抗リン脂質抗体症候群>

遺伝形式:常染色体優性

(症状)
(GARD)

 Arterial thrombosis (動脈血栓) [HP:0004420] [2225]
 Autoimmune thrombocytopenia (自己免疫性血小板減少) [HP:0001973] [2218]
 Autosomal dominant inheritance (常染色体優性遺伝) [HP:0000006]
 Blurred vision (霧視) [HP:0000622] [06012]
 Central retinal artery occlusion (中心網膜動脈閉塞) [HP:0025342] [0652]
 Iritis (虹彩炎) [HP:0001101] [061]
 Keratitis (角膜炎) [HP:0000491] [062]
 Lupus anticoagulant (ループス抗凝固因子) [HP:0025343] [2203]
 Retinal detachment (網膜剥離) [HP:0000541] [06527]
 Retinal vasculitis (網膜血管炎) [HP:0025188] [0652]
 Scleritis (強膜炎) [HP:0100532] [063]
 Venous thrombosis (静脈血栓症) [HP:0004936] [2225]
 Visual loss (視力喪失) [HP:0000572] [06011]
 Vitritis (硝子体炎) [HP:0011531] [064]

(UR-DBMS)
【一般】反復性胎児喪失
【眼】霧視
 眼球発赤および疼痛
 視力喪失
 虹彩炎
 前部強膜炎
 線維性角膜炎
 網膜血管炎
 硝子体炎
 網膜剥離
 後部強膜炎
 中心部網膜動脈閉塞
【血管】動脈血栓症
 静脈血栓症
【血液】免疫性血小板減少
【免疫】細胞リン脂質成分への自己抗体
 抗cardiolipin 抗体
 ループス抗凝固因子抗体
【その他】多様な眼の表現型

(要約)
●抗リン脂質抗体症候群(Anti-phospholipid antibody syndrome; APS)は自己免疫疾患のひとつである
 自己抗体ができることによって, 全身の血液が凝固しやすくなり, 動脈塞栓・静脈塞栓を繰り返す
 特に習慣性流産や若年者に発症する脳梗塞の 原因として重要である
●歴史
 抗リン脂質抗体症候群は, 1983年, Harrisらによって報告された比較的新しい疾患概念である
 当初は全身性エリテマトーデス(SLE)に合併する疾患として報告されており, ループスアンチコアグラントや抗リン脂質抗体が陽性となって血栓症や習慣流産の原因となるものと定義 された
 →抗リン脂質抗体症候群はSLEがなくても発症することがわかった (原発性抗リン脂質抗体症候群)
  SLEなどの膠原病に 合併するものは二次性抗リン脂質抗体症候群と呼ばれる
●症状, 徴候
血栓症:血栓症は, 動脈, 静脈のいずれにも, 全身のどこにでも生じうる
 動脈血栓
 脳梗塞, 心筋梗塞, 副腎梗塞, 胃十二指腸動脈梗塞, 腸間膜動脈塞栓症, 皮膚潰瘍, 四肢壊疽
 静脈血栓
 深部静脈血栓症, 脳静脈洞血栓症, 肺塞栓症, 下大静脈血栓, バッド・キアリ症候群など
 一度に複数の部位に同時に多発性の血栓症を起こし, 生命の危険のある病型を劇症型抗リン脂質抗体症候群と称する
流産
 抗リン脂質抗体症候群は習慣流産の原因の一つである
 胎盤の血管に血栓が起きるこ とによる胎盤梗塞により, 胎児に血液が供給されなくなるのが原因と考えられている
その他
 網様皮斑, リーブマン・サックス心内膜炎, 自己免疫性溶血性貧血などを合併することがある
検査所見
 凝固系:活性化部分トロンボプラスチン時間が延長する
 自己抗体:ループスアンチコアグラント, 抗カルジオリピンIgGまたはIgM抗体, 抗カルジオリピンβ2GPI抗体が陽性
 血算:中等度の血小板減 少症を伴うことが多い
 その他
 梅毒検査が陽性となる(生物学的偽陽性)
診断基準
 国際的な診断基準が, 北海道大学の小池隆夫らにより1999年に提唱され, 札幌基準と呼ばれている。これは本症を特徴的臨床所見(血栓塞栓症状または習慣流産)のうちひとつと, 特徴的検査所見(自己抗体)のうちひとつを6週間以上の間隔をあけて二回確認されるものとしており, 基本的に臨床研究に用いるためにつくられたが現場でも用いられて いる。2006年, 改訂版が提案され, 自己抗体確認の間隔が12週間に延長されるなどした。
治療
血栓症
血栓症の進行を防ぐため, すなわち2次血栓予防のために薬剤が投与される
 →脳梗塞などの動脈系の血栓であればアスピリンなどの抗血小板薬が使用される
  下大静脈血栓や, 動脈血栓で 効果が足りないときにはワルファリンを投与する
 劇症型抗リン脂質抗体症候群に対し, ステロイド剤やシクロフォスファミドが投与されることがあるが, 有効性は明 らかとなっていない。
不育症, 流産の治療
 不育症の患者の場合は以前に自己免疫疾患の基準を満たさなかったとしても20%の頻度で自己抗体が陽性になることが知られており特に重要視されているのが抗リン脂 質抗体である
 抗リン脂質抗体としてはループスアンチコアグラント, 抗カルジオリピン抗体, 抗カルジオリピン・β2GPI複合体抗体, 抗フォスファチジル エタノールアミン (PE) 抗体, 抗フォスファチジルセリン (CL) 抗体 (抗プロトロンビン抗体), 抗アネキシンV抗体などが知られている
 ループスアンチコアグラントは生体外ではリン脂質依存性のaPTTの延長を示すが生体内では血栓症を引き起こすことが知られている
 抗カルジオリピン・β2GPI複合体抗体は抗カルジオリピン抗体のうち血栓症の病的意義が明らかになっている抗体である→抗PE抗体と同様にキニノーゲンに結合する
 抗CL抗体はプロトロンビンに結合する
 APSによる不育症の治療としては低用量アスピリン療法(LDA), ヘパリン療法, 両者の併用療法, 免疫グロブリン静注が知られている
 十分なエビデンスは2008年現在存在しないがヘパリン・アスピリン併用療法が一般的である

<小児慢性特定疾病 膠5 抗リン脂質抗体症候群>
診断方法
臨床基準に示す血栓症が存在し, かつ検査項目のうち1項目以上が存在するとき, 小児抗リン脂質抗体症候群とする 
臨床基準 
血栓症
 画像診断あるいは, 組織学的に証明された明らかな血管壁の炎症を伴わない動静脈あるいは小血管の血栓症(いかなる組織, 臓器でもよい。過去の血栓症も, 診断方法が適切で明らかな他の原因がない場合は臨床所見に含めてよい。表層性の静脈血栓は含まない) 
検査基準
 以下の検査項目が12週以上の間隔をおいて2回以上検出されるとき1項目とする。 
1. 国際血栓止血学会のガイドラインに基づいた測定法で, ループスアンチコアグラント(LA)が陽性である。 
2. 標準化されたELISA法において, 中等度以上の力価(>40GPL or MPLまたは健常人の99パーセントタイル以上)のIgGまたはIgM型の抗カルジオリピン抗体が検出される。 
3. 標準化されたELISA法において, 中等度以上の力価(健常人の99パーセントタイル以上)のIgGまたはIgM型の抗β2 glycoprotein I抗体が検出される。 
4. 抗CLβ2 glycoprotein I 抗体が中等度以上の力価(健常人の99パーセントタイル以上)で検出される。
当該事業における対象基準
治療で非ステロイド系抗炎症薬, ステロイド薬, 免疫調整薬, 免疫抑制薬, 抗凝固療法, γグロブリン製剤, 強心利尿薬, 理学作業療法, 生物学的製剤又は血漿交換療法のうち一つ以上を用いている場合

概念・定義
 抗リン脂質抗体症候群は, 抗リン脂質抗体の存在下に血栓傾向が増す疾患であり, 小児では動静脈血栓症が問題となる。抗リン脂質抗体はリン脂質またはリン脂質と蛋白の複合体に結合する自己抗体の総称で, 抗カルジオリピン抗体(aPL)や生物学的偽陽性などが含まれるが, 臨床診断には抗カルジオリピンβ2-グリコプロテインⅠ(aPLβ2GPI)抗体もしくはループスアンチコアグラント(LA)の存在が重要である。
 単独で発症した症例は原発性APSに, 全身性エリテマトーデス(SLE)などリウマチ性疾患に伴う場合は続発性APSに分類される。APSの特殊型として, 多臓器に微小血栓をきたし急速に多臓器不全に陥る, 致死率が高い劇症型抗リン脂質抗体症候群(Catastrophic APS)がある。
病因
 β2-グリコプロテインⅠ(β2GPI)と, ホスファチジルセリンが結合したプロトロンビンを対応抗原とする抗リン脂質抗体が血栓症と関連する主な自己抗体であることが明らかとなっている。
 β2GPIは陰性(荷電)リン脂質依存性の凝固反応を抑制する分子であり, ホスファチジルセリンはβ2GPIと結合するリン脂質である。抗リン脂質抗体は常に血中に存在するにも関わらず, triggerがあって初めて血栓を形成する。
 抗リン脂質抗体が血栓を形成する機序として, β2GPIを阻害することにより血栓傾向をきたすという仮説が想定されたが, 近年β2GPI欠損者(ホモ変異個体)で血栓傾向がみられなかったことから, APSの血栓傾向をβ2GPIの機能不全で説明することが困難であると考えられている。その他, 抗リン脂質抗体と血小板や内皮細胞がリン脂質結合蛋白を介して相互作用し, これらを活性化または障害することで血栓傾向が生じる機序や, 抗リン脂質抗体が抗凝固因子を阻害する機序などが推定されている。
 ホスファチジルセリンは, 活性化した内皮細胞や血小板膜表面などに表出する分子であり, 通常は細胞表面にでていない。このことがtriggerをきっかけに血栓傾向をきたす説明の1つとして注目されている
疫学
 小児期APSにおける正確な罹患率や有病率に関する報告はない。小児APSでは, 原発性APSがSLEなどに伴う続発性APSと同等数いると推定されているが, APS発症後にSLEと診断される症例が含まれている可能性がある。
 成人のSLEでは3割程で抗リン脂質抗体が陽性で, 1割にAPSを合併していると推定されており, 小児SLEにおいても抗リン脂質抗体を有している症例は4割程みられる
臨床症状
 APSでみられる血栓症の症状は, 梗塞部位により多様であり, 成人にみられる臨床症状の多くが小児例にも当てはまる。
 静脈血栓では, 深部静脈血栓症, 網状皮疹, 皮膚潰瘍, 網脈静脈血栓症, Budd-Chiari症候群, 肝酵素上昇, 副腎機能低下などの症状を, 動脈血栓では, 四肢壊疽, 脳梗塞, 一過性脳虚血発作, 網脈動脈血栓症, 腎梗塞, 腎血栓性微小血管障害, 心筋梗塞, 肝梗塞, 腸間膜動脈血栓症, 骨梗塞などの症状を呈する。血小板減少症がみられることがある。
 成人の女性では習慣性流産を始めとする妊娠合併症が問題となり, 血栓症とならび重要な臨床所見である。
 数日から1カ月以内という短期間のうちに複数の臓器に微小血栓が多発し, 急速に多臓器不全を呈する致死率の高い病態として, 劇症型抗リン脂質抗体症候群(catastrophic antiphospholipid syndrome; CAPS)がある。
 血栓を生じる頻度の高い臓器は, 腎・肺・中枢神経・心臓・皮膚である。臨床所見および検査所見はCAPS成人例と相違ないが, 小児では成人と異なり, 感染症をきっかけとして劇症型APSをきたす頻度が高く(小児60.9% vs 成人26.8%), 劇症型APSの症状がAPSとしての初発症状となる頻度が高い(小児86.6% vs 成人45.2%)。CAPSでは画像所見で血栓が明らかでない臓器障害においても, 生検組織で微小血栓が証明されることがある。
 動脈血栓を生じた症例は動脈血栓を再発し, 静脈血栓を生じた症例は静脈に血栓が再発することが多い
診断
上記
治療
 抗凝固薬および抗血小板薬による血栓症の予防が治療の中心となる。APSに対する免疫抑制療法の効果は確認されていない。びまん性肺胞出血を有するAPSやCAPSなどにおいて, 免疫抑制療法を含めた集学的治療の効果が検討されている。小児APSに対する特有の治療方針はなく, 成人APSの治療に準じて治療が行われている。
 静脈血栓の予防には, アスピリンの効果が否定されており, ワルファリンが用いられる。
 動脈血栓の予防に対しては抗血小板薬が用いられる。抗血小板薬として低用量アスピリンが用いられるが, 前向き試験では効果が不十分との報告があり, 成人領域では複数の抗血小板薬の併用や抗凝固薬の少量併用が必要との意見がある。
 抗リン脂質抗体陽性例におけるアスピリンによる血栓症の一次予防効果に関しては, 否定的なランダム化比較試験がある一方で, 基礎疾患にSLEを有する症例などで有効性を示唆するメタアナリシスの報告がある
予後
 小児APSにおける血栓症の再発率は, おおよそ6年の観察期間で19-29%であった。小児APS121人を含むコホート研究では, おおよそ6年間の観察で7%が死亡したことが報告されている

<指定難病48 原発性抗リン脂質抗体症候群>
概要
 抗リン脂質抗体(aPL)には, 抗カルジオリピン抗体(aCL), ループス抗凝固因子(LAC), ワッセルマン反応 (STS)偽陽性などが含まれるが, これらの抗体を有し, 臨床的に動・静脈の血栓症, 血小板減少症, 習慣流産・死産・子宮内胎児死亡などをみる場合に抗リン脂質抗体症候群(APS)と称せられる。
 全身性エリテマトーデス(SLE)を始めとする膠原病や自己免疫疾患に認められることが多いが(続発性), 原発性 APS も存在する。また, 多臓器梗塞を同時にみる予後不良な病態は catastrophic APS と称せられる。原因は未だ不明である。

原因
 aPL は APTT の延長をもたらすが, 臨床的には凝固亢進し, 血栓症をきたす。その機序は不明であるがい くつかの仮説が出されている。それらは, リン脂質依存性凝固反応を抑制的に制御しているβ2‐GPI を阻害する, プロテイン C の活性化を阻害する, 血管内皮細胞上のトロンボモジュリンやヘパラン硫酸を阻害な いし障害する, 凝固抑制に働く血管内皮細胞からのプロスタサイクリン産生を抑制する, 血管内皮細胞からの von Willebrand 因子やプラスミノゲンアクティベータインヒビターの産生放出を増加させる, などである。

症状
 aPL は, 動静脈血栓症, 自然流産・習慣流産・子宮内胎児死亡, 血小板減少症などと相関する。また, クームス抗体陽性をみる自己免疫性溶血性貧血や Evans 症候群をみることもある。関連する主な症状を表 1 に示す。これらは, SLE や自己免疫疾患に限らず幅広い疾患にまたがって認められる。急速に多発性の臓 器梗塞をきたす catastrophic APS では, 強度の腎障害, 脳血管障害, ARDS 様の呼吸障害, 心筋梗塞, DlC などの重篤な症状をみる。

抗リン脂質抗体症候群にみられる症状
① 血栓症
<静脈系>
 血栓性静脈炎, 網状皮斑, 下腿潰瘍, 網膜静脈血栓症, 肺梗塞・塞栓症, 血栓性肺高血圧症, Budd-Chiari 症候群, 肝腫大など。
<動脈系>
 皮膚潰瘍, 四肢壊疸, 網膜動脈血栓症, 一過性脳虚血発作, 脳梗塞, 狭心症, 心筋梗塞, 疣贅性心内膜炎, 弁膜機能不全, 腎梗塞, 腎微小血栓, 肝梗塞, 腸梗塞, 無菌性骨壊死など。
② 習慣流産, 自然流産, 子宮内胎児死亡
③ 血小板減少症
④ その他
 自己免疫性溶血性貧血, Evans 症候群, 頭痛, 舞踏病, 血管炎様皮疹, アジソン病, 虚血性視神経症など。

治療法
 続発性の APS では, 原疾患に対する治療とともに抗凝固療法を行う。
 原発性の場合には抗凝固療法が主体となる。
 抗凝固療法は, 抗血小板剤 (低容量アスピリン, 塩酸チクロピジン, ジピリダモール, シロスタゾ ール, PG 製剤など), 抗凝固剤(ヘパリン, ワルファリンなど), 線維素溶解剤 (ウロキナーゼなど) などを含み, 病態に応じ選択される。
 副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬は, 基礎疾患に SLE などの自己免疫疾患がある場合や, catastrophic APS などに併用される。
 これらの免疫抑制療法は aPL の抗体価を低下させるが, 副腎皮質ステロイドの高用量投与は易血栓性をみるため注意が必要である。その他, 病態に応じ血漿交換療法やガンマグロブリン大量静注療法が併用される。

予後
予後は, 侵される臓器とその臨床病態による。多臓器梗塞をみる catastrophic APS は予後不良である。

<指定難病診断基準>
臨床基準の1項目以上が存在し, かつ検査項目のうち1項目以上が存在するとき, 抗リン脂質抗体症候群とする
臨床基準
1. 血栓症
 画像診断, あるいは組織学的に証明された明らかな血管壁の炎症を伴わない動静脈あるいは小血管の血栓症
 ・いかなる組織, 臓器でもよい
 ・過去の血栓症も診断方法が適切で明らかな他の原因がない場合は臨床所見に含めてよい
 ・表層性の静脈血栓は含まない
2. 妊娠合併症
 ① 妊娠 10 週以降で, 他に原因のない正常形態胎児の死亡, または
 ② (i)子癇,重症の妊娠高血圧腎症(子癇前症), または(ii)胎盤機能不全による妊娠 34 週以前の正常形態胎児の早産, または
 ③ 3 回以上つづけての, 妊娠 10 週以前の流産 (ただし, 母体の解剖学的異常, 内分泌学的異常, 父母の染色体異常を除く)
検査基準
1.International Society of Thrombosis and Hemostasis のガイドラインに基づいた測定法で, ループスアンチコアグラントが 12 週間以上の間隔をおいて 2 回以上検出される。
( ループスアンチコアグラントは, in Vitroでは顕著な凝固時間の延長とAPTTおよびPTの延長傾向を示すにもかかわらず, 臨床的にはほとんど出血傾向を認めず, 血栓傾向を示すことが知 られている。一般に, ループスアンチコアグラントの存在はリン脂肪のみを希釈したAPTT試薬を用いるスクリーニング試験により検出感度が異なったり, 凝固因子の欠損などでも陽性化する場合があるので, スクリーニング試験で陽性となった場合, それがループスアンチコアグラントの存在によるものか確認試験を 行う必要がある。
 本検査では, 患者血漿に正常血漿並びに過剰のリン脂質を加えたものと, 患者血漿に正常血漿のみを加えたものとの凝固時間の差を見ることにより, 凝固時間を延長させうる存在(インヒビター)がリン脂質に対するものであることを証明することを測定目的としている。とくに希釈ラッセル蛇毒法では蛇毒を用いてX因子を直接活性化させるためⅦ因子や接触因子(ⅩⅡ, ⅩⅠ因子)プレカリクレイン, 高分子キニノゲン, Ⅷ因子を介さないためループスアンチコアグラントの検査感度がより高められている。)
2.標準化された ELISA 法において, 中等度以上の力価の(>40 GPL or MPL, または>99 パーセンタイル) IgG 型または IgM 型の aCL (抗カルジオリピン抗体) が 12 週間以上の間隔をおいて 2 回以上検出される。
3.標準化された ELISA 法において, 中等度以上の力価 (>99 パーセンタイル)の IgG 型または IgM 型の抗β2GPI抗体が 12 週間以上の間隔をおいて 2 回以上検出される。
(本邦では抗β2-GPI 抗体の代わりに, 抗カルジオリピンβ2-GPI 複合体抗体を用いる)
 GPI=glucose-6-phosphate isomerase

(解説)
●cardiolipin (カルジオリピン) (1,3-bis(phosphatidyl)glycerol)
免疫学的特性をもち, 多くの生体膜に存在する. 梅毒の血清診断に用いる. レシチン. コレステロールと混ぜると, Wassermann抗体と結合するが, 梅毒菌運動阻止抗体とは結合しない
●Binswanger's disease (ビンスヴァンガー病) 多発梗塞性痴呆の原因の1つ. 白質に多くの梗塞とラクナがあり, 皮質と基底核は比較的保たれている.

(ノート)
●'抗リン脂質症候群'という名称は動脈および静脈血栓, 反復性胎児喪失および細胞リン脂質への自己抗体のスペクトラムをもつ免疫性血小板減少の連関に対して提唱された
 抗カルジオリピン (anticardiolipin) 抗体は, カルジオリピンおよび他の負に荷電されたリン脂質と反応するかもしれない
 'ループス抗凝固因子'という用語は in vitro 凝固試験で凝固活性リン脂質成分への抑制効果を検出される, IgG タイプが最も多い, いろんな抗体グループをいう

●Shoenfeld et al. (2008) は, 抗リン脂質症候群は30までの異なる自己抗体が特徴であると述べた
 →血小板, 糖タンパク, 凝固因子, lamins, ミトコンドリア抗原, 細胞表面マーカーなどへの抗体
 これらの一部は本症候群の血清形成促進経口へ付加的効果をもつかもしれない

●Ruiz-Irastorza et al. (2010) は, 抗リン脂質症候群に関連する, 病態生理学, 臨床, 診断および治療の進歩をレビューした

●自己免疫性血小板減少 (188030) を含むいろんな自己免疫疾患が他の場所で論じられている (例, 109100, 269200).

臨床症状
●Hellan ら(1998) は, ループス抗凝固因子, 抗カルジオリピン免疫グロブリンG高値, SLE または関連自己免疫疾患をもつ男女同胞2例を記載した
 両親は早期から静脈性血栓をもっていた
 女性は22歳時最初に右下肢の深部静脈血栓の症状を自然にもった
 男性は多発性関節炎と肝脾腫のため13歳時入院した
  SLE の血清学および組織学的証拠が発見された
  17歳時, 軽度の外傷後右下肢の深部静脈血栓をもった
●Hoshide ら(1998)は, ループス抗凝固因子と心弁異常発生の連関を示唆した
 ループス抗凝固因子を伴う SLE の患者で典型的僧帽弁狭窄を記載した

●Brenner ら(1996) は, 両親がいとこの子供で, 異常な反復性重症血栓性塞栓ともる23歳の女性と19歳の妹を観察した
 家族性抗リン脂質症候群をもち, 第V因子の R506Q 変異のヘテロ接合体ももっていた (227400.0001)
 遺伝性および後天性 APC 抵抗性の共存が血栓性塞栓症の重症さを説明すると考えられた
 姉は左下肢近位の深部静脈血栓があり, 3回目の妊娠で20週で胎児の胎内死亡をもった
 4回目の妊娠中, 彼女は10週目から enoxaparine を投与されたが, 20週で胎内胎児死亡となった
 3週後, 彼女は右膝窩深部静脈血栓を生じた
 妹は骨スキャンでL4梗塞と第1三半期流産および汎血球減少で入院した

●Akiguchi ら(1999) は, ループス抗凝固因子と Binswanger 病が分離する, いとこ結婚の3世代をもつ2世代家系を報告した
 60歳の発端者は57歳時しのびよる悪化が始まった
 ループス抗凝固因子は陽性であったが, 抗カルジオリピン抗体は陰性であった
 多数の裂孔が若い男性同胞と静脈血栓をもつ若い女性同胞, SLE をもつ娘1人にあった

●Gelfand ら(1999) は, 原発性抗リン脂質症候群の39例の連続した患者で全身および眼科的症状を報告した
 最初の連続した20例の患者は網膜蛍光アンギオを行った
 全身症状の最も多い型は胎児喪失 (46%), 中枢神経症状 (44%), および静脈血栓 (41%)であった
 患者の33%は目症状をもっていた
  通常は視力障害で, 一過性が最も多かった
 疾患に直接関係する病的眼所見は患者の13%にみられ, 5%のみが非常に軽度の網膜症からなる眼球内病変をもっていた
 眼所見は無症状の患者には6%のみみられた
 ルーチンの網膜アンギオは他の情報を明らかにしなかった
 著者は原発性抗リン脂質症候群での眼症状は少ないと結論した
 一過性の視力障害が多い
  大多数は眼虚血より中枢神経系に関係している

●Miserocchi ら(2001) は, 抗カルジオリピン抗体があり眼炎症をもつ13例で眼症状を評価した
 全員が抗カルジオリピン抗体異常 (主にIgG isotype) をもっていた
  46%は免疫活性化のマーカーをもっていた
 全身症状が眼症状と連関して多くみられた
 最も多い受診時の眼症状は視力のぶれ (62%), 眼痛 (23%) および視力喪失 (15%)であった
 患者の76%が前房異常をもっていた
  虹彩炎 (62%), 強膜炎 (15%), フィラメント性角膜炎 (7%)
 最も多い後房症状は, 網膜血管炎 (60%), 硝子体炎 (38%), 網膜剥離 (15%), 強膜炎 (7%), および中心性網膜動脈閉塞 (7%)であった

マッピング
●Hudson ら(1997) は, HLA-DRB1*14 アレルと家族性抗リン脂質症候群の連鎖の可能性を発見した

遺伝
●ループス抗凝固因子の家族性発生は Exner ら(1980) および Mackie ら(1987)により報告された
 これらの報告では, 発端者はSLE (152700) または関連する免疫疾患をもっていたが, 彼らの家族の多くはループス様症候群を示唆するいろんな臨床的血清学的特徴をもっていた
●Matthey ら(1989) は, 家族の数人が抗カルジオリピン抗体をもち, 2人がループス抗凝固因子をもつが, 全員が無症状である1家系を記載した

●Goel ら(1999) は, 抗リン脂質症候群の家族性型の診断基準をつくるため, 1例以上の患者をもつ家系で遺伝形式を調べた
 潜在的候補遺伝子との連鎖を決定した
 7家系では, 家族101人中30人が症候群の診断基準に合致した
 分離解析は環境および常染色体劣性モデルを拒否した
  優性または共優性モデルに最も一致した
 連鎖解析は抗リン脂質症候群といくつかの候補遺伝子の独立した分離を示した

機序
●McNeil et al. (1990)は, 抗リン脂質抗体 (APA) が cardiolipin に結合するのに必要な cofactor として beta-2-glycoprotein I (B2GPI, APOH; 138700) を証明した
 これらの所見は, APA が B2GPI を含む複合抗原に対して方向づけられていることを示唆した
 さらに, B2GPI は抗 cardiolipin 抗体なしで陰イオンのリン脂質と結合した
 McNeil et al. (1990) は, 抗 cardiolipin AOA が in vivo で apoH の機能を干渉するかもしれないと仮説した
 →これらの抗体と血栓傾向との連関を説明するかもしれない

分子遺伝学
●Hirose et al. (1999) は, 異なる人種の健康人370例とAPS 患者149例の研究で, APOH 遺伝子 (V247L) の多型が抗リン脂質症候群のアジア人の患者で抗-beta-2-glycoprotein I (B2GPI) 抗体レベルの減少と有意に連関することを発見した
 VアレルとVV遺伝子型が, 対照より抗リン脂質症候群のアジア人患者でより多く発見された (各々 p = 0.0028 と p = 0.0023)
 白人またはアフリカ系米国人患者と適切な対照の比較ではアレルまたは遺伝子型頻度に有意差はなかった
 アジア人患者でみられたアレルおよび遺伝子型頻度の違いは, 抗B2GPI抗体に限定されていた

動物モデル
●ヒト抗燐脂質抗体の受身伝達により誘導された抗燐脂質症候群のマウスモデルで, Girardi ら(2003) は, 補体活性化が胎児喪失と組織障害で本質的および原因的役割を演じることを示した
 特異的に, 彼らは C5a と C5a 受容体 (C5R1; 113995) の前炎症性結果と病的抗燐脂質抗体が胎児障害に関係する決定的中間物として好中球の採用を証明した
 彼らの結論は C5a 受容体欠損と C5a 受容体拮抗ペプチドの胎児保護効果をもとにしていた
  (抗C5マウス抗体と類似所見で, C5a生成が抑制される C5 -/- マウスでの好中球欠乏の効果)

(文献)
(1) Exner, T., Barber, S., Kronenberg, H., Rickard, K. A. Familial association of the lupus anticoagulant. Brit. J. Haemat. 45: 89-96, 1980
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2010/06/10
2012/12/21
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