疾患詳細

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鼻翼低形成 (Baraitser & Hodgson 1981) (Johanson & Blizzard 1971) (Copyright Center for Birth Defects Information Services, Inc.)

#243800
Johanson-Blizzard syndrome (JBS)
(Nasal alar hypoplasia, hypothyroidism, pancreatic achylia, congenital deafness)

Johanson-Blizzard 症候群
(鼻翼低形成-甲状腺機能低下症-膵消化酵素欠損-先天性難聴)

責任遺伝子:605981 Ubiquitin-protein ligase E3 component N-recognin 1 (UBR1) <15q15.2>
遺伝形式:常染色体劣性

(症状)
(GARD)
 <80%-99%>
 Abnormal hair pattern (毛髪パターン異常) [HP:0010720] [171]
 Alopecia (禿頭) [HP:0001596] [17100]
 Exocrine pancreatic insufficiency (膵外分泌不全) [HP:0001738] [240]
 Failure to thrive (成長障害) [HP:0001508] [01411]
 Intrauterine growth retardation (子宮内成長遅滞) [HP:0001511] [0111]
 Malabsorption (吸収障害) [HP:0002024] [18045]
 Short nose (短鼻) [HP:0003196] [0705]
 Short stature (低身長) [HP:0004322] [0130]
 Underdeveloped nasal alae (鼻翼未発達) [HP:0000430] [0741]
 
 <30%-79%>
 Abnormal vagina morphology (膣形態異常) [HP:0000142] [1425]
 Absent lacrimal punctum (涙点欠損) [HP:0001092] [0696]
 Anal atresia (鎖肛) [HP:0002023] [12301]
 Anemia (貧血 ) [HP:0001903] [2201]
 Anteriorly placed anus (前方肛門) [HP:0001545] [12302]
 Delayed eruption of teeth (歯萠出遅延) [HP:0000684] [08309]
 Delayed skeletal maturation (骨成熟遅滞) [HP:0002750] [160001]
 Hypoproteinemia (低蛋白血症) [HP:0003075] [2083]
 Intellectual disability (知的障害) [HP:0001249] [0120]
 Lacrimation abnormality (流涙異常) [HP:0000632] [0696]
 Microdontia (小歯) [HP:0000691] [08301]
 Oligodontia (乏歯症) [HP:0000677] [08301]
 Sensorineural hearing impairment (感音難聴) [HP:0000407] [0910]
 
 <5%-29%>
 Abnormal cardiac septum morphology (心中隔形態異常) [HP:0001671] [1120]
 Abnormality of the nares (鼻孔異常) [HP:0005288] [074]
 Cholestasis (胆汁うっ滞) [HP:0001396] [01804]
 Death in infancy (乳児期死亡) [HP:0001522] [0114]
 Dextrocardia (右胸心) [HP:0001651] [1120]
 Diabetes mellitus (糖尿病) [HP:0000819] [2013]
 Dilated cardiomyopathy (拡張型心筋症) [HP:0001644 [0273]
 Edema (浮腫) [HP:0000969] [01408]
 Hepatic failure (肝不全) [HP:0001399] [01811]
 Hydronephrosis (水腎症) [HP:0000126] [13009]
 Hypoplasia of penis (陰茎低形成) [HP:0008736] [14013]
 Hypospadias (尿道下裂) [HP:0000047] [14012]
 Microcephaly (小頭) [HP:0000252] [03013]
 Muscular hypotonia (筋緊張低下) [HP:0001252] [0242]
 
 
 Abnormality of the nail (爪異常) [HP:0001597] [19]
 Agenesis of permanent teeth (永久歯無発生) [HP:0006349] [08301]
 Anasarca (全身浮腫) [HP:0012050] [01408]
 Aplasia cutis congenita of scalp (頭皮無形成) [HP:007385] [1810]
 Atrial septal defect (心房中隔欠損) [HP:0001631] [1120]
 Autosomal recessive inheritance (常染色体劣性遺伝) [HP:0000007]
 Cafe-au-lait spot (カフェオーレ斑) [HP:0000957] [18002]
 Calvarial skull defect (頭蓋骨欠損) [HP:0001362] [160116]
 Clinodactyly of the 5th finger (第5指弯指) [HP:0004209] [15409]
 Clitoral hypertrophy (陰核肥大) [HP:0008665] [14022]
 Colonic diverticula (結腸憩室) [HP:0002253] [12311]
 Convex nasal ridge (凸の鼻堤) [HP:0000444] [0706]
 Cryptorchidism (停留精巣) [HP:0000028] [14010]
 Death in childhood (小児期死亡) [HP:0003819] [0114]
 Dilatation (拡張) [HP:0002617] [1120]
 Fair hair (明るい色の毛髪) [HP:0002286] [17111]
 Frontal upsweep of hair (前頭部の上向きの生え際(カウリック)) [HP:0002236] [17107]
 Generalized hypotonia (全身性筋緊張低下) [HP:0001290] [0242]
 Hypocalcemia (低カルシウム血症) [HP:0002901] [2008]
 Hypoplasia of the primary teeth (乳歯低形成) [HP:0006334] [08301]
 Hypoplastic nipples (乳頭低形成) [HP:0002557] [1130]
 Hypothyroidism (甲状腺機能低下症) [HP:0000821] [2121]
 Increased VLDL cholesterol concentration (VLDL コレステロール増加) [PH:0003362] [20176]
 Joint laxity (関節弛緩) [HP:0001388] [15102]
 Micropenis (小陰茎) [HP:0000054] [14013]
 Midline skin dimples over anterior/posterior fontanelles (大泉門/小泉門上の正中皮膚くぼみ) [HP:0005498] [1810]
 Rectovaginal fistula (直腸膣瘻) [HP:0000143] [1425]
 Septate vagina (膣中隔) [HP:0001153] [1425]
 Single transverse palmar crease (単一手掌屈曲線) [HP:0000954] [180513]
 Situs inversus totalis (全内臓逆位) [HP:0001696] [1204]
 Small for gestational age (低出生体重) [HP:0001518] [0111]
 Sparse scalp hair (疎な頭髪) [HP:0002209] [17100]
 Strabismus (斜視) [HP:0000486] [06610]
 Urethrovaginal fistula (尿道膣瘻) [HP:0008716] [131}
 Ventricular septal defect (心室中隔欠損) [HP:0001629] [1120]
 
(UR-DBMS)
【一般】*出生後の重度の成長障害 (> 3パーセンタイル 70%)
 子宮内成長障害 (1/3)
 成長障害
 出生時からの蛋白喪失による全身性の浮腫(Anasarca)
 浮腫 (手足)
 *精神遅滞 (60%) (IQ 35-50) (少数は知能正常)
【神経】重度の筋緊張低下 (80%)
【頭】小頭 (35%)
【眼】斜視
 皮膚涙腺瘻
 涙点無形成
【鼻】*鼻翼低形成
 短い鼻 → くちばし状の鼻にみえる
【口】*乳歯低形成, 永久歯欠損
【耳】感音難聴 (60%)
 蝸牛と前庭の嚢胞性拡大
【胸郭】内臓逆位
 小さな乳頭, 乳輪欠損
【心】(15%) ASD, VSD
【消化器】鎖肛 / 狭窄または肛門前方偏位 (50%)
【腎】水腎症, 腎杯拡張
【性器】(30% ) 小陰茎, 尿道下裂, 停留精巣
 大陰核, 重複膣, 膣中隔, 尿道膣瘻, 直腸膣瘻
【四肢】関節過伸展 (80%)
 第5指弯指
【X線】骨年齢遅延 (80%)
【毛髪】*金髪の疎な毛髪
 上向きの前頭毛髪
 毛髪線が額へ伸びる
 '不規則な' 頭髪
【頭皮】*小泉門 +/- 大泉門の上の正中の頭皮欠損 (> 90%)
 頭皮無形成
【皮膚】手掌横線
 カフェオーレ斑
【検査】糖尿病
 低蛋白血症
 低カルシウム血症
【内分泌】甲状腺機能低下症 (30%)
【外分泌】*膵消化酵素欠損

【その他】吸収障害により小児期に死亡

【一般】呼吸器感染症
 悪臭のある大量の脂肪便)
【頭】大泉門開大
【顔】上顎低形成
【口】*小歯 (乳歯, 永久歯)
 二分口蓋垂
 歯間解離
 歯萌出遅延, 円錐歯
【心】TGA, PA, APVR, common atrium, 右胸心
【消化器】無脾 (多脾)
【X線】異常な脳回
 皮質ニューロンの破綻
【毛髪】禿頭
 粗い乾いた毛髪
 cowlick
【皮膚】*外分泌欠乏による吸収不全 (るいそう)
 鼻涙腺皮膚瘻
【検査】鉄欠乏症
 ヘモグロビン低値
【外分泌】正常なOGTT

(頻度) 約30例
(オリジナル) Johanson and Blizzard (1971)
(責任遺伝子) *605981 Ubiquitin-protein ligase E3 component N-recognin 1 (UBR1) <15q15.2>
.0001 Johanson-Blizzard syndrome (243800) [UBR1, HIS136ASP] (rs119477054) (gnomAD:rs119477054) (RCV000004942) (Zenker et al. 2005)
.0002 Johanson-Blizzard syndrome [UBR1, IVS20DS, T-C, +2] (RCV000004943) (Zenker et al. 2005)
.0003 Johanson-Blizzard syndrome [UBR1, GLN513TER] (rs119477055) RCV000004944) (Zenker et al. 2005)
.0004 Johanson-Blizzard syndrome [UBR1, IVS26DS, G-A, +5] (RCV000004945) (Elting et al. 2008)
.0005 Johanson-Blizzard syndrome [UBR1, IVS12AS, G-A, -1] (RCV000024606) (Al-Dosari et al. 2008)

*UBR1: Ubiquitin-protein ligase E3 component N-recognin 1 (1749 aa)
・N-end rule 径路はユビキチン機構のタンパク分解径路の1つである
・UBR1遺伝子はこの径路の認識成分をコードし, 基質タンパクのdestabilizing N末残基と結合し, 基質結合マルチユビキチン鎖径路に参加し, 基質タンパクの分解を導く
・1つの RING-type zinc finger と1つのa UBR-type zinc finger をもつ
・N-end rule 径路の成分である E3 ubiquitin-protein ligase である
・膵のホメオスターシスに関与するかも
・ロイシンと結合しleucine-mTOR シグナリング径路の負のレギュレーターとなり, 細胞成長を調節する

(ノート)
●(#) は, Johanson-Blizzard 症候群 (JBS) は 15q15の UBR1 遺伝子 (605981)のホモ接合または複合ヘテロ接合変異が原因だという証拠のため

●Johanson-Blizzard 症候群は, 常染色体劣性疾患で, 成長不全, 精神遅滞および鼻翼無形成または低形成, 異常な毛髪パターンまたは頭皮欠損, 乏歯症を含む多様な形態異常が特徴である
 その他の症状には, 甲状腺機能低下症, 感音難聴, 鎖肛, 膵外分泌不全がある (Al-Dosari et al., 2008).

臨床症状
●Johanson and Blizzard (1971) および Park ら(1972) は, この症候群を3人の関連のない女児で記載した
 症状は鼻翼低形成, 先天性聾, 甲状腺機能低下症, 出生後成長遅延, 吸収障害, 精神遅滞, 正中外胚葉性頭皮欠損, および永久歯欠損である
●Park ら(1972) は, 重複膣および重複子宮を含む泌尿生殖器奇形を記載した

●Mardini ら(1978) の男児発端者は大泉門と小泉門部の頭皮欠損と鎖肛をもっていた
 Day and Israel (1978)は患者兄弟を報告した
 Flatz ら(1979) は姉妹2例を記載した
 Daentl ら(1979) は, 膵外分泌不全で8歳で死亡した男児例を報告した
 剖検はコロイドで満たされた小さな甲状腺を示した
  膵はほぼ完全に脂肪に置き換えられていた
  脳は異常なグリア形成と皮質ニューロン構築があった

●Motohashi ら(1981) は, 2家系を報告
 1家系では小児2例 (Day and Israel, 1978 が報告したもの)
  1家系では, 13か月の発端者と同胞2例が周生期に死亡した
●Moeschler and Lubinsky (1985) は, 兄妹例を記載
●Reichart ら(1979) および Helin and Jodal (1981) は, 患者同胞例を記載
●正常またはほぼ正常な知能がしばしばみられる

●Hurst and Baraitser (1989)は, レビュー
 22報告例中11例が肛門直腸奇形をもった (鎖肛が最も多かった)
●Gould ら(1989) は, 患者同胞2例の1家系を記載
 おそらく3例目が生後すぐ死亡していた
 同胞2例中1例が詳細に記載された(性別の記載がなかった)
  生後3日で死亡した (生後36時間で鎖肛のための直腸切開がおこなわれた)
  剖検では, 鼻翼低形成と前頭部および後頭部頭皮欠損, 結合織に囲まれた膵管と膵頭部, 腺房の完全欠損があった
 形態的変化は, 早期の腺房破壊が除外できなかったが, 発生不全を生じる異形成が示唆された
 2番目の同胞は3年後に生まれた男児であったが, 同じ顔貌と外科的治療が成功した鎖肛があった
 彼は膵不全と甲状腺機能低下症の治療を受け, 10歳時難聴児の学校へ通っていた
 剖検された同胞では, 甲状腺は肉眼的および顕微的に正常でコロイド形成は十分であった

●Gershoni-Baruch ら(1990) は, 2例を記載
 彼らは, Morris and Fisher (1967) と Townes (1969) によりトリプシノーゲン欠損例として報告された女児
  Grand ら(1966) が報告した Klinefelter 症候群の1例
  Lumb and Beautyman (1952)が報告した, 膵外分泌低形成の同胞2例 (1例に鎖肛あり)
 は本疾患であると述べた
 全体として, 彼らは26の報告例を発見した
 彼らは鎖肛はJBS の9例でみられ, 6例は女児で, 4例が直腸膣瘻があったと述べた
●Nagashima ら(1993) は, 11歳の女児で糖尿病を記載した

●Vanlieferinghen ら(2001) は, 新生児の Johanson-Blizzard 症候群の新しい1症例を記載した
 臨床症状には, 胎内成長障害, 鼻翼無形成, 正中頭皮欠損, 全内蔵逆位, 鎖肛, 小腸回転異常, 膵不全, 聾, 右胸心を伴う致死性先天性心疾患を含んでいた
 これらは剖検で確認された
●Vanlieferinghen ら(2003) は, この家系の次の妊娠で Johanson-Blizzard 症候群の反復を出生前エコー診断で記載した
 妊娠は21週で中絶された
 結腸は13週で拡張した
 17週, 腸拡大は増加し, 鼻は非常に小さく, 鼻翼は見えなかった
 胎児の検査は小さな嘴状の鼻, 正中部頭皮欠損, 巨大な腹部膨満と鎖肛を示した
 剖検はS状結腸膀胱瘻を伴う肛門直腸閉鎖を示した
 両側性尿管拡張と水腎症と多嚢胞腎もあった

●Elting et al. (2008) は, 両親がそれぞれ血縁のあるトルコ人とイラン人の Johanson-Blizzard 症候群の軽症型をもつ関連のない女児2例を報告した
 軽症ではあるが古典的な本疾患の症状に加え, 女児1例は拡張型心筋症をもっていたが, 別の1例は小さなASDをもっていた
 どちらも有意な精神遅滞はなかった
 分子遺伝学的解析は, 両女児は同じ UBR1 遺伝子のホモ接合変異をもつことを明らかにした (605981.0004).

●Al-Dosari et al. (2008) は, 血縁のあるサウジアラビア人の両親をもつ JBS の男乳児を報告した
 彼は, 子宮内発育遅延を示し, 鎖肛, 鼻翼無形成, 長い人中, 口角下垂, 眼瞼裂斜上, 異常な頭髪パターンをもっていた
 彼はまた, 甲状腺機能低下症, 2つのカフェオーレ斑, 感音難聴, 高ビリルビン血症と肝酵素上昇を伴う肝腫ももっていた
 肝生検は, 巨細胞性肝細胞, 胆汁うっ滞, 胆管数減少を示した
 肝疾患は, 門脈圧亢進を伴う進行性線維症へと進行した
 患者は, 膵不全はもっていなかった
 家族歴は, 母の前に3回の流産を明らかにした
 Al-Dosari et al. (2008) は, 看病辺は以前に本疾患には報告されていないが, 無関連性かどうかは除外できなかったと述べた
 しかし, 遺伝子解析は, 肝不全の原因として MRD3 遺伝子 (ABCB4; 171060) の変異を除外した
 Ubr1-null マウスからの肝切片は野生型マウスと違わなかった

遺伝
●Konigsmark and Gorlin (1976) は, 男性が致死のX連鎖性優性の可能性を挙げた
 ほとんどの患者は女性で, 症候群は XXY 男性でみられるかのしれないかた
 しかし, 常染色体劣性遺伝が Mardini ら(1978)により報告された患者3例を含む血縁のあるサウジアラビア家系 (男児1例, 女児2例) により固まったようにみえる
 Schussheim ら(1976)も両親の血縁を報告した

機序
●Zenker et al. (2005) は, UBR1 (605981) への抗体と, 膵組織切片での免疫抗体顕微鏡検査または培養細胞抽出物での免疫ブロットのいずれかを使って, JBS の異なる家系患者で UBR1 蛋白を観察しなかった
 反対に, UBR1 は対照膵ではすぐ検出できた
  ほとんど腺房細胞のサイトゾルに存在していた
 腺房細胞の特異マーカーとしての trypsinogen (276000) の対照免疫染色は, 対照と患者膵とに実質的差は示さなかった
 JBS でが酵素合成に原発障害はないことを示す

●Zenker et al. (2005) は, JBS 胎児2例 (21週と34週) と新生児1例の剖検検体での膵病理と細胞生物学検査を行った
 JBS 患者の膵は, 腺房組織喪失を示した
  胎生年齢とともに増加し, 炎症性浸潤を伴っていた (満期近くの胎児で最も顕著であった)
 アポトーシス細胞への TUNEL アッセーを使って, 彼らは JBS 患者腺房細胞でアポトーシス増加の証拠を発見しなかった
 まとめて, これらの所見は, JBS 患者での主要な膵障害は早期胎芽発生では, 腺房発生を混乱させないが, 成熟する胎児では, 以前に形成された腺房細胞が次第に破壊されることを示唆した (子宮内発症膵炎に類似するプロセスである)

マッピング
●Zenker et al. (2005) は, JBS で変異している遺伝子座を証明するため, 7家系で平均距離 10 cM のマイクロサテライトマーカーパネルでゲノム全体をスキャンした
 彼らは, 全ての血縁家系患者で共有された 15q のホモ接合領域を証明した
 彼らは, さらに, ドラフトヒトゲノム配列からの追加マイクロサテライトマーカーによるタイピングにより, 候補領域を 7.5 cM インターバルに精製した
 D15S968 で maximum 2-point lod score = 4.8 (theta = 0.0) であった

分子遺伝学
●Zenker et al. (2005) は, 暫定的機能と発現データをもとに, 15q の JBS 候補領域内の遺伝子の変異スクリーニングを優先したが, 明らかな候補は証明できなかった
 LBS 患者 DNA の high-throughput sequencing により, 彼らはついに UBR1 (605981)遺伝子の変異を検出した
 検査に含まれた13家系中12家系の患者では, 原因変異と思われる変異が UBR1 の両方のアレルで証明されたが, 1家系では, 父から遺伝された変異のみが発見された
 ほとんどの疾患連関UBR1 アレル (12/14) は, 早期終止コドンが予測される変異であった
 2つの UBR1 ミスセンス変異は, 異なる種で保存されている MBR1 蛋白で保存されている残基の置換を生じた

● Al-Dosari et al. (2008) は, 血縁のあるサウジアラビア人の両親をもつ JBS 男乳児で, UBR1 遺伝子のホモ接合スプライス部位変異を証明した (605981.0005).

歴史
●Townes (1969) は, 全身浮腫, 低蛋白血症およびうっ血性心不全をもつ3.5歳女児を報告した
 蛋白融解および脂肪融解障害が発見された
 trypsin, chymotrypsin, carboxypeptidase, および lipase 活性は完全に欠損していた
 活性化解析は陰性を示した
 protein hydrolysate により著明な改善が得られた (Townes, 1972)
 患者は, 鎖肛ももっていた
 → trypsinogen 欠乏症の患者は鎖肛をもつため関心を集めた

(ノート 2)
●Johanson and Blizzard (1971) は, 特異顔貌, 重度の精神および身体遅滞, 感音難聴, 膵不全による吸収不全をもつ3例の関連のない小児を報告した
●Morris and Fischer (1967) と Fischer and Townes (1972) が記載した患者は, 明らかに同じ疾患であった
●約30例が報告されている
(Hurst JA, Baraitser M 1989, Kristjansson K ら 1988)
●Gorlin らは可能性のある1例 (Lumb G, Beautyman W 1952) および可能性のない1例 (Grand RJ ら 1966) と判断した
●両親の血縁 (Bresson JL ら 1980, Mardini MK ら 1978, Schussheim A ら 1976, Sismanis A ら 1979) および同胞例 (Day OW, Israel JN 1978, Helin I, Jodal U 1981, Moeschler JB, Lubinsky MS 1985, Reichart P ら 1979) が報告されており, 常染色体劣性遺伝を示唆する

●出生時体重は約1/3の症例で小さい (Moeschler JB ら 1987)
●成長障害があり, 身体発育遅延は通常重度である
●少なくとも70%は身長, 体重および頭囲が3パーセンタイル以下に留まる
 真性小頭は35%である
●タンパク喪失による全身性浮腫 (anasarca) が出生時から明らかである
●死亡は小児期に生じることが多く, 吸収不全が主因である (Trellis DR, Clouse RE 1991).

顔貌
●鼻翼無形成は嘴状の鼻を生じ, 本症候群の最も目立つ一定した特徴である
●涙点無形成または皮膚涙管瘻が多い
(Day OW, Israel JN 1978, Morris MD, Fisher DA 1967, Schussheim A ら 1976)
●大泉門は開大している (Morris MD, Fisher DA 1967)
●正中部皮膚陥凹+/-欠損が90%で大泉門および小泉門の上にみられる
(Gould NS ら 1989, Hurst JA, Baraitser M 1989, Johanson A, Blizzard R 1971, Moeschler JB ら 1987, Schussheim A ら 1976)
●頭髪は金髪で, 疎で, 乾燥し, 粗いことが多い
 前頭部頭髪は著明に上向きで, 外側頭髪は前頭へ伸長する

●X線計測研究は2例で行われた (Motohashi N ら 1981)
●小頭は35%でみられているが, これはMotohashi ら(1981) またはSismanis ら(1979)が調べた患者ではなかった
●顔, 骨格および頭蓋底計測は, 特に上顎の長さが減少していた
●側頭骨のCTは蝸牛と前庭の嚢胞性拡大を証明した (Braun J ら 1991)
 しかし, 一定した所見ではない (Sismanis A ら 1979)

筋骨格
●関節過伸展性を伴う重度の筋緊張低下が80%でみられる
(Johanson A, Blizzard R 1971, Moeschler JB ら 1987, Morris MD, Fisher DA 1967, Schussheim A ら 1976)
●タンパク喪失による手足の陥凹浮腫が著明かもしれない (Morris MD, Fisher DA 1967, Park IJ ら 1972)
●骨年齢は約80%で遅延している (Motohashi N ら 1981, Sismanis A ら 1979, Townes PL 1972)

泌尿生殖器と消化器
●乳児性卵巣と重複または中隔膣, 陰核肥大, 小陰茎, 停留精巣, または尿道膣瘻を伴う単一泌尿生殖器口が30%でみられる
●鎖肛または前方肛門位置が約50%でみられる
(Bresson JL ら 1980, Day OW, Israel JN 1978, 7, Helin I, Jodal U 1981, Johanson A, Blizzard R 1971, Lumb G, Beautyman W 1952, Mardini MK ら 1978 , Moeschler JB, Lubinsky MS 1985, Sismanis A ら 1979, Townes PL, White MR 1981)
●Kristjansson ら(1988) は性器低形成の数例は下垂体機能低下に二次的であると示唆している
●膵不全, 成長障害および吸収障害が一定した特徴である (Moeschler JB ら 1987).
●若年発症性糖尿病はまれな合併症ではないかもしれない (Nagashima K ら 1993, Trellis DR, Clouse RE 1991)

中枢神経系
●両側性感音難聴が約60%でみられる
(Day OW, Israel JN 1978, 7, Hurst JA, Baraitser M 1989, Kristjansson K ら 1988, Moeschler JB, Lubinsky MS 1985, Moeschler JB ら 1987, Schussheim A ら 1976)
●発語は難聴と精神運動発達遅滞のため痕跡的である
●約60%の患者が精神遅滞 (IQ 35-50)であるが, 知能は正常 (Moeschler JB, Lubinsky MS 1985, Reichart P ら 1979) または, 軽度遅滞のみ (Day OW, Israel JN 1978, Hurst JA, Baraitser M 1989, Motohashi N ら 1981, Townes PL 1972)かもしれない
●甲状腺機能低下症の存在は精神遅滞の存在とは無関係である (Gershoni-Baruch R ら 1990)
●Swanenburg-DeVeye ら(1991) は, 高い知能をもつ小児1例を記載した
●女児がよりよい予後をもつある程度の証拠もある (Rudnik-Schoneborn S ら 1991)

甲状腺
●甲状腺機能低下症は約 30%でみられる
(Gould NS ら1989, Hurst JA, Baraitser M 1989, Moeschler JB, Lubinsky MS 1985, Moeschler JB ら 1987, Zerres K, Holtgrave EA 1986)
●他にいくつかの甲状腺機能低下症の可能性のある症例がある
(Daentl DL ら 1979, Day OW, Israel JN 1978, Johanson A, Blizzard R 1971, Ono K ら 1987)

皮膚
●乳頭と乳輪が低形成かもしれない


●ASD, VSD, と内臓逆位は15%で報告されている
(Helin I, Jodal U 1981, Hurst JA, Baraitser M 1989)


●乳歯と永久歯で重度の小歯がある
 第1大臼歯を除いて永久歯が全部欠損することはまれではない (Zerres K, Holtgrave EA 1986)
●乳歯の歯根は短く不規則で変形している
 少数の永久歯歯冠は形が減少していることが多い
 切歯は円錐形で, 上顎臼歯は3つの咬頭のみである
 歯髄は大きい
 永久歯第1大臼歯はいくらか長髄歯である (Ono K ら 1987, Reichart P ら 1979)

病理
●膵変化には, 腺房停止を伴うが同時の低血糖のない劇的な脂肪置換を含む (Gould NS ら1989, Moeschler JB ら 1987)
●Jones ら(1994) は, 膵機能障害の性状を評価し, trypsin, colipase, および lipase の減少を発見した
 膵管形成が保存された原発性腺房細胞不全があると主張した
●脳は脳回形成異常と皮質ニューロン構築異常を示す (Bresson JL ら 1980, Daentl DL ら 1979)

鑑別診断
●Johanson-Blizzard 症候群は, 他の疾患とタンパク分解欠損の特徴を共有する
 嚢胞性線維症, Schwachman 症候群, 軟骨-毛髪低形成, trypsinogen 欠損症, Donlan 症候群および腸 enterokinase 欠損症である
 鑑別診断での膵酵素の電気泳動検査の使用については詳細に Townes (1972)により論じられている
●Reichart ら(1979) が記載した姉妹の症状は Johanson-Blizzard 症候群に類似しているが, おそらく別疾患である
●Guzman and Carranza (1997) は同胞例を報告した
 1例は Donlan 症候群で, 1例は Johanson-Blizzard 症候群をもち, これらは同じ疾患の差異のある表現型であると示唆した

●いくつかの他の疾患がいろんな程度の鼻翼低形成をもつ
 毛髪鼻指症候群, 眼歯骨異形成, 頭蓋手根骨足根骨異形成, および Roberts 症候群
●先天性皮膚欠損症は通常単独所見として生じるが, 13トリソミー, 巣状皮膚低形成, Sakati 症候群などでみられる
●頭皮の先天性無形成は多血症疾患に伴う

検査
●鉄欠損症, ヘモグロビン低値, 脂肪性の悪臭のある大量の便, 低カルシウム血症および総血清タンパク低値が早期乳児期で明らかである (Zerres K, Holtgrave EA 1986)
●混合性タンパク分解, 脂肪分解およびでんぷん分解異常がある
 trypsin, chymotrypsin, amylase, carboxypeptidase, および lipase 活性異常がある
 活性化検査は陰性であることを証明している
 脂肪と窒素バランス研究は酵素欠損を確認している

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2007.6.27
2012/01/28
2012/06/20
2019/05/23 ノート改訂