疾患詳細

疾患詳細





#243300
Cholestasis, benign recurrent intrahepatic 1 (BRIC1)
(Summerskill syndrome)

胆汁うっ滞, 良性反復性肝内
(Summerskill 症候群)

責任遺伝子:602397 ATPase, class I, type 8B, member 1 (ATP8B1) <18q21.31>
遺伝形式:常染色体劣性

(症状)
(GARD)

 Autosomal recessive inheritance (常染色体劣性遺伝) [HP:0000007]
 Conjugated hyperbilirubinemia (抱合型高ビリルビン血症 (4-12 mg/dl)) [HP:0002908] [160015]
 Hearing impairment (難聴) [HP:0000365] [091]
 Hepatomegaly (肝腫) [HP:0002240] [01813]
 Increased serum bile acid concentration (胆汁酸増加) [HP:0012202] [2028]
 Intermittent jaundice (間歇的黄疸) [HP:0001046] [01810]
 Intrahepatic cholestasis with episodic jaundice (エピソード性黄疸を伴う肝内胆汁うっ滞) [HP:0006575] [01804] [01810]
 Pancreatitis (膵炎) [HP:0001733] [122]
 Pruritus (掻痒) [HP:0000989] [18021]

(UR-DBMS)
【一般】*エピソード性黄疸 / 掻痒 (2日から24か月続く)
 肝腫
 易疲労性
 食欲減退
 脂肪便
 悪心
 嘔吐
 胆汁性肝硬変
【肝】肝内胆汁うっ滞, エピソード性, 反復性
 末期肝疾患へは進行しない
【皮膚】脂肪および脂溶性ビタミン吸収障害
【検査】血清 gamma-GGT (231950)正常〜軽度上昇
 抱合型高ビリルビン血症
 AlP 高値
 胆汁塩上昇
【その他】胆汁うっ滞の臨床または生化学的証拠のない疾患フリーの機関が数週〜数年持続しうる
 多様な発症年齢, 乳児期〜成人
 多様な頻度と重症度
 progressive familial intrahepatic cholestasis-1 (PFIC1, 211600)とアレリック
 intrahepatic cholestasis of pregnancy (ICP, 147480)とアレリック

(要約) ATP8B1 欠乏症
(FIC1 欠乏症)
●ATP8B1 欠乏症は, 臨床症状および肝生検を含む検査結果により, 重度~中等度~軽度の表現型スペクトラムを含む
○重症 ATP8B1 欠乏症は, 生後2-3か月ないで胆汁うっ滞症状 (掻痒と黄疸) の発症が特徴である
 凝固障害 (ビタミンK欠乏による), 吸収障害, 体重増加不全などの二次症状が, 3か月例以前にみられるかも
 外科的介入なしでは, 肝硬変と末期肝不全への進化, および死亡が通常20歳代以前に生じる
○軽症 ATP8B1 欠乏症は, 重度の掻痒と黄疸の胆汁うっ滞の間歇的エピソードが特徴である
 慢性肝障害は典型的には生じない
 胆汁うっ滞発作がトリガー (薬物, 避妊薬, 妊娠, 悪性新生物など) により誘発される患者と対照的に, 軽症ATP8B1欠乏症の患者は異なるトリガーをもつかトリガー不明である
○肝外症状; 難聴, 膵炎, 膵不全, 腎結石, 副甲状腺ホルモンへの抵抗性, 下痢
●診断:臨床所見と検査所見により, ATP8B1 変異の2アレル変異の証明による
●治療:胆汁うっ滞に伴う掻痒への標準薬物 (ursodeoxycholic acid, cholestyramine, +/- rifampin) は一時的に有効かもしれないが, 長期は比較的無効である
 栄養療法と脂溶性ビタミン補給
 重症例→部分的外胆管迂回術
●遺伝:常染色体劣性
●検査:重症欠乏症
 血清 γ-GT (gamma-glutamyltranspeptidase) 低値〜正常 (抱合型高ビリルビン血症+/-重度掻痒にも関わらず)
 →胆汁酸合成障害や胆汁酸抱合障害でもみられる
 胆汁うっ滞のほとんどの型では-GT 活性は上昇する (γ-GT 上昇しないものは‘低-γ-GT 胆汁うっ滞'と呼ばれる
 血清コレステロールは通常上昇しない (胆汁うっ滞では通常上昇)
 血清total 胆汁酸値の上昇
軽症ATP8B1欠乏症:高ビリルビン血症にもかかわらず γ-GT 活性低値
●肝生検
 重症 ATP8B1 欠乏症:軽度の肝管内胆汁うっ滞, 少ない幹細胞内胆汁うっ滞
 軽症 ATP8B1 欠乏症:胆汁うっ滞エピソードでの所見は重症に類似する
●頻度;不明
 最初にAmish で Byler 病として記載されたが, 全人種でみられている
 Amish と Inuit で多い

(要約) 低γ-GT 家族性肝内胆汁うっ滞
(ATP8B1-関連肝内胆汁うっ滞, ABCB11-関連肝内胆汁うっ滞)
●低 γ-GT (gamma-glutamyltranspeptidase) 家族性肝内胆汁うっ滞は, 重症~軽症までのスペクトラムとして生じる
 重症型低γ-GT 家族性肝内胆汁うっ滞 (PFIC1と PFIC2) は, 典型的には, 生後2-3か月内で胆汁うっ滞症状 (掻痒と黄疸発作) として始まる
  吸収障害, 脂肪便, 体重増加不良などの二次的症状は, 3か月令より早期にみられるかもしれない
 最初に重度胆汁うっ滞エピソードがあり, 次ぎに疾患フリーの期間が続く
 →その後胆汁うっ滞は寛解しなくなる
 掻痒は, 典型的には, 重症で持続する
 成長遅滞が早期小児期に明らかとなる
 外科的治療をしないと, 肝硬変, 肝不全, 死亡が通常20歳以内に続く
●良性反復性肝内胆汁うっ滞 (BRIC1 と BRIC2) は, 低 γ-GT 家族性肝内胆汁うっ滞の軽症型である
 胆汁うっ滞, 重症掻痒および黄疸が特徴である
 慢性肝障害は生じない
●一部のヘテロ接合女性は妊娠時肝内胆汁うっ滞 (ICP) を経験する
 症状は第3三半期に出現し, 分娩後回復する
●診断:
・PFIC1 と PFIC2 →臨床所見と検査所見による (両者を区別することはできない)
 抱合型高ビリルビン血症にもかかわらず血清γ-GT活性が低値~正常値であることがホールマーク (ほとんどの胆汁うっ滞では上昇)
 血清コレステロールは低値~正常
 血清total 胆汁酸は上昇
 尿の Fast-atom bombardment ionization mass spectrometry (FAB-MS) 解析は, 正常な胆汁酸種を示し, 正常な胆汁酸合成を示す
 初診時の肝生検は, 軽微な胆管内胆汁うっ帯または門脈繊維症と胆管増殖を伴う新生児肝炎のいずれかを示す
 →肝胆管構造異常はないが, 時間の経過とともに生じうる
  走査電顕で粗い顆粒状小管胆汁または無形性小管胆汁がみられるかもしれない
・PFIC1→ ATP8B1 (FIC1)
 PFIC2 →ABCB11 (BSEP)
●遺伝:常染色体劣性
●臨床診断
・重症型:Type 1 (PFIC1) ATP8B1, Type 2 (PFIC2) ABCB11
・軽症型:Type 1 (BRIC1) ATP8B1, Type 2 (BRIC2) ABCB11
●肝機能 血清γ-GT活性 コレステロール  total 胆汁酸       抱合型ビリルビン
・重症型 低値~正常   低値~正常    著明に上昇      最初上昇→正常→再上昇
・軽症型低値~正常    通常低値~正常  症状ある時は著明に上昇 エピソード時に上昇
●遺伝子
・ATP8B1  アーミッシュ p.Gly308Val 100%
      イヌイット   p.Asp554Asn 100%
      ドミニカ人  p.Glu665X ?
      欧州人    p.Ile661Thr BRIC1の~80%
・ABCB11 不明
●頻度:不明
●命名:Byler 病→アーミッシュでの重度FIC1欠乏症
 グリーンランド小児胆汁うっ帯またはグリーンランド家族性胆汁うっ帯→イヌイットでの重度FIC1欠乏症

(要約)
●進行性家族性肝内胆汁うっ滞 (PFIC) は, 胆管上皮トランスポーター障害による家族性胆汁うっ滞のグループをいう
 小児期に進行性胆汁うっ滞としてみられる
 →発育不全, 肝不全となり肝移植が必要となる
●PFIC-1:ATP8B1 遺伝子変異が原因である
  P-type ATPase protein (FIC-1) をコードし, リン脂質移動に責任がある
 以前は Byler 病, グリーンランドエスキモー家族性胆汁うっ滞と呼ばれた
 腸での FIC-1 発現により下痢を生じうる
●PFIC-2:ABCB11 遺伝子変異が原因である
 胆汁酸輸出ポンプまたは BSEP をコードする
 肝細胞のみに発現される
 肝細胞内への胆汁酸貯留が肝細胞障害と胆汁うっ滞を生じる
●PFIC-3:ABCB4 変異が原因である
 multidrug resistance protein 3 (MDR3)をコードし, phosphatidylcholine 転位に責任のある flippase をコードする
 →胆汁にphosphatidylcholine がない
 phosphatidylcholine は正常に胆汁酸を監視し, 胆管上皮の障害を防止する
 MDR3 欠乏患者の free または "非監視性”胆汁酸は胆管炎を生じ, 著明な GGT 上昇を伴う
●発症は通常2歳以前であるが, 思春期で診断される例もある
 PFIC-3 が最も早い
 通常は早期小児期に, 胆汁うっ滞, 黄疸および発育不全をもつ
 強い掻痒が特徴的で, 思春期にみられると自殺との連関がみられる
 脂肪吸収障害をもつことがあり, 脂溶性ビタミン欠乏や骨減少などの合併症をもつ
 PFIC-1 と -2 では GGT 正常, PFIC-3 高値である
 血清胆汁酸値は非常に高値である
 血清コレステロールは典型例では上昇していない
 進行性で, 肝移植しないと小児期の激症肝不全と死亡となる
 PFIC-2 では非常に早期年齢で肝細胞癌を生じうる
●治療
 Ursodeoxycholic acid, Cholestyramine, Rifampin, Naloxone (難治例で)
 脂溶性ビタミン, 中鎖中性脂肪

(頻度) 39 例 (1/3 は家族性)
(コメント) Byler 病 (211600)とアレリック
(責任遺伝子) *602397 ATPase, class I, type 8B, member 1 (ATP8B1) <18q21.31>
(1) Cholestasis, progressive familial intrahepatic 1 (211600)
.0001 Cholestasis, progressive familial intrahepatic 1 [ATP8B1, GLY308VAL] (dbSNP:rs111033609,121909097) (Bull et al. 1998)
.0002 Cholestasis, progressive familial intrahepatic 1 [ATP8B1, GLY892ARG] (dbSNP:rs121909098) (Bull et al. 1998)
.0003 Cholestasis, progressive familial intrahepatic 1 [ATP8B1, LEU288SER] (dbSNP:rs121909099) (Bull et al. 1998)
.0004 Cholestasis, progressive familial intrahepatic 1 [ATP8B1, 2097, T-C, +2] (Bull et al. 1998)
.0005 Cholestasis, progressive familial intrahepatic 1 [ATP8B1, 1.4-KB DEL] (Bull et al. 1998)
.0008 Cholestasis, progressive familial intrahepatic 1 [ATP8B1, ASP554ASN] (dbSNP:rs121909101) (Klomp et al. 2000)
.0009 Cholestasis, progressive familial intrahepatic 1 [ATP8B1, IVS23AS, C-A, -3 ] (Klomp et al. 2004)
.0012 Cholestasis, progressive familial intrahepatic 1 [ATP8B1, THR456MET] (dbSNP:rs121909104) (Alvarez et al. 2004)
.0013 Cholestasis, progressive familial intrahepatic 1 [ATP8B1, ARG602TER] (dbSNP:rs121909105) (Alvarez et al. 2004)
(2) Cholestasis, benign recurrent intrahepatic 1 (243300)
.0006 Cholestasis, benign recurrent intrahepatic 1 [ATP8B1, ILE661THR] (v) (Cholestasis, progressive familial intrahepatic 1, included) (Bull et al. 1998; Tygstrup et al. 1999; Klomp et al. 2004)
.0007 Cholestasis, benign recurrent intrahepatic [ATP8B1, 9-BP DEL] (Bull et al. 1998)
(3) Cholestasis, intrahepatic, of pregnancy, 1 (147480)
.0010 Cholestasis, intrahepatic, of pregnancy, 1 [ATP8B1, ASP70ASN] (dbSNP:rs121909102,34719006) (Mullenbach et al. 2005; Klomp et al. 2004)
.0011 Cholestasis, intrahepatic, of pregnancy, 1 [ATP8B1, ARG867CYS] (dbSNP:rs121909103) (Mullenbach et al. 2005)

*ATP8B1: ATPase, class I, type 8B, member 1 (1251 amino acids)
・P型陽イオン輸送 ATPase ファミリーのメンバーで, aminophospholipid-transporting ATPases のサブファミリーに属する
・いろんな膜の外側葉から内側葉へaminophospholipids (phosphatidylserine と phosphatidylethanolamine) の輸送とcanicular膜でのリン脂質の非対称性分布の維持で役割をもつ
・胆汁酸の小管への輸送, 腸から胆汁酸の腸粘膜へのアップテークで約アリをもつ

(ノート)
●(#) は, 良性反復性肝内胆汁うっ滞1 (BRIC1) は 18q の ATP8B1 遺伝子 (602397) のホモ接合または複合ヘテロ接合変異が原因であるため

●進行性家族性肝内胆汁うっ滞1型 (PFIC1; 211600) と妊娠時肝内胆汁うっ滞 (ICP; 147480) はアレリック疾患である

● 良性反復性肝内胆汁は, 肝外胆管閉塞のない間歇的胆汁うっ滞エピソードが特徴である
 最初に血清胆汁酸の上昇があり, 胆汁うっ滞性黄疸が続く
 →一般的に自然に数周〜数か月の後回復する (Summerskill and Walshe, 1959; Schapiro and Isselbacher, 1963; Brenard et al., 1989).

●Tygstrup et al. (1999) は, 本疾患を良性と呼ぶのは間違った名称であると述べた
 疾患は一部の患者でQOLにインパクトがあるため
 彼らは 'recurrent familial intrahepatic cholestasis' という用語を好んだ

良性反復性肝内胆汁うっ滞の遺伝的異質性
● BRIC2 (605479)は 2q24 の ABCB11 遺伝子 (603201) 変異が原因である

臨床症状
●Summerskill and Walshe (1959) は, 反復性肝内胆汁うっ滞をもつ関連のない2例を報告した
●Kuhn (1963) は, 掻痒と肝腫を伴う反復性黄疸発作をもつ10歳代の兄弟2例を記載した
 胆汁性肝硬変への進行が1例で疑われた

●Tygstrup (1960) は, Faroe 諸島の小さな村に住む遠縁の15歳男児で本疾患を記載した
 これらの患者での発症は生後2年以内であった
 胆汁うっ滞は肝生検と直接的胆管造影で証明された
●Tygstrup and Jensen (1969) は, Faroe 諸島の若者男性5例で間歇性肝内胆汁うっ滞を記載した
 疾患は, 掻痒と黄疸の反復性発作が特徴であった
 数か月から数年続く疾患のない間は, 胆汁うっ滞の臨床的または生化学的示唆はなかった
●Tygstrup et al. (1999) は, オリジナル報告での5例の30年後を報告し, Faroe 諸島からの追加5例を報告した
 慢性肝疾患への進行は生じなかった
 胆汁うっ滞のエピソードは年齢とともに減る傾向があった
 25歳の最も若い患者は, 約6か月持続する16回のエピソードをもっており, 肝移植を受け, 術後1年後はエピソードはなかった

●Minuk and Shaffer (1987) は, 黄疸後に重度の掻痒を生じ, その後8年で5回のエピソードをもった男児1例を調べた
 →各々が3-4か月の期間であった
 男女同胞2例も黄疸に続く掻痒のエピソードももっていた

●De Koning et al. (1995) は, Houwen et al. (1994)が報告した BRIC 大家系での全家系図と臨床情報を提供した
 全員の両親に血縁があるはとこの4例が記載された
 患者は最初に掻痒と黄疸を2-8か月令で生じた
 胆汁うっ滞性黄疸は6-9か月後に臨床的および生化学的に消失したが, その後エピソードが生じた
 BRIC 遺伝子の義務的保因者に疾患兆候をもつものはいなかった
 観察された4例は, 中世の小さな村の住人 10,000人の集団出身であった
 →高い保因者頻度を示唆する

その他の特徴
●Nagasaka et al. (2004) は, ATP8B1 遺伝子変異により確認された PFIC1 と BRIC1の関連のない2例を報告した
 両者は, 低身長, 骨ミネラル濃度減少, PTH抵抗性によるエピソード性低カルシウム血症をもっていた
 両者の詳細な生化学的検査は, カルシウムとリン値は各々減少と増加を示した
  血清全ビリルビン増加もあった
 この所見は臨床的に PTH 輸注への cAMP 反応の正常である偽性副甲状腺機能低下症 II 方に相当した

マッピング
● Houwen et al. (1994) は, BRIC の遠縁の患者3例で, linkage disequilibrium (LD) mapping (Lander and Botstein, 1986)をつかって BRIC を18番に同定した
 患者で保存された拡大ハプロタイプの証明が結果を確認した
 Houwen et al. (1994) は, 以前にマップされていない遺伝子座の同定に対して, これが最初の LDマッピングの使用例であると示唆した
 著者らは, 連鎖不平衡と他の方法 (特にホモ接合体マッピング, HM) との区別を行った
 HM は選択された候補領域で常染色体劣性座をマップするのに使用されているが, その全ゲノムスクリーニングでの効率は不明である
 それに対し, 共有分節の検索は各々の染色体を別々に処理し, そのため優性でも劣性疾患でも実行できる

●Sinke ら(1997) は, BRIC 表現型をもつ14家系で, BRIC の候補遺伝子領域を, 18q21 領域の15のマイクロサテライトマーカーをもちいてD18S69 とD18S64 の間に狭めた
 彼らは BRIC 遺伝子が 18q21 領域と連鎖しないようにる, またはBRIC 遺伝子型の不完全浸透にみえる1家系を証明した

遺伝的異質性
● Sinke et al. (1997) により調べられた BRIC の家系の1つは, 18q21 領域と連鎖しなかった
 →以前に報告された本疾患の遺伝的異質性に一致する

●Floreani et al. (2000) は, 調べた19例中7例が良性反復性肝内胆汁うっ滞をもつイタリア人家系を調べた
 2連続世代で男女が患者であり, 4つの別家系で男男伝達があり, 常染色体優性遺伝を示唆した
 連鎖解析は, 常染色体劣性 BRIC1 と BRIC2がマップされている 18qと 2q24 を除外した
 →遺伝的脂質性を示す

分子遺伝学
●Bull ら(1998) は, BRIC 患者で FIC1 遺伝子 (602397) の変異を証明した (602397.0006; 602397.0007).

● Tygstrup et al. (1999) は, Tygstrup (1960)が報告したオリジナルの Faroe 諸島の BRIC 患者で, ATP8B1 遺伝子の創始者変異を証明した (I661T; 602397.0006)

動物モデル
●Minuk and Shaffer (1987)は, ラットへの BRIC 血清注入と radiotracer 研究により, BRICは循環胆汁うっ滞因子により仲介されず, 肝細胞胆汁酸塩分泌での内在性異常に二次的であると結論した

(ノート2)
良性反復性肝内胆汁うっ滞 (BRIC)

●最初に Summerskill & Walshe により黄疸と掻痒の反復性エピソードとして記載された (Summerskill, Walshe 1959)
 現在は、ATP8B1 (アミノリン酸トランスポーター) の変異による BRIC/FIC1 症候群として認知されている(Klomp et al 2004)
(Tang et al. 1996)
 類似の表現型が、胆汁排出ポンプであるABCB11 として知られる BSEP の変異が原因でみられる (Van Mil et al. 2004)

病態生理と遺伝
●最新の知見によれば、少なくとも3つの BRIC 型があり、全て類似表現型をもつ
 BRIC1 と 2 は常染色体劣性遺伝である
●aminophospholipid flippase ATP8B1変異によるBRIC1 は 18q21 に位置する (Bull et al. 1998)
 OMIM では、これはまだ進行性疾患と考えられているが (PFIC2 = progressive familial intrahepatic cholestasis)、最近のデータによれば、BRIC としても症状がみられ、BRIC2 とよぶように提唱されている (Van Mil et al. 2004)
●3番目の型は、 18q21 の 2q24 どちらにも連鎖せず、常染色体優性遺伝である (Floreani et al. 2000)

臨床症状
●黄疸と単純うっ滞の反復性発作が通常2-24週持続する (Summerskill, Walshe 1959)
 しかし、より長い発作やPFIC1 への進行も記載されている
 グリーンランドでは、ATP8B1 変異がホモの症例は、明らかに異なる表現型をもつ (Tygstrup et al. 1999)
●本疾患のホールマークは、胆汁うっ滞、ビリルビン値と胆汁酸、AlPの上昇で、正常な g-GT をもつ
 血清胆汁酸を含む肝機能は発作間は正常である (Summerfield et al. 1981)
●典型的には、最初の症状は早期でみられるが、50歳代での初発症状が報告されている (Cissarek et al. 1998)
●ATP8B1 と ABCB11 の座位は異なる
 このことは、異なる器官症状を生じる
 すなわち、BRIC1 での膵炎の合併と、BRIC2での胆石の合併である (Van Mil et al. 2004)
●BRIC1 と PFIC1 は連続性を示す (Van Ooteghem et al. 2002)
 すなわち、BRIC は常に良性とは限らない
 BRIC2 と PFIC2 についても同様である
●妊娠時胆汁うっ滞との連関が存在する (de Pagter et al. 1976)

病理
●閉塞のいくつかの特徴をもつ胆管性胆汁うっ滞である (Summerskill, Walshe 1959)
 患者の1/3がある程度の門脈肝炎をもつ (Brenard et al. 1989)
 ある程度の線維症をみることができる (Van Ooteghem et al. 2002)
 胆管減少をもつ1症例が報告されている (Faa et al. 1991)
  これはおそらく PFIC とのオーバーラップを表している

治療
●掻痒が BRIC 患者での目立つ症状である
 cholestyramine, UDCA (Crosignani et al. 1991), SAMe (Everson et al. 1989) への反応は悪い
●数例 (Balsells et al. 1997)が、全例ではない (Van Ooteghem et al. 2002) rifampicinでの酵素誘導に反応する
●rifampicin と UDCAの組合せで数年寛解を保っている1例がある
●血漿透析 (Brenard et al. 1989) および MARS (Sturm et al. 2002) が反復例で考慮すべきである
 MARSはBRICでまれにみられる腎障害も改善するかもしれない (Saich et al. 2005)
●PFIC での掻痒改善に成功している胆汁迂回が試みられているが BRIC では確実な成績ではない
●治療抵抗性掻痒には肝移植が適応されうる
 特にPFIC へ進行する BRIC 症例で (Tygstrup et al. 1999)

(文献)
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2009/05/05
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2012/12/08